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ICTがもたらすビジネスの未来 第21回 建設現場が変わる~重要なのは、「バリューチェーンの本当の川下まで情報化されたこと」をどう活かすか~

マーケティング 鈴木良介 2016年09月23日

1.建設現場に求められる生産性の向上

 建設現場における生産性を上げる必要性が高まっている(1)。その背景にある大きな要因が、高齢化に伴う労働者の離職だ。技能労働者340万人のうち50歳以上である110万人が2026年までに離職する可能性が高い。
 実際に建設業就業者は、この20年間減少を続けている。1997年に685万人いた建設業就業者は2015年には500万人と27%減少している。これまで大きな問題にならなかったのは、それを上回るペースで建設投資が減少していたためだ。1992年に84.0兆円のピークを迎えた建設投資は、2015年には48.5兆円と42%も減少している。これにより生産性向上への取り組みは見送られてきた。
 しかし、冒頭で示した大幅離職の影響によって、今後生産性の向上は不可避となる。自動建機の投入や、大規模なサプライチェーンの改善などへの取り組みも進むが、本稿ではすでに始まりつつある現場での振る舞いの変化を紹介する。

2.朝礼が変わる~データ活用による作業の効率化事例

 建設はさまざまなパートナー企業が参加して進められる。また、その指揮命令系統は多層的なものだ。大型のプロジェクトともなれば、現場で作業をする企業は大規模工事で300社。場合によっては1000社を超える。そのなかで、情報伝達の不備が生じることもある。
 たとえば、指揮命令系統の上流に位置する事業者が図面を更新したにも関わらず、実際に作業を担当する事業者までその更新図面が届けられず、古い図面に基づいて施工をしてしまう、といったような不備だ。誤った施工が行われれば、手戻りが発生し、工期の延長やコストの増大につながってしまう。
 このような、誰も得をしない課題をITの力を借りて解決しようと取り組むのが鹿島建設横浜支店で情報システムを担当する持田貢氏だ。持田氏は、このような不備が起きないようにするため、「ITの活用で朝礼を変えたい」という(2)。工事現場での朝礼といえば、ラジオ体操と共有事項や注意事項の伝達であるが、そこにスマートフォンを用意して、「QRコードの確認」というプロセスを組み込めないかと持田氏は考える。
 確認対象となるのは、作業員が持つ紙図面に付与されているQRコードだ。


図:図面にQRコードが付与されている様子

 それぞれの作業員が今日使う図面のQRコードを撮影する。もしも図面が最新のものであれば、画面には“OK”とだけ表示される。古いものである場合には、“NG”と表示される。将来的にはNGの場合だけアラームを鳴らしたり、管理者に通知が行くようにすることもできるだろう。朝礼の最後にこのような簡単な確認作業を加えることによって、業務ロスを回避できると期待される。工事現場の所長からも評判は上々であるという。
 この機能は建設業界で使われている図面を共有するためのソリューションであるCheX(チェクロス)に付随して提供される。チェクロスの開発・提供を行うYSLソリューションITソリューション部グループマネージャーの木幡和哉氏は、「限られた作業員と最新の設計図面を共有するだけであれば、すでに運用されているクラウドとタブレットを活用したソリューションが有用だ。しかし、現場の外で図面に基づいて空調ダクトをつくり設置しにくる事業者にまで、タブレットを配布することは現実問題として難しい。そのような中で、より広範な協力企業のために、このような紙図面を管理するソリューションはたいへん有効と考える」という。



  • (1) 参考文献:「i-Construction~建設現場の生産性革命~」国土交通省(2016年3月)
  • (2) 筆者インタビュー(2016年8月実施)


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コラムニスト・プロフィール

鈴木良介すずき りょうすけ

株式会社野村総合研究所ICT・メディア産業コンサルティング部所属。情報・通信業界に係る市場調査、コンサルティング、政策立案支援に従事。近年では、ビッグデータの活用について検討をしている。近 ...

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