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Technology to the Future 第4回 日本の原風景を守る!? ロボットと農業の未来の関係

テクノロジー 森 旭彦 2015年08月21日

農業を本気でハックしたビジネスパーソン

 蒲谷氏はもともとビジネスパーソンだった。約30年間に及ぶ、地域計画のコンサルタントや事務機器メーカーのエンジニアとしてのキャリアで培ったものは、イノベーションのマネジメントやソフトウェアの開発、さらには先進的なビッグデータ処理までが含まれる。
 そんな彼は50歳を目前とした頃に訪れたバルセロナのサグラダ・ファミリアで、唐突にトマト農家になることを思いつき、転職を決意したという。その当時のことを蒲谷氏は天啓のようなものと記憶しているという。

 さっそく農地を手に入れ、無農薬のハウス栽培を始めた。2年目からは、栽培したトマトの販売も開始した。安心・安全な上、甘くて美味しいと評判を呼び、東京を中心として販売は好調だった。思いつきで始めた農業が見事、成功を収め始めたのだ。
 しかしここで蒲谷氏はふと思ったという。「毎年同じことの繰り返しだ。これならロボットでやればいい。それも、“まっくろくろすけ”のような」。蒲谷氏の提案する農業ロボットのコンセプトは「まっくろくろすけ」。スタジオジブリの名作『となりのトトロ』に登場する、黒くて丸い、不思議な生き物だ。


  • 蒲谷氏:

    ロボットが、単機能として「物を運ぶ」、「果実を収穫する」というのは重要な機能です。しかし農場では多様な仕事があり、それぞれの仕事が連動しています。そのような状況の中では、大きな鉄の塊のようなロボットが1台ビニールハウスの中に入って行って、すべての農作業をするのは現実的ではないように感じました。「Raspberry Pi」のような、小さくてシンプルなコンピュータで制御できるたくさんのロボットが、様々な作業を分担して行うことが最適です。そうした複数のロボットやセンサーなどを効果的に使うためには、全体を統合的に制御することが必要です。まっくろくろすけは小さな生き物ですが、集まって大きな形を成すことができる、そうしたアーキテクチャをつくろうと考えたのです。

 この発想から最初に生み出されたものは、小型の四本脚ロボットだった。段差や凸凹の多い不整地の農場を闊歩する。それは、蒲谷氏の構想が形になり始めた瞬間だった。こうした小型のロボットをネットワークし、日本中の農場で、同じOSで運用してゆくこと。つまり日本中をひとつの巨大な農場としてマネジメントしてゆくことが、蒲谷氏の見ている未来の農業の姿だ。
 アーキテクチャを構想し、テクノロジーを使って、農業をマネジメントする。蒲谷氏はビジネスパーソンの発想で農業をハックしたのである。


自作の四脚ロボット
安価であり、すべてホームセンターにある材料で制作できる。

  • 蒲谷氏:

    フューチャアグリのコアコンピテンシーは、片手で持てるような高性能・低コストの協調分散型ロボットの運用OSです。農業小型ロボットと人工知能に、数万人規模の知識マネジメントを掛け合わせることで、数百人の農家と、数百台のロボットが、数百の農作業を、数百の農場で同時に協業することが可能になれば、まったく新しい農業の形を提案することができるのです。

 そうして個々のロボットから得られた日本中の農場のデータ(気温や日照量などの農場のコンディションから収穫高まで)を集約し、分析することで、日本中の農業の生産効率を底上げする知識を得て共有することも可能になる。

 現在フューチャアグリは、株式会社サラダボウル、株式会社JSOLとともに、農業生産者向けデータマネジメントモデルの導入を模索している。新しく開発しているセンサーや環境計測ロボットを使い、生産現場のデータを解析。それらを活かしてロボットや栽培モデルなどの開発を行い、従来比で1/10以下のコストで可能になる生産管理システムの普及を実現することを目標にしている。

 たとえガウディでも、はたらくロボットが切り拓く未来の農業について、ここまで予測することはできなかっただろう。



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  • ZUICHIさん

    美しい日本の里山を見ると心が落ち着きます。 しかし私の住む地方でも耕作放棄地が増え、子供時代に泥んこになりながら遊び回った里山も無くなってしまいました。 20年後には人口減少が進み人のいない荒野と化したかつての里山があちこちに広がっているのかなぁと寂しい気持ちでおりましたが、この記事を読んで一筋の希望を感じました・・・ぜひ実現させたいですね。

    2015年08月24日 19:24

コラムニスト・プロフィール

森 旭彦もり あきひこ

1982年京都生まれ。2009年よりフリーランスのライターとして活動。主にサイエンス、アート、ビジネスに関連したもの、その交差点にある世界を捉え表現することに興味があり、インタビュー、ライ ...

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