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日本企業必見!興隆アジアの新ビジネス事情 第5回 マレーシア進出の前に知っておきたい「ビジネス習慣10選」

マーケティング WISDOM編集部 2016年06月22日

 インターネットで調べただけでは知り得ない、しかし進出する前に知っておきたい現地ならではの「ビジネス習慣」を、現地で活躍する日本人ビジネスパーソンへの取材を交えてご紹介する本シリーズ。今回は、マレー語・英語・中国語・タミール語、イスラム教・仏教・ヒンドゥー教・キリスト教が共存する、文化的な多様性では随一のマレーシア。現地で活躍する2人の日本人ビジネスパーソンへの取材をもとに、マレーシア進出の際に必要なビジネス習慣10箇条をご紹介します。


 マレーシア。成長著しい東南アジアの中でも、市場が成熟したビジネスを展開するのに魅力的な国だと言われています。

 使用される言語は、マレー語、英語、中国語、タミール語。宗教は、イスラム教、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教と、その文化的な多様性は域内でも随一。日系企業にとっては、他の地域でも活かせる嗅覚を磨くのにも良い場所なのでしょう。

 クアラルンプールをはじめ生活する場所としても申し分なく、一般財団法人ロングステイ財団などが調査する日本人の「人気移住先ランキング」では軒並み上位。特に教育移住先として人気で、質の高い教育をリーズナブルに受けられると評判です。ビジネス以外の観点からも住むメリットは多いのです。

 今回は、そんなマレーシアに赴任、転職、もしくは起業など、さまざまな形でビジネスに携わる際に押さえておきたい商習慣。そして、生活する際に活かせるティップスを、現地で長年活躍する2人の方に伺い、その中から10個を厳選してご紹介します。

 お話を伺ったのは、昨年日本に本帰国するまでの約10年間、現地でゲーム会社を経営していた澤田将司さんと、現地でキッズプレイグラウンド、ベビー用品の輸入販売、街コン・婚活支援など多岐にわたる事業を展開される木村希さんです。


首都クアラルンプールにある出張者にも人気のグルメ街「アロー通り」

「押さえておきたい商習慣」編

1. マレー系優遇政策に注意

 マレーシアには外資系企業を誘致するための国策がある一方、進出した後のトラブルの火種となりかねない、企業内でマレー系の人びとを優遇するよう促す政策や政治的な力学も存在します。

 「ブミプトラ政策(マレー系の人びとを経済的に優遇する国策のこと)が基盤としてあり、それが企業の根幹に関わるケースが起こり得ます。例えば、政府からの補助金を受けるには、その会社にマレー系の資本が51%以上入っていないといけない。マレー系が一定以上の株を保有していないといけない、もしくはマレー系の取締役がいないと、そもそも会社を作れない業種もあります」(澤田さん)

 「政府系の入札プロジェクトだと、マレー系の人が会社の経営陣に入っていないと受注がほぼ不可能とも言われています。結果、不本意に経営の主導権をマレー系に握られたり、大きな案件を受注できても、途中で中華系など他の民族の幹部が会社から追い出されたなんて話も聞きます。こうしたリスクに対するマネジメントには、特に経営層の人は気をつけたほうが良いでしょう」(澤田さん)

2. 民族で異なる社員の引き止め策

 従業員のジョブホッピング(短いスパンで転職を繰り返すこと)は、東南アジアに進出する日系企業に共通する悩みでしょう。冒頭でご紹介した通り、マレーシアにはさまざまな民族が暮らしていますが、民族によってリテンションのための策も異なるそうです。

 「従業員を引き止めたい場合、もちろん人によりますが、中華系の人には結局お金、という傾向があります。つまり、給料を上げるということです。ただし、国のインフレ率を考慮すると、毎年20%は上げないと彼らとしては給料が上がっている感覚は得られません。つまり、5年で給料は倍です。日系企業の体質がその上昇ペースを受け入れるのは容易ではないでしょう」(澤田さん)

 「中華系に比べ、マレー系の人たちは、同僚との関係や会社への愛着など、よりメンタルな絆を会社との間で築き、定着してくれるように思います。彼らは良い意味で、のんびりしているので、中華系に比べると給料の上昇率は低いですね」(澤田さん)


澤田将司さん

3. 給料を下げるのは難しい

 企業に対する給料を上げることへのプレッシャーは大きいものの、たとえ従業員のパフォーマンスが低かったとしても、給料を下げることは難しいようです。

 「一度給料を上げてしまうと、下げるのは至難の業。日本よりも従業員が保護されています。人件費のカットはなかなか難しいです」(澤田さん)

4. 従業員を解雇するときのモラル

 しかし事業環境が厳しいと、どうしてもパフォーマンスの低い従業員を解雇しなくてはならない状況も出てくるでしょう。

 「もしも会社都合で従業員をクビにする場合には、「ラストイン・ファーストゴー」という暗黙の了解が存在します。基本的には新しく入社した従業員から解雇するということ。マレーシアにおけるモラルの鉄則です」(澤田さん)


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5. 輸入の難しさ

 業界を絞って、商習慣を深掘りしたいと思います。

 日本からマレーシアに自社製品を輸入して、それを現地で販売したい日系企業もいるでしょう。そのような企業は、事業計画を立てる際、グレーな税関基準によるリスクを加味したほうが良さそうです。

 「日本のベビー用品を輸入してマレーシアで販売していますが、税関の検査が緩かったり厳しかったりと、そのときどきによって変わります。明確な基準はなく、税関担当者のさじ加減としか言いようがありません。例えば、おむつを輸入するにしても、前回は「紙製品」として扱われたので輸入税が免税されたが、今回は別カテゴリーに分類されて課税されたなんてことも…」(木村さん)

 「特に気をつけないといけないのは、イスラム教の伝統行事である『ハリラヤ』の時期。この時期、イスラム教徒の多くは地元に帰省して家族と過ごすのですが、「賄賂」が盛り上がるタイミングでもあるのです。普段はスルーするはずのルールを厳しく押し付けられたり、些細なことに対して「違反」など言いがかりをつけてお金を取ろうとします。これは地元のマレーシア人でも苦労していることです。しかし残念ながら、こればっかりはどうしようもなく、できることは心づもりくらいでしょう」(木村さん)

6. 店舗業にとっては今が有利

 店舗を運営する事業においては、店舗の立地がモノを言います。ショッピングモールが次々と建設されるマレーシアでは、今は良い立地の物件を手に入れやすい市況だそうです。

 「5年前だったらモールの数も少なく、いい場所はテナントの取り合いのような状態でした。しかし今は、モールができすぎたくらいで、日本で言う「ららぽーと」くらいの規模のモールが1年に20?30軒、しかもモールの向かいにモールが立つくらいの勢いで作られています。ですから、スペースを探している企業は外資系であっても歓迎され、テナント料も交渉しやすいでしょう」(木村さん)

7. 店舗スタッフがお金を持ち出し

 しかし、店舗を営む企業の多くが店舗スタッフの教育に困っているそうです。

 「採用しても、突然来なくなるなどは当たり前。各店舗をきちんと管理するためにアルバイトの人をマネジャーに引き上げると、いきなり威張り出してまわりから嫌われたり、ひどい人になると、店舗に自分だけしかいない時間にお店のお金を盗む人も。主婦の人を雇っていたのですが、彼女たちは生活が苦しくなるとお金を取ってしまう。そこで、待遇を良く感じてくれる学生を雇い始めました。学生でも店舗運営をできるようオペレーションを整理するなど工夫しました」(木村さん)

8. タクシー運転手に注意

 アポ先からアポ先への移動にタクシーを利用することも多いそうですが、外国人が事件に巻き込まれることがたまにあるそう。特に慣れない出張者は気をつけたいものです。

 「通常の倍の料金を吹っかけられるくらいのことはかわいいもの。行き先でないどこかの場所に連れて行かれたり、乗客が運転手に切りつけられるといった事件が年に2~3回起こります。それは料金のことで口論になったからとかではなく、突然脈絡もなく起こることも。こればかりは対処のしようがありませんので、できれば自分のクルマか、もしくは出張中ならチャーターしたクルマに乗るようにしましょう」(澤田さん)


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wisdomとは?

ライター:岡 徳之(おか のりゆき)
編集ライター・Livit代表。
慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、クリエイティブ分野の記事執筆の仕事がきっかけでライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をマーケティング、テクノロジー、ビジネスに広げ、さらに企業のオウンドメディアの企画制作にも従事。案件規模の拡大にともない、記事編集やメディア運営も担当するように。現在はアムステルダムを拠点に、欧州・アジア各国をまわりながら Livit の運営とコンテンツの企画制作を行う。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約25媒体を担当。担当連載も多数。

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  • choikawaさん

    難しさが多い国の印象がします

    2016年07月07日 16:39



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