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未来授業~明日の日本人たちへ 井上明人氏  ~ゲーミフィケーションが提示する未来~

2012年09月18日

 今回の講師は、国際大学グローバルコミュニケーションセンター客員研究員で、ゲーミフィケーションの推進者としてもご活躍の井上明人さん。電力不足が続いた昨年の震災後に、ツイッターを利用した「#denkimeter」という節電ゲームを発表。これが話題となり、“ゲーミフィケーション”という言葉が世に広まるきっかけのひとつとなりました。ゲーミフィケーションが今後の世界をどう変えていくのかを伺います。

ゲーミフィケーションとはなにか

 「ゲーミフィケーション」という言葉を聞き慣れない方は多いと思いますが、簡単にいえば「ゲームの仕組みや楽しさを、日常生活のいろんなところに組み込んでいこう」という考え方です。ここ数年でSNSや携帯電話、ライフログといわれるものが低コストになり、ゲームの仕組みを日常に展開しやすくなりました。そこでいろいろな仕組みが出てきて、ビジネス的な成長も始まっています。このような状況下に出てきた言葉なのです。

 たとえばラジオ体操のハンコを集めることはゲームっぽいですし、スタンプラリーも同じです。学校の授業にゲームの要素を取り入れている先生もたくさんいますし、それはそれで素晴らしいと思います。しかし、これらとゲーミフィケーションとの間には違いがあります。それは、より多くの人がプレイしやすく遊びやすいものを昔よりも作りやすくなったという点です。ラジオ体操でハンコを押させようと思ったら、台紙を用意してハンコを用意して、景品なども用意しなければなりません。スタンプラリーの場合はスタンプも場所ごとに違いますから、大変ですよね。

 しかしいまだったら、スマートフォンさえあれば各地に行ってGPSでスタンプを押してもらうことができる。ですから費用も安くなっていろいろなところにゲームが展開しやすくなり、ゲームとして洗練されていきます。

 ゲームを作るプロセスは料理のようなものだと思っています。緊張しながら頑固親父の料理を食べることは、好きな人は好きだろうけれども、苦手な人は苦手ですよね。受験勉強もそう。つまり、もともと好きな人や楽しめる人はいいのですが、残り9割の普通の人に楽しめるものを作れる時代になってきていている。そんな状況があるからこそ、いま改めてゲーミフィケーションという言葉が意味を持ってきているのだと思います。

オバマ大統領とゲーミフィケーション

 ゲーミフィケーションはすでに、日本よりも海外で様々な変化をもたらしています。たとえばバラク・オバマが大統領選で使った手法。彼はSNSを使って支援者から資金を集めたのですが、その金額は(対立候補だった)共和党のジョン・マケインの7倍近くです。しかも単にSNSを使って支援者をまとめただけではなく、仕組みが実におもしろい。SNSにゲームの仕掛けが入っています。アドレス、住所番号を登録すると、マイページが出てきて「レベル1」だと表示されます。ここにクレジット番号を登録するとポイントがたまり、他にも5人ほどの知り合いにメールを送るとポイントがたまり、オバマ関係のイヴェントに参加したり電話をかけるとさらにポイントがたまるのです。

 結果、オバマのサイト内での貢献度が注目されはじめ、熱中するユーザーが出てきました。「これをやってくれるとうれしい」ということを定義して、やってくれた人には「ありがとう」という気持ちをわかりやすい形でフィードバックする。それをかたちとして見せたことで、支援者たちは「具体的にどんな行動をとればいいのか」を理解しやすくなっていったのです。

 スウェーデンで行われている「スピードカメラ宝くじ」というゲーミフィケーションの実践例もそうです。スピードカメラを使ってスピード違反者を罰する一方で、違反していない人をきちんとほめてあげようという企画。スピードをきちんと守っている人には抽選権が与えられ、当たると景品がもらえるので、「だったら安全に走ろう」というモチベーションにつながったわけです。24000台の車を3日間計測したところ、平均速度が22%も下がったそうです。結構な成果だといってもよいのではないでしょうか。ちなみに景品の代金は、スピード違反者の罰金から出ているそうです。



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【井上明人氏】プロフィール
1980年生まれ。現在、国際大学GLOCOM客員研究員。2005年慶應義塾大学院 政策・メディア研究科修士課程修了。2005年より同 SFC研究所訪問研究員。2006年より国際大学GLOCOM研究員。2007年より同助教。2010年日本デジタルゲーム学会第一回 学会賞(若手奨励賞)受賞。2011年より#denkimeterプロジェクトを提唱。2012年CEDECアワード ゲームデザイン部門優秀賞受賞。主な著書に『ゲーミフィケーション』(NHK出版 2012)、論文に『遊びとゲームをめぐる試論-たとえば、にらめっこはコンピュータ・ゲームになるだろうか』など。
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