− 第2回 −
共生の達人:トヨタ白川郷自然學校 校長 稲本 正氏
『森に教えられ、新たな発見!』自然と共生する未来を体験してみませんか?
自然とテクノロジーは、相反するものではなく“共生”するもの
森から持ち帰ったものを、マイクロスコープで拡大
森の探索から戻ると、各自森から拾ってきた自然素材を高精度のマイクロスコープで拡大し、新たな発見に余念がない。
自然体験だけでなく、先進のテクノロジーもうまく取り入れることも、自然学校の共生プログラムの特徴だ。プログラムを通じて得られた自然のありのままの姿を、より印象深いものにし、思い出として持ち帰るために最先端のデジタル機器を活用している。
25倍〜800倍の世界では、ただの葉っぱやコケが、みたこともないような芸術作品のようにみえたりする。このプログラムでは、ミクロの世界に触れ自然の造形美を自ら発見することで、新たな興味を持ってもらうことをねらいとしている。また、そのミクロな世界をプリントして持ち帰ることもでき、木製の額に入れて飾ると、世界にひとつしかないアートが出来上がる。
一般的に、自然を尊重することと先進のテクノロジーは、相反するものの両極だと考えがちだ。しかし、自然学校では、自然を素材にしながら先進のテクノロジーを“ハイブリッド”させることこそ、これからの私たちの生活に必要な考え方だとしている。稲本氏は、トヨタのハイブリッドカー“プリウス”を例に、環境にも人間にも優しいテクノロジーの利用こそ、自然との共生の知恵だと言う。
例えば自然学校では、「プライベートサンクチュアリ 〜心のなかの鳥獣保護区〜」といったプログラムを実施している。このプログラムでは、野生動物と出会うための‘しかけ’の一つとして、ヤマネやヒメネズミといった樹上性の小型哺乳動物の巣箱を製作し、2年間森に設置する。その際、Webカメラも設置することで、定期的なモニタリング調査が可能となる。野生動物による利用が確認された巣箱のオーナーには、スタッフから様子が報告される。Webカメラによる定点観測は、ブロードバンドネットワークのインフラなどITの活用によって実現している。このような利用方法は、多くの企業が防犯や監視目的に導入を進めているが、自然学校でも利用目的こそ異なるが、いち早くプログラムに導入している。
360°フォトシアターも最先端ITの活用による映像ショーだ。足下から真上まで、そして右から左まですべてを継ぎ目なく収録した特殊な映像によって、まるでその場にいるかのような臨場感で、自然學校のとっておきのフィールドを屋内で体験することができる。
また、「ロボットで森の動物を作るプログラム」を実施している。小さなロボットに、簡単なプログラムを組み込むことで野生動物の習性を学習させ、本物の動物への興味を喚起するものだ。
その他にも冬期暖房用のペレットストーブの燃料となるペレットの自給から始める「エネルギー自給プロジェクト」など多彩なプロジェクトが実施されている。こうしたプロジェクトを考え、案内してくれるインタープリターは、体験から学ぶための動機付けを行い、それを理解してもらうための手段として道具やテクノロジーを活用している。
自然学校のセミナーハウスは、自然エネルギー100%活用を目標にしており、随所に最新の環境技術を取り入れ、“自然と先端技術の共生”にチャレンジしている。
風力発電や太陽光発電に加え、冬期には建物の地下に雪を貯めておき、夏期の室内冷房に使う「雪室(ゆきむろ)冷房」や、ペレット(木質バイオマス)を燃料に使う「ペレットストーブ」、また間伐材を使って燃料となるペレットを作るための製造機なども設置しており、体験プログラムにも活用している。
太陽や風によって発電した電気は、「グリーン電力」として特別な緑色のコンセントから配電する。
こうしたひとつひとつの取り組みが、自然とテクノロジーをうまく融合した環境教育として息づいている。











