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ビジネスに効く世界の歴史 第3回 清の“賢帝”康熙帝から学ぶリーダーとしての資質

経営・戦略 出口治明 2015年06月19日

 ライフネット生命保険の会長兼CEOで、著書『仕事に効く 教養としての「世界史」』(祥伝社)がベストセラーとなっている出口治明氏。博覧強記の教養を経営に生かす出口氏の姿勢は、多くのビジネスパーソンから支持を集めています。そんな出口氏に「経営・組織」を考える上で重要な世界史の偉人を紹介してもらう当連載。背景にある世界史的な教養をレクチャーしてもらいつつ、現在に通用する実践的な経営論を考えます。

馬鹿を装っていた幼帝時代

 今回ご紹介するのは、中国で最高の賢帝と言われている、清の康熙帝(こうきてい)です。清は満洲族のヌルハチが建国しました。その次はヌルハチの子どものホンタイジが継ぎ、3代目には順治帝(じゅんちてい)が選ばれます。順治帝はホンタイジの第9子であり、後継争いのなか、6歳で皇帝に即位しました。その際に皇位を争ったドルゴンという叔父が摂政となり、政治を行いました。

青年時代の康煕帝

 順治帝の後を継いだ康熙帝も、8歳で即位した幼帝でした。ドルゴンが好き放題していたのを見ていた順治帝の遺命で、誰か1人を摂政にすることは避けられ、4人の有力者が康熙帝に仕えることになりました。しかし、結局は4人のなかで権力争いが起こってしまう。康熙帝はそれを見ていて、子どもながらに「このままではいけない」と思うようになります。

 しかし、迂闊なことをしたら自分が排除されるかもしれません。何しろほかにも、皇帝候補はたくさんいるのですから。そこで康熙帝は、モンゴル相撲に一所懸命取り組んだりするなど、馬鹿を装うようになります。政治に興味がないような振りをするのです。そして、15歳のときに隙を見て、オボイという一番の有力者をクビにしてしまう。

 「今度の皇帝はモンゴル相撲ばかりしていて扱いやすいな」と油断させておいて、瞬時に排除してしまいました。子どもの頃から、政治は、「周到に準備をして、やるときには一気呵成」ということがわかっていたのです。これは経営の鉄則でもあります。

 その頃、清には雲南、広東、福建という3つの藩がありました。清が中国に入り、支配することになった際に貢献した明の武将がそこを治めており、徴兵権や徴税権を持っていました。ところが康熙帝は、国のなかに独立国のような三藩があるのはおかしいと考えるようになります。「お世話になったけれど、もう十分処遇した。潰してしまおう」と。

 具体的には、広東の武将の「家督を息子に譲って、自分は故郷の地に帰りたい」という申し出を拒否。これに怒った三藩は大反乱を起こし、一時は揚子江の南を制圧します。揚子江の南はよく作物が採れ、GDPの過半を占める豊かな地域。これに焦った清の大臣は、「満州に帰って出直しましょう」と進言しますが、若い康熙帝は、「なにを腑抜けたことを言っているのだ。我々は正当王朝で、向こうは反乱軍だ」と徹底抗戦を主張し、結果、三藩を潰すことに成功します。「危機に面しても動じず、自分が信じていることに対して揺るがない」という指導者として必要な態度を貫いたのです。

南巡する様子

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  • 芋の露さん

    形式的であってもLeaderになった時に、「周到準備、一気呵成」は可能であるが、権限を持たない時は、周到準備だけで終わることが多い。将来を見通せないLeaderを説得して「適切な道」を気付かせて歩き始めさせるのはなかなか難しいもの。康熙帝にも真の師、或いは真の友が居たと推測される。「衆議一決」を装って果断に実行したような気がする。「生物としての人間は弱い」ことを理解していたはず。

    2015年06月23日 05:47

コラムニスト・プロフィール

出口治明でぐち はるあき

ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO。 三重県美杉村生まれ。60歳の時に戦後初の独立系生命保険会社を起業。 主な書著に『直球勝負の会社』『仕事に効く教養としての世界史』『働 ...

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