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賢者に聞く「ビジネス教養塾」 第8回 英語の世紀に日本語を守るには──水村 美苗氏に聞く

スキル・キャリア WISDOM編集部 2009年03月16日

働き方の新しいモデルはこれから出てくる

──『日本語が亡びるとき』にはまた、〈叡智を求める人〉という表現が頻繁に出てきます。〈叡智を求める人〉の今日的イメージとはどのようなものなのでしょうか。

水村:
すぐに思い浮かぶのは、先日お亡くなりになった加藤周一先生のような方ですね。総合的な知を目指して、この世で知られていることは全て知りたいという欲望を持っている人。稀にしか存在しないけれど、潜在的にはどこにもいて、時代の要請があれば必ず現れる人──。そんなイメージです。もっとも、現代は知識分野が非常に細分化されているので、そういった人が出てくるのはなかなか難しいのかもしれません。

──では、ビジネスにおける「叡智」については、どうお考えですか?

水村:
叡智とは分野を問わないものだと私は思っています。自分が携わっているビジネス以外への知識欲を持っており、科学や文学に自然に興味が湧く人。そういう人は叡智を求める心が旺盛なのだと思います。恐らく、人間のタイプなんでしょうね。


しかし、ビジネスパーソンは叡智への欲求によってではなく業績によって評価される存在ですし、叡智を磨く時間もなかなかとれないのが現実だと思います。経済がグローバル化して以降、世界的に労働時間が長くなる傾向がありますよね。人々が安い賃金で12時間労働に従事しているような国と競争しなければならないわけですから、それも仕方がないのかもしれません。そうして労働時間が長くなれば、おのずと本を読む時間は少なくなります。仮にビジネス書や自分の仕事の役に立つ本は読んだとしても、小説などを読む時間はなかなかとれない。それが現実だと思います。


私はビジネスに携わっている方々をとても尊敬しています。日本経済を背負って今にいたるまで最前線で戦ってこられたのはビジネス界の皆さんです。ビジネスの領域は日本における最も優秀な人材を集めていると思っています。だからこそ、そういう優秀な方々が自由に勉強する時間がとれないのはつくづくもったいないことだと思うんです。もう少し時間に余裕のある働き方ができるようになればいいのですが。

──歴史的に見れば、商いと文化的活動を両立しているような人は少なくなかったわけですよね。

水村:
かつてはたくさんいましたよね。昔の日本人は時間の使い方が贅沢だったように思います。好きな時に休暇をとったり、いろいろな分野に興味をもっていたり。現代の私たちから見れば羨ましい限りです。もっとも、最近になって労働生産性と労働時間は必ずしも直結するものではないという考え方が広まりつつありますよね。時間よりも社員のモチベーションを重視した会社づくりが注目されていますでしょう。そう考えれば、働き方の新しいモデルは、これから出てくるのかもしれません。グーグルでは金曜日は自分の仕事以外に興味あることを研究するのが義務づけられているのは有名です。

──現在の困難な時期を乗り切っていくためのアドバイスを頂けますでしょうか。

水村:
私が読者の皆さんにお聞きしたいぐらいですよ(笑)。この状況だと、明るいことを言うのは誰にとっても難しいことだと思います。でも、経済の動きはサイクルですから、いずれ好転する時が来るだろうと考えることができると思います。


一方、例えば少子化の問題、それから私が再三申し上げている日本語の衰退の問題。これらは、いずれ良くなるというタイプのことがらではありませんし、いずれも亡国につながる重要な問題です。ある意味では、これらの問題の方が、経済よりも深刻なのではないかと私は思っています。



(2009年3月16日掲載)



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