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THE innovators 第13回 特別な日を彩る世界にたった1つのケーキをデザインするアーティスト

ライフ・カルチャー WISDOM編集部 2014年08月29日

鈴木 ありささん ケーキデザイナー&シュガーアーティスト

 ニューヨークで最先端のケーキデコレーションを学んだケーキデザイナーの鈴木ありさ。結婚式や誕生日など特別な日にスペシャリティケーキを楽しむ文化を日本に広めたいと話す彼女の夢の軌跡を追った。 (文/井上 隆文 写真/信澤 邦彦)

特別な日の思い出と一緒に、いつまでも記憶に残るケーキをつくりたい

 白と黒で統一されたモダンなキッチンスタジオ。小さなプレートに記された「Alisa Suzuki Cakes」の文字。国際コンペティションで最優秀賞を獲得し、ニューヨークタイムズやガーディアンでも取り上げられた新進気鋭のケーキデザイナー鈴木ありさは、5年ぶりに日本へ戻り、この小さなスタジオで新たな一歩を踏み出した。

 ちぎり絵、鎌倉彫、書道、着付け着物などを嗜む芸術的気質を持つ祖父母の影響を受け、幼少期から絵や書をはじめアートに親しんだ。当時の楽しみは、特別な日に母親がつくってくれる手づくりのケーキ。バービー人形にはまっていたときはバービーをテーマに、8歳の誕生日には数字の8をデザインしたケーキをつくってくれた。おいしくて、見た目もきれいなケーキが大好きだった。14歳のとき、母親がコレクションしていたアメリカのケーキの教本を見つけ、自分も辞書を片手にケーキづくりをはじめる。ハロウィン、クリスマス、バレンタイン、誕生日など、イベントの度にカラフルでユニークなオリジナルケーキをつくり、友だちと楽しい時間を過ごした。

 ケーキづくりは好きだったがパティシエになりたいわけではなかった。将来は、小さな頃から憧れていたアーティストになりたいと思い、玉川大学芸術学部ビジュアル・アーツ学科へ進学。ウェブアートやファッション、空間造形などさまざまな分野を学んだが、どれもしっくりこなくて進む道を決めかねていた。1年生の春休み、もやもやした思いを抱えたまま、ボストンに留学していた幼なじみを訪ねる。そこで、ケーキデザイナーという職業の存在を知った。ケーブルテレビのフードネットワークでは、毎日何本もケーキデザイナーが登場する番組を放映していた。「日本にはないケーキデコレーションの世界が、独立したアートとして高いレベルで普及し、しかも職業として成り立っていることに驚きました。日本にはまだ存在しない職業だけど、きっと、美しいものやかわいいものに対して感性が豊かな日本人には受け入れられるはず」。鈴木の頭の中を覆っていた靄が晴れ、視界が開けた瞬間だった。

ケーキデザイナーを目指し、単身ニューヨークへ

 帰国後、ケーキデザイナーへの思いは日に日に大きく膨らんでいったが、日本にはプロとしてのケーキデコレーションを学ぶ場所はなかった。ケーキデザイナーに欠かせない菓子づくりの基礎だけなら日本でも身につけられるが、デザインや、クライアントの要望を聞き取る力、プレゼンテーション力、ホスピタリティなどを同時に学ぶことはできない。焦りが募った。一刻も早くケーキデザイナーへの道を進みたいと思い、両親ともとことん話し合いながら、最良の進路を模索した。そしてついに大学退学を決断する。

 準備期間を経た2010年、ニューヨーク州ハイドパークにある「料理界のハーバード大学」の異名を取るザ・カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ(通称CIA)への入学を許可された。座学が続いた最初の6週間は英語に苦労したが、実技がはじまると徐々に実力を発揮、クラスメイトや先生からの信頼を得ることができた。鈴木のチャレンジは順調に滑り出した。次なる岐路は、1年生から2年生へ進級するタイミングで訪れた。CIAでは、この時期に5カ月間のインターンシップを学生に課す。多くの学生は、大手ベーカリーなどでインターン経験を積むが、ごく稀にトップレベルのケーキデザイナーのもとで学ぶチャンスを得る学生がいるとの噂を聞いた鈴木は、じっとしていられなかった。「せっかくニューヨークまで来たのだから、トップデザイナーのもとで学ばなくちゃ意味がない」、そう考えて先生や知り合いに相談し、狭き門をこじ開けるために奔走した。すると、一人の先生が業界の第一人者であるベティ・ヴァン・ノストランド氏を紹介してくれ、彼女の口利きもあり幸運にも全米最高峰との呼び声が高いロン・ベン・イズラエル氏のもとで学ぶ機会を手に入れることができた。CIAには約2,000人の学生がいるが、このときロン氏のもとでのインターンを許されたのは鈴木ただ一人だった。


全米最高峰のケーキデザイナー・ロン氏のもとで学んだインターン時代。左端が鈴木。

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鈴木 ありささん
ケーキデザイナー&シュガーアーティスト
「料理界のハーバード大学」と呼ばれるザ・カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ(通称CIA)で本場のケーキデコレーションを学ぶ。在学中に参加した国際コンペティションで最優秀賞を受賞。2014年に帰国し「Alisa Suzuki Cakes」を設立。

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  • かつぴんさん

    ケーキ職人ではなく、ケーキデザイナーになるという鈴木さんの意気込みをとても感じました。
    「世界にひとつだけのケーキ」機会があれば注文したいと思いました。

    2014年09月01日 16:35



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