1. ホーム
  2. ライフ・カルチャー
  3. インタビュー
  4. THE innovators
  5. 第20回

THE innovators 第20回 子どもたちに「きっかけ、気づき、希望」の3本の鍵を届けるためにボランティアで学習支援

ライフ・カルチャー WISDOM編集部 2016年05月27日
森山 誉恵(たかえ)さん 特定非営利活動法人3keys 代表理事

 児童養護施設や里親など「社会的養護」のもとで暮らす子どもたちは現在4万7000人を超える。また、ひとり親家庭の半数以上は貧困に陥っており、生活や学習環境に恵まれない子どもたちが増えている。3keysでは子どもたちが安心して生活できる社会を目指し、児童養護施設などにボランティアを派遣する学習支援などを通じ、行政の手が届かない部分でのセーフティネットの役割を果たしている。

(文/吉村 克己 写真/柚木 裕司)

 

児童の虐待相談数は1990年から70倍に。子どもの相対的貧困率も先進国の中で低水準

 児童虐待が後を絶たない。児童相談所が対応した虐待相談件数は年間7万件を超え、1990年から2013年までの間に70倍近くにも達した。いまもその件数は増え続けている。
 厚生労働省「児童養護施設入所児童等調査結果」(2013年2月1日現在)によれば、虐待や育児放棄、貧困などによって児童養護施設や里親などの社会的養護を受けている子どもたちは4万7776人もいる。
 経済協力開発機構(OECD)によれば、日本の子どもの相対的貧困率(所得が国民の平均値の半分を下回る人の割合)は15.7%(2015年度)と、OECD加盟34か国の中で下から11番目の低水準で、平均の13.7%を上回っている。内閣府の「平成26年版 子ども・若者白書」では、大人1人で子どもを養育している世帯の貧困率が50.8%と突出して高いことを指摘しており、その「ひとり親家庭」の85%が母子世帯だ(2011年度、厚生労働省調べ)。
 子どもたちを巡る家庭環境や学習環境が悪化すれば、教育や学力の格差につながり、それが子どもの将来的な収入や社会的地位にも大きく影響する。若年世代の不安定さは社会にとっても大きな課題となる。
 特定非営利活動法人3keysは、家庭の状況にかかわらず、全ての子どもたちが社会から孤立することなく安心・安全に暮らしていける社会実現のためのセーフティネットの役割を果たすべく、その1つの事業として児童養護施設などに入所している子どもたちの学習支援を行っている。3keys代表理事の森山誉恵は、子どもたちを巡る状況についてこう語る。
 「近年、近所づきあいなどもなくなり、子育てをする親の負担や孤立感が強まってきました。特に母子家庭などひとり親の場合は金銭的・時間的な負担が重く、女性がひとりで子どもを育てる状況になると、その2分の1以上が貧困状態になります。いまや3組に1組が離婚すると言われており、決して他人事ではないのです」

児童福祉施設の子どもの学習を派遣チューターが1対1で支援

 3keysでは、現在、3つの支援事業を展開している。
 まず、1つ目が「学習支援事業」である。この事業には主に中高生を対象とした「家庭教師型プログラム」と、主に小学生を対象とした「教室型プログラム」がある。
 家庭教師型プログラムは、児童養護施設、母子生活支援施設、自立援助ホームなど児童福祉施設で暮らす子どもたちの元にチューターという学習ボランティアを派遣し、1対1で学習支援を行う。活動地域は主に東京、神奈川だ。基本的な指導時間はチューター1人当たり週1回1~2時間。2009年から実施している創設以来の事業である。


中高生への学習支援は、1対1の家庭教師型プログラムだ。1人のチューターで1教科を教えるが、多くは塾講師や家庭教師の経験を持つ(写真提供:特定非営利法人3keys)

 「1時間のうち、最初の20分間は近況報告や相談などに使い、残り40分間で勉強することが多いです。実は話す時間を楽しみにしている子たちもいるのです。児童養護施設では職員さんが忙しく、小さな子を中心に面倒をみますので、高校生を相手に話し合う時間がとれないことも多いのです」と森山。
 子どもたちのチューターに対する満足度も69%が「大変満足」、15%が「満足」と回答。施設も100%が3keysの支援を「現場のニーズに合っている」と評価している。
 教室型プログラムは、児童福祉施設や学校、その他の機関と連携し、小学生の基礎学力定着のために補習教室の運営や教材支援を行う。必要があればチューターの派遣も実施している。現在、3教室の運営支援を行っている。
 「高学年でも低学年の基礎を身につけていない子たちが多いので、宿題をやるにも時間がかかり、だんだん勉強が嫌いになってしまいます。そのため、教室では基礎力向上と宿題の支援を行っています。毎週何曜日の何時からと決めて開くので、小学生だと習慣化できるのがメリットです」
 子どもたちの学力も着実に向上し、ある教室では開始時に小学1~2年生の学力しかなかった小学3年生の子どもたちが、2年後には多くが小学4~5年生の学力を身につけるようになった。


「行政だけに頼ることなく、子どもに責任を持つ大人をもっと増やしていきたい」と森山



  1. 1
  2. 2

森山 誉恵(たかえ)さん
特定非営利活動法人3keys 代表理事
1987年生まれ。韓国人の母と日本人の父を持ち、日本で生まれた後、3歳から14歳まで母の祖国である韓国で生活。英語、中国語も学ぶ。帰国後、日本の高校で学び、アメリカの高校へ1年間留学。慶應義塾大学に入学後、日中韓の学生のための国際ビジネスコンテストを開催するOVALの運営に携わる。その後、児童養護施設の子どもたちの学習支援ボランティアを経験し、在学中の2009年に任意団体として3keysを設立。卒業後、2011年にNPO法人として登記、代表理事に就任。

この記事の評価
現在の総合評価(0人の評価)
0.0
あなたの評価
決定
  • すべての機能をご利用いただくには、WISDOM会員登録が必要です。
この記事に対するコメント
  • すべての機能をご利用いただくには、WISDOM会員登録が必要です。

同意して送信する



バックナンバー一覧を見る


Copyright ©NEC Corporation 1994-2017. All rights reserved.