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未来授業~明日の日本人たちへ 西畠清順さん~地球上に存在する植物が、人間に教えてくれること。そして、そこから人間が目指すべき方向性

2015年09月25日

 今回の講師は、明治元年から続いている花と植木の卸問屋「株式会社 花宇」の5代目である西畠清順さん。日本全国・世界数十カ国を旅し、数千種類におよぶ植物を収集・生産。それらの植物素材によって、生け花・フラワーデザイン・室内緑化・ランドスケープなど、国内外のプロジェクトに携わっていらっしゃいます。また2012年1月には、人の心に植物を植える活動である「そら植物園」をスタート。他にもさまざまな個人・企業・団体と植物を使ったプロジェクトを多数進行中です。

 植物の魅力、人と植物とのあるべき関係性などについてお聞きしました。

自然の木を植え、飾りたい

 恐竜時代の面影を残している太古の植物「ディクソニア・アンタルクティカ」がいま、日本の港に届いています。約4億年前に生命が海から陸に上がり、最初はコケのように張りついていたわけですが、それが初めて巨大化に成功したのがシダ植物です。つまり、まさに恐竜が葉を食べていたその木を、今回ようやく手に入れることができたのです。

 この仕事を始めた当時は、年間約2トンの植物を海外から輸入していたのですが、ここ3~4年で年間輸入量は約200トンになりました。おそらく民間企業では日本一の種類の植物を輸入する会社になっていると思います。私は卸業者ですので、まだあまり流通していない植物を欲しがるグリーンショップなどのプロに卸すことが仕事のひとつです。また、「そら植物園」名義で、いろいろな企業や行政機関の仕事もしています。百貨店に飾られたり、公園に植えられたり、イベントの装飾に使われたり、植物園に出したりと、依頼が爆発的に増えているのですが、それは「ありのままの自然の木を植えたい、飾りたい」という願望が増えてきたからだと思います。

 私は巨木に大きな魅力を感じるのですが、そこには2つの表向きの理由と、1つのリアルな理由があります。まず1つは、自分自身の問題です。私は小さいころから強くて大きなものに憧れる少年で、ガンダムやウルトラマンなどのヒーローものが大好きでした。だから巨木を見ると、「すごい!欲しいなあ」と思ってしまうのです。もう1つは、わかりやすさです。私は木や植物を運ぶことで、いろいろなメッセージを届けているつもりでいるのですが、その際、「大きくてわかりやすいほうが伝わりやすい」と考えているのです。興味のない人に振り向いてもらおうとしたら驚きが必要ですから、「極端なことをすること」が多くの人に振り向いてもらえる術だと、なんとなくわかってきたのです。それが、表向きの2つの理由です。

 残る、1つのリアルな理由は簡単です。みんなと同じような花や観葉植物、枝物を扱っていても、「どんぐりの背比べ」になってしまう。しかし経営者として考えたときに、誰もやっていないところのほうが、競争相手がいなくていいのです。植物の卸業者はたくさんありますけれども、そんななかでの差別化という意味でも「巨木」があるわけです。

自殺するヤシ、ライオンを殺す花

 私たちは四季のある国に生まれたので、春は花が咲いて芽吹き、夏は茂り、秋は実って色づき、冬は眠るという当たり前のサイクルのなかにいます。けれども砂漠の国にそういうことはありませんので、植物は「砂漠のなかでいかに生きていくか」ということをストイックに考えるわけです。たとえば、砂漠に咲く「ライオンゴロシ」という美しい花があります。その花は、普通の植物のように花を咲かせて実をつけます。実は固く、立体的な手裏剣のような形で、釣り針のようなフックがついているので、ライオンが踏んだら足に突き刺さってしまいます。人間なら刺さっても手で抜くことができますが、ライオンの場合は手では抜けないので口で抜こうとする。すると、今度はそれが口に刺さってしまう。トゲには返しがついていますから、そのまま抜けません。そうなると獲物が捕らえられなくなり、どんどん体力を失っていって、いずれは餓死することになります。そしてそこにライオンゴロシの殻からこぼれた種が落ち、ライオンの死肉が最高の肥料となって育っていく。そういうふうに、砂漠の植物には砂漠の植物なりの生き方があるわけです。

 また、ボルネオや東南アジアに「アリノスダマ」という植物があります。木の上に着生している丸いコブのような植物で、内部が迷路のようになっていて、一見すると多肉植物のように見えるものです。アリは「アリノスダマ」だとわかっていてそこに巣をつくり始めます。アリを嫌う虫や植物はたくさんありますから、「アリノスダマ」はアリを住ませることによってボディーガードのようにしているわけです。しかも、アリが運んでくれるいろんなものを栄養にして育つことができる。逆に、アリも地面に出れば敵がたくさんいるわけですが、木の上の高いところにいれば安心です。そのような、持ちつ持たれつの関係なのです。

 いろいろな虫や動植物が競い合って生きているジャングルにおいて、生物たちは「ここと組めば得だ」というふうに生きる知恵を育んでいます。植物は、子孫を残すことだけを考えて生きているわけです。たとえば「タヒナヤシ(自殺ヤシ)」という植物は、自分がもう死に際だと思ったら、全エネルギーをかけて大きな花を咲かせます。つまり、自殺することを決めて花を咲かせ、無数の子孫を飛ばして死んでいくのです。パイナップル科の植物、それからリュウゼツラン科の植物にも多く見られる現象です。生命の最後に自殺することを決め、なんとかして自分の種を少しでも広げようとしているわけです。一生懸命生きるということは、植物から学ばなければいけないことではないかと思います。ですから、私は一生懸命生きています。



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【西畠清順(にしはた・せいじゅん)】
1980年生まれ。幕末より150年続く花と植木の卸問屋、株式会社 花宇の5代目。
日本全国・世界数十カ国を旅し、収集している植物は数千種類。日々集める植物素材で、国内はもとより海外からの依頼も含め年間2000件もの案件に応えている。2012年、人の心に植物を植える活動「そら植物園」をスタートさせ、植物を用いたさまざまなプロジェクトを多数の企業・団体などと各地で展開、反響を呼んでいる。 著書に『教えてくれたのは、植物でした 人生を花やかにするヒント』(徳間書店)、『プラントハンター 命を懸けて花を追う』(徳間書店)、『そらみみ植物園』(東京書籍)がある。

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  • 大粒小粒さん

    人は植物からもっと学ばなければならないと漠然と考えていました。西畠さんの未来授業は植物が教えてくれる私たちの未来の姿をやさしく話してくれます。まず読み、それから考える素晴らしい授業でした。

    2015年09月28日 07:58



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