− 第2回 −
共生の達人:トヨタ白川郷自然學校 校長 稲本 正氏
『森に教えられ、新たな発見!』自然と共生する未来を体験してみませんか?
身近な「気づき」を大切にして欲しい
Q:自然学校での体験プログラムの意義やねらいについてお話ください。
「体験を通じて何かに気づいて欲しい」と稲本校長
稲本: 昨今、多くの人々が環境について興味を持ち始めています。その中でいくつかのアプローチがあります。
一つ目は、例えば、ハイブリッドカーの開発におけるCO2の排出量を減少させるなどに代表される技術的な取り組みです。
二つ目は、法律や行政など仕組みによって環境問題をサポートする取り組みです。
そして、三つ目が一番重要なのですが、人が自主的に意識を変えることです。例えば、ゴミの分別やECOデザイン、レジ袋の廃止などもそうです。
つまり、人の意識が“気づき”によって変わって欲しいのです。英国の諺にもありますが、「人から聞いたことは、忘れ易い」、「見たことは時々思い出す」、しかし「自分で発見して気づいたことは、忘れない」のです。ですから、ここでの体験を通じて、何かを感じてもらうことが、体験プログラムの最大のねらいです。そのために参加者に楽しく体験してもらって、自分で答えを発見してもらいたいと思っています。
Q:私たちも環境に良いことに簡単に取り組むことができますか?
稲本: まずは、身近なことからはじめてください。1本でもいいので樹を育ててください。そしてレジ袋をもらわないことです。これだけで、森の回復を手助けし、CO2の削減にも大いに貢献できるのです。
進化のポイントは“競争”ではなく、“共生”
Q:今後の自然学校の展望について教えてください。
稲本: 将来的には、本校を中心に自給自足でエネルギー循環型のコミュニケティを形成したいと思っています。白川村の伝統、そして日本を代表する環境技術をベースにし、それらを融合するような試みに挑戦したいと思っています。
もともと、樹木は太陽熱をうまく利用しています。そのため、樹の研究は非常に有効な手段だと思っています。樹をうまく活用し、利用する一方で樹を植えていく。こうした活動をもう30年も続けています。我々がこうした環境問題を意識したのは、1970年代からです。昨今の環境ブームやITの活用、国際交流も非常に遅すぎると思います。日本人も、よりグローバルな感覚を身に付けるべきだと思います。
一方で、日本は非常に大きな可能性を持っています。例えば海岸線が長く、環境が保全し易く、森林が国土の約67%と文明国にしてはまだまだ良い環境を保持しているのです。歴史的な背景からしても、日本人は非常に自然を尊び、自然と共に生きているという精神が根付いています。日本には環境先進国として世界をリードできる素養があるはずです。
古くから日本に根付いている自然との共生は、生きるうえでの重要なヒントになっているのです。未来の進化のためには、“競争”ではなくて“共生”が必要なのです。自然でもテクノロジーでもお互いに得られるものがあるもの同士の融合で、さらなる進化が生まれます。
そして、ITの活用によって世界と交流することが夢です。例えばホームページによって、我々の活動を知った人々との情報交換や協業も実際にあります。また、Webカメラを使った世界中の森や自然の定点観測なども面白いと思います。ネットワークをうまく活用することで、言語や地域、時差などを越えて、より親密なコミュニケーションを実現できるのではないかと期待を持っています。
自然学校の目的は、こうした自然との共生の実験フィールドであると同時に、より多くの一般の人にメッセージを伝えていくことにあると考えています。環境について、地球そのものが危機的な状況にあるということを誰もが最重要課題として考えていかなければなりません。これもITなどの新しい技術や方法と“共生”することで、より効果的でグローバルな情報発信を目指すことができると信じています。
とかく、環境などへの取り組みは個人レベルでは敷居の高い問題だと捉えがちだが、トヨタ白川郷自然学校は、自然との共生への気づきを考えるひとつのきっかけを与えてくれた。昨今、自然に触れる機会も少なくなった都会の人々にこそ、こうしたプログラムの体験をお薦めしたい。
(2005年7月11日公開)











