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ビジネスパーソンのための行動経済学入門 第6回 信頼 ~社会・経済にとって最も重要なもの~

マーケティング 友野 典男 2014年01月10日

ゲームで分かる信頼のあり方

 まず次のような仮想的ゲームを試して頂きたい。

 プレイヤーは2人。プレイヤーAは、「投資者」と考えて欲しい。Aは1000円持っているとして、その中から仲介者にいくら渡すか(投資するか)をまず決定する。仲介者は、その額を3倍して、プレイヤーBに渡す。
 プレイヤーBは「応答者」であり、仲介者から渡された金額からいくらをAに戻すか決定する。現実世界で言うなら、仲介者に金を預けることで金額が増えて第三者に渡り、投資者には見返りとして金銭が戻ってくる設定だと考えて欲しい。もちろん、ゲームではAは1円たりとも投資しないことも可能であり、Bは1銭も戻さず、全額を自分のものにしても構わない。



 たとえば、Aの投資額(x)が、所持金1000円のうち300円だったとすると、仲介者が3倍にして、Bには900円(3x)が渡されることになる。BがAに400円返す(=y)とすれば、Aの利得は1100円となり、Bの利得は500円である。

 ここで、自分がAの立場だったらどうするか、またBの立場だったらどうするかを考えて頂きたい。 標準的経済学が前提としている合理性・利己性に基づいて考えれば、Bは自分のところに来た全額を懐に入れてしまい、見返りとしてAに戻す金額は0円となる。一時的なお金の流れだけを見れば、それがBにとって最も有利な決定である。
 と同時に、Aは、Bがそのような決定をすると予想するから、投資しても無駄だと判断する。そこで、Aの投資額もゼロとなり、誰も儲からない。これが標準的経済学による予測である。

 私は、学生を参加者として何度もこの実験を行っている。すると、Aの投資額の平均値は約500円となり、最初に持っていた額の50%程度を投資している。Bは自分の元に来た金額のうち、40%程度をAに返している。最終的に、Aには、もともとの投資額に対して1.1倍の金額が戻ってくる。標準的経済学の予測とは全く異なり、AはBが返してくれるだろうという予想に基づき投資を行い、Bもその期待に応えているのだ。

 では、人間はどうしてこのような行動をするのだろうか? AはなぜBが戻すと予測できるのだろうか? 

 AはBを信頼し、BはAの信頼に応えることで、互いに所持金を増やすことができるからである。このゲームには、「信頼ゲーム」という名前がつけられている。



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  • メガネおやじさん

    「信頼」改めて考えさせてもらいました。
    規制するルールも個々のモラルも信頼があってこそ成り立っているのかもしれない。
    日本に住む自分は信頼があることを前提に色々なことを考えていることに気づかされました。
    信頼発生のメカニズムが分かると自分のアイデンティティの構成要素も理解できるかも

    2014年01月16日 11:16

コラムニスト・プロフィール

友野 典男ともの のりお

明治大学情報コミュニケーション学部教授/明治大学院情報コミュニケーション研究科長1954年埼玉県生まれ。早稲田大学商学部を卒業し、同大学院経済学研究科、明治大学短期大学などを経て、2004 ...

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