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なぜ企業はCSRに取り組むのか ~多様化するCSRと本業の関係 第3回 アサヒビールが社会貢献を続ける根拠とは何か

経営・戦略 二階堂 尚 2012年05月28日

CSR資産としての「アサヒの森」

 アサヒビールの前身である大日本麦酒が広島県の庄原市と三次市にまたがる広大な森林を購入したのは、1941年のことであった。日本が泥沼の戦争に突入していこうとしていた時期である。ビール瓶の王冠の裏側に貼るコルクの輸入が途絶えることを危惧し、その代替品となるアベマキの樹皮をこの森から調達しようとしたのである。

 しかし、結局コルクの輸入は絶えず、アベマキの樹皮がビールの王冠に使われることはなかった。戦後、大日本麦酒の分社化によって新たに創設されたアサヒビール(当時は朝日麦酒)は、この森林の保有権を得て、木材調達地としての維持、運営を始めた。森林を管轄したのは、「庄原林業所」と名づけられた関連事務所で森林管理を行っており、2007年に「アサヒの森環境保全事務所」と改称された。

 アサヒの森が明確なCSRコンテンツと位置づけられたのは、その頃である。アサヒビールでCSR活動を推進する経営企画本部社会環境部長の友野宏章氏は説明する。

 「それまでの森林経営から、環境保全に軸足をはっきり移しました。アサヒビールの環境への取り組みのシンボルとしての、さらには具体的な環境教育の実践の場としての位置づけを明確にしたのです」

 「環境教育の実践の場」というのは、この森に地元の小学生や保護者などを招待して環境啓発活動を実践していることを指している。

 アサヒの森環境保全事務所の社員スタッフは、現在4人。その4人が中心となり、地元の森林組合、製材関係企業などの協力を得ながら、東京ドーム463個分の広大な敷地を管理している。木材の販売は今も続けられている。

 「ビール事業は、麦や水といった自然の恵みがなければ成立しません。自然環境を守るという姿勢が、そのまま自社の事業の継続性に結びつくと私たちは考えています。アサヒの森は、その私たちの姿勢を象徴する場所です。これだけの自然環境を社有林として70年以上にわたって維持してきたこと、現在も維持し続けていること自体に大きな意味があるのです」

 アサヒの森は、こう言ってよければ、アサヒビールの「CSR資産」なのである。その資産の価値を高めているのは、その規模だけではなく、70年という歴史、つまり継続性そのものである。取り組みの継続を断念することは、その資産価値を放棄することであり、自社の環境活動のシンボルを毀損することである。このロジックが、アサヒの森保全というCSR活動の継続性の一つの根拠となっている。


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コラムニスト・プロフィール

二階堂 尚にかいどう しょう

1971年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。卒業後フリーの編集ライターとなる。現在は、ウェブサイト、新聞、雑誌、PR誌などのインタビュー記事を主に手がけている。書籍の執筆、編集、プロデュース ...

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