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Technology to the Future 第4回 日本の原風景を守る!? ロボットと農業の未来の関係

テクノロジー 森 旭彦 2015年08月21日

未来の里山は、テクノロジーが守る!?

 農業の新しい形を模索することは、日本の社会問題を解決する可能性もあると蒲谷氏は話す。たとえば今、日本では人口の都市集中化が進み、日本の国土の約80%を占める中山間村地域から人がいなくなって過疎化している。山から人がいなくなることは、山を維持管理する人がいなくなることを意味する。すると、洪水や地すべりが頻発し、国土が荒廃してゆく恐れがあるのだ。


  • 蒲谷氏:

    中山間村地域で野菜を高効率でつくる仕組みができれば、それは大きな産業になります。僕のロボットは基本的にはホームセンターで売っているものでつくることができ、導入も比較的簡単です。
    また地域社会に、高付加価値のハイテク産業があれば、大学進学などで都市部に出て行った若者が帰ってくるチャンスになります。今は生産者の意識も少しずつ変わってきて、農家を継いでいる世代にも、大学を出て一旦就職してから帰郷してきた人が増えてきています。若く、ビジネススキルを持ち合わせている彼らに新しい農業の実践者になってもらえれば、大きな可能性が生まれます。
    小型のはたらくロボットが人間とうまく協調する社会を農業からつくっていくことができれば、日本が変えられるのではないかと僕は本気で思っているのです。

 蒲谷氏は10年後、地方では小型ロボットのほうが人よりも多くなる未来を見ているという。現在は、「実際にロボットを導入すれば、どのように収益を上げられるか」という、農業生産経営における「成熟モデル」をつくっているそうだ。
 農業を始めた当初、蒲谷氏は、まわりの農家からは浮いた存在だった。しかし実際に成果を上げ始めると「うちの土地、空いてるから使っていいよ」と声をかけてもらえたり、お茶飲み友達としていろんな意見交換をするようになったという。


  • 蒲谷氏:

    山があり、各地に整備された農業水利網によって豊かな水が供給される水田があり、遠い空に煙が上がっていくような里山の風景は、日本人の原風景。僕たちはこの風景を失ってはいけない。誰もが心に安らぎを得られる風景を未来へと受け継いでいくためには、まず地域の農業が守られなければならない。そのためにも僕は農業ロボットの可能性を広げていきたいと思っています。

 時代が変われば産業が変わる。農業の形も変わる。
 それでも変えたくない風景があること。農業ロボットは、日本人の文化としての里山の風景を守るテクノロジーでもあるのだ。



(2015年8月21日公開)

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  • ZUICHIさん

    美しい日本の里山を見ると心が落ち着きます。 しかし私の住む地方でも耕作放棄地が増え、子供時代に泥んこになりながら遊び回った里山も無くなってしまいました。 20年後には人口減少が進み人のいない荒野と化したかつての里山があちこちに広がっているのかなぁと寂しい気持ちでおりましたが、この記事を読んで一筋の希望を感じました・・・ぜひ実現させたいですね。

    2015年08月24日 19:24

コラムニスト・プロフィール

森 旭彦もり あきひこ

1982年京都生まれ。2009年よりフリーランスのライターとして活動。主にサイエンス、アート、ビジネスに関連したもの、その交差点にある世界を捉え表現することに興味があり、インタビュー、ライ ...

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