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実践!ゲーミフィケーション 第5回 ディズニーの事例に学ぶ、ゲーミフィケーションの実践

テクノロジー 井上 明人 2013年11月21日

<前回のあらすじ>

 人事システム改善プロジェクトを任され、そのための斬新なアイデアを求めて、ゲーミフィケーションの世界で有名なスミスを訪ねた人事部課長の木山と若手社員の井島。前回は新しいアイデアを手早く効率的に引き出す「3-12-3 ブレインストーミング」や視覚的にアイデアをまとめる「デザイン・ザ・ボックス」、プロジェクトを気持ちよく終えるための仕掛け「Memory Wall(思い出の壁)」といった具体的なゲーミフィケーションの手法を学んだ。

事業システム全体にゲーミフィケーションを組み込むディズニー


  • 木山:

    ゲームストーミングが会議に役立ちそうなことはわかりました。ほかにも実際にゲーミフィケーションを活用しているような企業はあるのでしょうか?


  • スミス:

    はい。では、事業システム全体で取り組んでいる例としてディズニーが挙げられると思います。たとえば昔から飲食業や、接客業では、アルバイトの人にうまく働いてもらうためのいろいろなゲーム的な仕組みを導入していたのはご存知でしょうか。


  • 木山:

    なんとなくは…


  • スミス:

    ディズニーなどは、従業員の9割がアルバイトで構成されていることが知られているのですが、彼らを教育するためのメソッドにゲーム的な仕組みが導入されていますね。
    たとえば、何かしらの素晴らしいパフォーマンスをしている部下を発見したら、カードが手渡されたり、カードを集めると何かしらの特典がついてきたり、といったようなことをやっています。さらに、いろいろと能力をもったスタッフや、勤続年数の長いスタッフなどに各種バッジが与えられるようになっていて、ゲーム的な特典を意識した要素が結構あるんですね。
    たとえば、ディズニーのスタッフに与えられているバッジの一覧 なんて、前回ご紹介したCIMOSのバッジ一覧みたいでしょう。


  • 木山:

    なるほど、なるほど。面白いですね。ただ、一つ疑問があるのですが、さきほどから何度もこういったバッジシステムなどは、ストレスにならないように、という話が出ていますが、ディズニーはそこのところはどのようにやっているのでしょうか。


  • スミス:

    採用プロセスと、新人教育プロセスの二段構えで、ディズニーで評価されるということに意義を感じるような人材の集まる場をつくっている、という感触ですね。
    まず、そもそも、採用する段階でディズニーが好きな人が集まるわけですが、「ディズニーランド」のイメージというのが、応募者にまず共有されていますよね。


  • 木山:

    採用はかなり絞るんですか?


  • スミス:

    いえ、応募者のうちの半数近くが受かるようです。基本的には、可能な限り多くの人に門戸を開こう、という方針のようです。落ちるのは基本的に、舞浜駅から遠い人のようですね。通うのが大変な人を主に落とすようです。で、年間1万人以上が受けにくるようです。そしてその半数が合格する。


  • 井島:

    その採用プロセスのどこにコツがあるんですか?


  • スミス:

    採用プロセスと、教育プロセスが一貫しているんですね。教育プロセスがまた、非常に長いらしいのですが、ディズニーの現場に出るということがいかに誇らしいことなのか、ということを感じさせることを徹底してやるわけです。
    まず面接会場に着くと、ディズニーの音楽が流れてきて、そこに数多くのディズニーグッズが並べられているわけですね。そこで、ディズニーのクラシックフィルムなど、ディズニーの歴史を感じさせる仕掛けを置いておく。で、さらに採用された後には、ディズニーの考え方などを、物語とともに伝えられて、丁寧な現場研修プロセスを得て、ようやく現場に出るわけです。
    採用されて「はい、じゃあ、明日から現場に出てください。OJTで学んでください」みたいな話ではなくて、現場に出るまでに、従業員を盛り上げるんですね。「顧客満足度をあげるためには、従業員満足度を高めておく必要がある」という考えを持っているんだそうです。


  • 木山:

    ゲーム会社がお客さんにゲームをやってもらう場合「お客様に満足していただく」ということですが、人事でゲームを扱うということは、従業員に満足していただくということですよね。それは納得できますね。
    ただ、それでもやはり、合わないという人は、一定確率で出てきそうな気もしますが…


  • スミス:

    ええ、そうだと思います。採用プロセスを含めたディズニーの事業システムというのは、そこにどう対応しているかというと、先ほど挙げた1万人以上が採用試験を受けに来るというポイントだと思っています。


  • 木山:

    それだけ、採用試験を受けに来て、半分も採用していたら、すぐにアルバイトスタッフで満杯になってしまいますよね。


  • スミス:

    ゲームを設計するときに、極めて重要になるポイントの一つは、きちんと退出の可能性をつくっておく、ということです。
    これは、アルバイトスタッフを中心にしているからこそ構築可能な事業システムですが、ディズニーのゲームにのめり込むのがつらいな、と思ったらそこから出て行けばいいわけですね。
    もちろん、人がけっこうな速度で辞めていくとは言っても、いわゆるブラック企業的な辞め方とはまたちょっと性質が違いますし、「ディズニーで働くのが楽しい!!」と思っている優秀なコアスタッフはきちんと残っているようです。長年ディズニースタッフをやっているアルバイトの方というのもそれなりの数いらっしゃるようです。


  • 木山:

    なるほど。スタッフに2レイヤーあるということですね。アルバイトスタッフの中にも流動層と、固定層があって、ゲームにハマった人は固定層として働き続け、「まだハマれるかどうかわからないなあ」という人は流動層として同じ職場にいるという感じでしょうか。


  • スミス:

    そうですね。ただ、そこで長年やっている固定スタッフの人が、完全に日の浅いスタッフと同じということだと、スタッフのロイヤリティ(忠誠心)も生まれません。賃金上の差はもちろんある程度ありますが、いかんせんアルバイト契約ですから、正社員のようなやり方はせずに、バッジなどで、自己肯定感を構築していくわけですね


  • 木山:

    そのやり方には、批判もありそうではありますが、非常に面白いですね。オリエンタルランドの正社員たちはきちんと「会社」なのでしょうが、「会社」というか、聞いているとコミュニティのマネジメントの話のような感じもしますね。


  • スミス:

    おっしゃるとおりだと思います。ある程度、流動性のあるユーザーコミュニティの運営と、「会社」の運営の中間をいくようなことをやっている、という感じがします。


  • 井島:

    退出可能性をつくる、という話はなるほど、という気がしましたが、もう少し普通の会社での事例は何かないでしょうか…?


  • スミス:

    ええ、事業システム全体を再構築するというのは、大変ですよね(笑)。では、もう少しシステム寄りの事例を次にお話しましょうか。

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  • カワさん

    自分が大事にされていると感じるとモチベーションが上がります。ちょっとした気配りをバッジ等で具体的に
    伝えることが、アルバイト等の非正規社員へも大変有効な手段だと理解しました。
    問題は、マンネリをどう打開するかにあると思いました。

    2013年11月25日 16:16

コラムニスト・プロフィール

井上 明人いのうえ あきと

現在、国際大学GLOCOM客員研究員。2005年慶應義塾大学院 政策・メディア研究科修士課程修了。2005年より同SFC研究所訪問研究員。2006年より国際大学GLOCOM研究員。2007 ...

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