1. ホーム
  2. テクノロジー
  3. 連載コラム
  4. Technology to the Future
  5. 第13回

Technology to the Future 第13回 VRがつくる新しい「現実」に目が離せない~VR CREATIVE AWARD 2016 レポート

テクノロジー 森 旭彦 2016年06月30日

 今、世界中のIT企業がVR(Virtual Reality、仮想現実)に熱い視線を向けている。
 2014年春にフェイスブックがVRヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)「Oculus Rift」の開発元であるオキュラスを買収した。20億ドルという巨額の買収劇は、世界をVRに振り向かせた。マーク・ザッカーバーグが、VRを未来のソーシャルプラットフォームとして位置づけていることも、センセーショナルな出来事だった。
 続くグーグル他は、2014年10月にVRスタートアップ「マジックリープ」に5億ドルを投資。「cinematic reality」を生み出すとされる新製品の実体は謎のままであるにもかかわらず、新たなプロモーション動画がリリースされれば世界中から注目され、その期待値は増すばかりだ。
 そしてマイクロソフトは現実世界と仮想現実を自在に融合させる拡張現実HMD「HoloLens」を2015年の1月に発表している。

 私たちの生活を一変させたサービスを生み出したIT企業の多くがVRに未来を見ている。
 日本ではどうなのだろう? 今回は2016年6月4日に開催された、日本のVRの最先端が集まる「VR CREATIVE AWARD 2016」のレポートを通し、日本とVRの今を観察する。

VRで、演劇が変わる

 今年で2回目の開催となるVR CREATIVE AWARDは、VRの研究者・開発者が集まるプラットフォームとして設立された「VRコンソーシアム」が主催する、日本で唯一と言えるVRの公募賞である。
 VRコンソーシアム代表理事・藤井直敬氏は、ダンボール製のビューワーとスマートフォンを使ったVRサービスを展開する「ハコスコ」のCEOだ。

 VR CREATIVE AWARDは、大きく分けて先行の最終段階まで残った「ファイナリスト」によるプレゼンテーションと、それらのデモによって成り立っている。
 今回のVR CREATIVE AWARD 2016で最も注目を集めたのは、クリエイティブ集団「ライゾマティクス」だった。
 真鍋大度氏を中心とするライゾマティクスは、一般的には音楽ユニット「Perfume」の演出でその存在を知られているが、最先端のメディアテクノロジーを駆使して展開されるクリエイティブはVRにも発揮されている。


border
Rhizomatiks Research / ELEVENPLAY / evala / Takayuki Fujimoto
※詳細は画像をクリック

 昨年12月には東京・表参道のスパイラルホールで、今年2月には山口情報芸術センター(YCAM)で上演されたダンスパフォーマンス「border」。機械に制御された未来を舞台とするこのダンスパフォーマンスを、観客はHMDを装着し、無線制御された電動車いすで体験する。

 「舞台演出はパフォーマーと観客、ステージと客席、現実と仮想など、さまざまな構成要素が組み合わさってできている。borderでは、HMDを通して体験することで、それら構成要素の境界が曖昧になるようなダンスパフォーマンスを目指しました」と、ライゾマティクスリサーチの花井裕也氏は話す。

 当日のデモでは、参加者はHMDによるVR映像のみでborderを体験した。360度見渡せる世界の中で、現実に仮想現実が混ぜられたり、完全に仮想現実に移行したりすることを繰り返すうち、どこまでが現実で、どこからが仮想現実なのかが次第に判別できなくなる。
 そうした視覚効果を最大限に引き出しているのが“レイテンシー”の処理だ。一般的にHMDを通して見た映像は、頭の動きに比べて遅れて見える。borderで使われているHMDには、映像が遅れる分、あらかじめ逆方向にずらして表示する処理が施されているため、映像の遅れを感じにくく、まるでHMDを装着していないかのような、現実に限りなく近いフィーリングを得ることができると言う。この処理によって現実と仮想現実の境界が限りなく曖昧に感じられるのだ。

 borderは、VR CREATIVE AWARD 2016で優秀賞に輝いている。


実際にデモで使われていたVR映像。ハコスコやGoogle Cardboardを用いて鑑賞すれば、実際のborderの観客と同様の視点からのVR体験を楽しめる。
※詳細は画像をクリック



  1. 1
  2. 2
  3. 3
この記事の評価
現在の総合評価(0人の評価)
0.0
あなたの評価
決定
  • すべての機能をご利用いただくには、WISDOM会員登録が必要です。
この記事に対するコメント
  • すべての機能をご利用いただくには、WISDOM会員登録が必要です。

同意して送信する

コラムニスト・プロフィール

森 旭彦もり あきひこ

1982年京都生まれ。2009年よりフリーランスのライターとして活動。主にサイエンス、アート、ビジネスに関連したもの、その交差点にある世界を捉え表現することに興味があり、インタビュー、ライ ...

プロフィール詳細



バックナンバー一覧を見る


Copyright ©NEC Corporation 1994-2017. All rights reserved.