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ソムリエ 田崎真也流「おもてなし」の極意 第2回 -後編- もてなす&もてなされるマナー

ライフ・カルチャー 田崎 真也 2012年01月04日
新年会や接待などの幹事を任された際、まずポイントになるのが、「どんな場所でもてなすか」です。とは言え、場所選びは“準備”に過ぎません。肝心なのは“本番”です。


 「もしもセレクトした店が格式の高いところで、『男性はジャケット・ネクタイ着用』といったドレスコードがあるならば、それは事前に相手に伝えておくべきです。でないと、先方に恥をかかせることになりかねません」


 わかりにくい場所にある店なら、前もって地図を送るなどの心遣いも必要。どこかで待ち合わせて、いっしょに向かうというのも一案です。



 「絶対にやってはいけないのは遅刻。相手がお店に着いた時に幹事がいなければ、テーブルのどの席に着けばいいのか、飲み物を頼んでいいのかなど、戸惑ってしまいます。幹事は、開始時間より少し早め、10分位前には到着しておくべきでしょう」


 店に入ってからの振る舞いにも、達人ならではのアドバイスが。


 「テーブルに着いてから乾杯までの間。これが長いと、白けた雰囲気になってしまいがちです。着席したらすぐに乾杯用の飲み物が運ばれるように、『乾杯はビールで』などあらかじめ店側にリクエストしておくのがおすすめです。僕はせっかちなので、店に向かうタクシーの中から『あと10分でそちらに着きますので、乾杯用のワインを適温にして用意しておいてください』と、電話を入れることもあります」


 乾杯までがスムーズにいったからといって、気は抜けません。


 「日本の、特に男性は、お客様の接待を店に任せてしまいがち。女性がいるクラブやバーなどをイメージしていただくとわかりやすいと思いますが、自分もすっかりお客様になってしまうんですね。それでは、おもてなしにはなりません」


 相手のグラスが空いていないか、料理に満足しているか、会話を楽しめているか、時間を気にする素振りをしていないか。そうしたことを細かく気遣うのは、他ならぬ幹事の役目。

 「にもかかわらず、何か問題が起きると店のせいにして、接待の席にも関わらず、『なんていう店だ!』と、その場で怒り出す方もいらっしゃいます。それどころか『どうして、こんな店を選んだんだ!』と、部下を叱責したりして。店選びなどの段取りを、すべて部下に任せていたということでしょう。それは、お招きした相手に対して、とても失礼なこと。先方は、幹事側の代表者に招かれたと思っているはずです」


 店のスタッフのサービスが悪かった、ワインが適温でなかった、料理が運ばれるのが遅すぎる。そうしたマイナス要素は、幹事にとっては店の不手際だったとしても、招待された相手にとっては、その店をアレンジした幹事の、しかも、代表者の責任。だからこそ、事前にその店に足を運び、サービスのレベルや雰囲気をチェックし、どんな料理がおいしいのか試しておくべき。それは、「もてなす側の義務」とも言えそうです。


 「ディナーは値が張るので、ランチの利用がおすすめです。そこで、料理やグラスワイン、サービスに満足したら、夜のメニューを見せてもらえば良いと思います。グルメ評論本やサイトなどの評価を鵜呑みにして予約をし、食べ終わった後に『二つ星のわりにはイマイチでしたね』では、相手は興ざめですよ。


 また、高級店だと『好きなものを選んでください』と言われても、先方も恐縮し、何を頼んでいいか戸惑ってしまいます。『この料理はすごくおいしいんですよ。ぜひ召し上がっていただきたくて』など、ある程度、幹事側がメニューを選んでおくことも必要でしょうね。もちろん、アレルギーの有無を確認した上で、ですが」


 店選びだけでなく、おもてなし中の振る舞いにもポイントがあるのですね。 おもてなしの達人への道……、けっこう険しそうです。

 「いえいえ。日頃から練習しておけば、なんということもありません。たとえば家族で食事をする時、男性の場合、すべて奥様任せで、自分はもてなされる側になっている人が多いような気がします。家族であれ、親しい友人であれ、いっしょに食べたり、飲んだりする席は“おもてなし”の場。互いにもてなし、もてなされるのだという気持ちを持った方が、もっと楽しめると思いますよ」


 では、もてなされる側になった際に気をつけるべき点はというと、楽しい、嬉しいという気持ちをきちんと表現することだとか。


 「せっかく幹事が『喜んでもらおう』と心を込めてアレンジしてくれているのですから、それに応えるのがマナー。黙々と食べて、飲んでいるだけでは、相手はがっかりするでしょう。外国では、プレゼントを受け取った際に、その場で包みをビリビリと開けて、『うわぁ、素敵!』『前から欲しかったものだ』と、オーバーなくらい喜びますよね。それと同じです」


 ただし、楽しいからとハメをはずしたり、相手が想定している時間を大幅にオーバーして寛ぎ過ぎたりというのはNG。招待された側もマナーをわきまえなければ、お互いにとって“楽しい時間”にはなりません。


 「最後に食事のマナーについてのご注意を。グラスに注がれた飲み物は飲み干し、出された料理は残さず召し上がっていただきたいですね。多過ぎるなと思うなら、量を加減してくれるよう、レストランのスタッフに申し伝えてください。


 立食パーティーでも同様で、ほかの人の分までお皿に料理を盛ったり、飲み物を運んできたりして、結局、手つかずのものが大量に残ってしまうというのはマナー違反ですよ」


 マナーを守り、お互いを思いやる気持ちをもって、もてなし、そして、もてなされる。そうすれば、ビジネスでも、恋人同士でも、家族でも、良い関係が持続できるはず。もてなし上手=おつきあい上手ということかもしれません。


 田崎氏のアドバイスを参考に、大切な人たちと楽しい時間を過ごしてください。


(2012年1月4日公開)

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  • さん

    良かったデス。

    2014年11月28日 18:29

  • Amyさん

    なぜ日本人の男性と一緒にいると残念な気持ちになるのかわかりました。ありがとうございます。

    2013年10月24日 16:05

コラムニスト・プロフィール

田崎 真也たさき しんや

数々のソムリエコンクールに優勝し、「ワインは、憶えてから楽しむものではなく、楽しんでから憶えるもの」をコンセプトに田崎真也ワインサロンを主催。また、ソムリエ育成のために若手ソムリエコンクー ...

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