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ビジネスパーソンのための行動経済学入門 第1回 行動経済学とは? ~理性と感情のダンス~

マーケティング 友野 典男 2013年08月02日

 様々な商品が巷にあふれる昨今、理論だけで経済活動を全て理解することは難しくなってきている。例えば、人はあまたある選択肢の中から、理性だけを頼りに商品の機能やメリットを判断して、購買しているわけではない。実際には直感に頼っている部分が大きいのだ。人が判断して行動を起こす際の直感と感情を重視し、さらにそのメカニズムを明らかにするのが「行動経済学」の考え方だ。行動経済学は、マーケティングの成果をアップさせ、ビジネスの世界でライバルに一歩リードするのに、有効なアプローチとなるだろう。
 第1回は、人の判断に直感と理性がどのように関係しているのか、そのメカニズムが分かるテストを交えながら、行動経済学とは何かをわかりやすく解説する。

行動経済学とは「人間行動学」でもある

 最近何かと話題になることが多い行動経済学は、日常の人間の性質や行動に基づく消費・投資などの経済活動について解き明かすものである。さらに言うと、市場取引や雇用、税制、年金などの経済制度を分析し、最終的には、人々が満足のゆく生活を送り、幸福であるためにはどうしたらよいかを考える経済学の新潮流だ。2002年に、創始者の1人である米国の認知心理学者ダニエル・カーネマンがノーベル経済学賞を受賞したことで、わが国でも次第に知られるようになってきた。

 行動経済学の研究は、多くが人間の認知や意思決定の特徴を明らかにすることにフォーカスしている。人々の生活に影響を及ぼす具体的な提言はなされているが、まだまだ十分とはいえない。また、国家の政策に結びつく具体的な提案がなされるかどうかが行動経済学の成功のカギだと主張する人もいるが、この点もまだ不十分だ。行動経済学が現在重点を置いているのは、人間の認知や行動の特徴を明らかにすることであり、この点では「人間行動学」と呼んでもいいだろう。人々の暮らしに直結する政策や制度の目的は、人間の行動を望ましい方向に変えることである。人間の行動に対する理解なくして、有効な政策はありえない。その点を考慮すると、人間行動学なくして政策への貢献は望めないはずだ。また人間行動学の考え方は、人間社会に関するあらゆる分野に適用できる。社会科学はまさに人間を研究する学問だから、応用できる範囲も広い。

 人間行動学の位置づけは、医学に例えると、生理学や解剖学などの基礎医学に相当する。内科や外科などの臨床医学だけが医学を支えていると思われがちだが、実は、基礎医学なくして臨床医学は成り立たない。治療の最前線を支えているのは、一見地味な基礎医学なのである。もっとも最近はiPS細胞の研究が世間をにぎわせ、基礎医学が一躍脚光を浴びるようになってきている。同様に、生活改善や政策立案など具体的な分野に役立つためには、人間行動学のような基礎科学の意義はきわめて大きいのである。



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  • NA6CEさん

    私も100円と10円と即答してしまいました。自分の思考能力が中学生以下であることに唖然とするとともに、如何に直感に頼った生活をしているかと思うと、ちょっと背筋が寒くなりました。
    別に捻った問題でもないのにこんな誤りをするなんて、最近ワープロ(PC)に慣れて漢字が書けなくなってきている様にも通じるものを感じました。猛省するとともに、本質を見失いがちな自分に気付かせていただき、ありがとうございました。

    2013年08月15日 10:24

  • kawatさん

    システム2によって裏打ちされ、システム1で人目を惹く企画提案が重要ということか。前者だけに頼ろうとする傾向が強かったし、プレゼンで要求された。

    2013年08月08日 16:26

  • tomoさん

    ヒューマンエラーを防ぐのに役に立ちそうです。

    2013年08月06日 08:54

  • gabrielさん

    とてもおもしろかった。

    2013年08月06日 08:53

  • udonさん

    非常におもしろく、興味を引かれる内容でした。次回を楽しみにしています。

    2013年08月06日 08:06

  • tousitiさん

    モンスターペアレントとかクレーマーと言われてる人間が後を絶たない。世の中のシステムが悪いと叫び、自分の利益につながることから反する現象に対し全て自分以外の他システムや他者の所為にしてしまう。冷静に分析する基礎的人間性が問われる場面が多すぎる。本記事はそれらを冷静に問うものとして評価しています。

    2013年08月05日 13:05

コラムニスト・プロフィール

友野 典男ともの のりお

明治大学情報コミュニケーション学部教授/明治大学院情報コミュニケーション研究科長1954年埼玉県生まれ。早稲田大学商学部を卒業し、同大学院経済学研究科、明治大学短期大学などを経て、2004 ...

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