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偉人から学ぶ思考法 第11回 ブランドを広告するのではなく、ブランドを体現せよ ──コトラー『マーケティング・コンセプト』

マーケティング 西村 克己 2013年08月02日

 マーケティングにおいて、ブランドの構築は大きな意味を持っている。コトラーは言う。「ブランド化がなされていないならば、その商品はコモディティにすぎない。」
 コモディティでは価格の安さが唯一の購買要因となり、競争に勝っても企業は消耗する。反対にブランド化された商品は、競合他社より高くても顧客は喜んで買ってくれる。では、ブランドはどうすれば構築できるか。コトラーはこう提言している。
 「ブランドを広告するのではなく、ブランドを体現せよ」
 ブランド・イメージだけならば大量に広告を投入することで築くことはできる。しかし、ブランドそのものは顧客に「ブランド経験」を提供する社員の手で築く必要がある。
 だが、しばしばここにギャップが生じる。たとえば新聞で広告された缶詰を買いに行ったら、店頭には埃まみれの缶詰しか置いていなかった。満足度ナンバーワンを謳うホテルに泊まったら、対応があまりに無愛想だった、というような場合だ。
 サービス業界で知られる「真実の瞬間」という言葉がある。1980年代、経営危機に陥ったスカンジナビア航空を立て直した39歳の敏腕リーダー、ヤン・カールソンが大切にした言葉である。
 トップとして招かれたカールソンは「航空会社の評価は、売上や利益、飛行機の優秀さ以前に、お客さま一人ひとりがサービスに満足しているかどうかで決まる」として、コストカットではなく、最高のサービスを提供することでシェアを高め、収支を改善しようとした。1000万人の利用者は、平均5人の社員と接し、1回あたりの応接時間はわずか15秒に過ぎない。しかし、全利用者には1年間に5000万回、会社の印象が刻み込まれる。その一つ一つを「真実の瞬間」と呼び、その印象こそが会社の成功を左右すると考えたカールソンは、最前線で顧客に接する社員に自らのビジョンを伝え、アイデアを出し、実行する権限を与えた。
 その結果、1983年に同社は米ビジネス誌『フォーチュン』が選ぶ「ビジネス旅行客にとって世界最高の航空会社」となった。
 ブランドは、お客さまに接するすべての社員が、すべての場面でそれに相応しいレベルを保つ必要がある。そこでのブランド経験が広告通りか広告以上なら、お客さまは「さすが」と感心するが、広告以下だと「偽りあり」と感じ、それは口コミによって広がっていくことになる。すべての企業に「真実の瞬間」がある。

執筆:桑原 晃弥 監修:西村 克己
※本記事は書籍「1分間コトラー」(ソフトバンク クリエイティブ刊)を再構成したものです。


(2013年8月2日公開)

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  • snowさん

     勉強になります。第11回から気が付き読みました。あやうく見逃すところでした。
    毎日いろんな人と話をし、同じことをしても、この人は、気づき、あの人は気づかない事って結構ありますよね
    気づかない人に、気づかせるには、その人の思考の仕方を少し上に向けなければなりませんね。今までは、会社のことだけで(自分の仕事)目いっぱいの人に日本全体のことを考えながら あるいは、世界の事を考えながら、自分の仕事をすれば、視点を変えるだけで、いろんなアイディアが生まれてくると思いますが、そういう思考的な部分を変えていくトレーニングみたいなことを教えて頂ければ、幸いです。楽しみにしています。
     話は変わりますが、消費者側からの観点で、コンビニに水を買いに行ったところ、たくさんのペットボトルがありました。水じたいたいしした違いはないのですが、1Lのボルビックが売れたら・発展途上国に10Lの水を届ける(井戸を作る)というペットボトルの宣伝に押され、それを買いました。ほんとかどうか知りませんが、
     水は、どのメーカーでも大差はありませんが、1Lのボルビックが売れたら・発展途上国に10Lの水を届けるのアイディアかな?付加価値?考え方なんでしょうか、とても共感できましたので買いました。
    メーカーの理念というか考え方が、非常に大切だと思います。

    2013年09月09日 20:57

コラムニスト・プロフィール

西村 克己にしむら かつみ

1982年東京工業大学 経営工学科 大学院修士課程修了。富士写真フイルム株式会社を経て、90年に日本総合研究所に移り、主任研究員として民間企業の経営コンサルティング、講演会、社員研修を多数 ...

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