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技を伝える

− 第8回 −

桐箪笥 日本の精神性を象徴する (2007年7月23日掲載)

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桐箪笥は完全なオーダーメイド家具だ。サイズや扉、引出しの形・大きさ、金具などどんな要求にも職人が応えてくれる。
収納する物も着物だけでなく、和本、豪華本、和楽器、バッグなど千差万別。
桐を愛するからこそ、相徳は基本的に桐に関する製品以外は扱わず、顧客と直接やり取りしながら箪笥を作っている。
それが相徳のポリシーだ。

四代目の井上雅史さんは当初、一般企業への就職を
考え、 大手電機メーカーの入社試験にも受かったが、
結局は就職せず桐箪笥の世界に入った。「何年経っても
自分の作った物が分かることが箪笥屋のいいところだ」と語る。

仕上げの工程では、「塗り」に入る前に刈萱(かるかや)を
束ねた宇造り(うづくり)で表面を丹念にこすり、目を浮き立
たせていく。宇造りの先端が平らになるように減らしていく
のは 熟練の技だ。。

仕上げの工程で使う道具の数々。一つひとつに使っている
職人の魂がこもる。

 何世代も長持ちし、表面が汚れても削り直しすれば新品同様に蘇る。火事で外面が焼けても水をかぶっても、引出しの中に煙一つ入れず完璧に守り通し、自身もきれいに修復できる。桐箪笥は正に奇跡のような家具である。

 創業明治一三年、一二五年間、桐箪笥一筋に伝統を守り続けてきた「相徳」には、いまだに江戸末期や明治初期に作られた桐箪笥の削り直し依頼が来るという。

 相徳四代目の井上雅史さん(五一歳)はこう語る。

 「親や祖父世代の仕事の結果がいま戻ってきます。そのとき、先人の職人たちの思いが伝わってくると共に、お客様がどのように箪笥を使ってくれたのかが分かります。この商売にはそんな時間の重みがあるんです」

 桐箪笥の歴史は江戸初期から始まった。火事の多かった江戸にあってすぐ運び出せるように箪笥の底に車をつけた「車箪笥」が生まれ、人々の生活が豊かになるにつれて現在の形になった。

 だが、もっと昔から桐は大切な物をしまう桐箱として珍重されてきた。なぜなら桐は吸水率、透水性、熱伝導率が低く、あまり伸縮しない上に材質が均一で精密な加工に向いているからである。

 桐の細胞を見ると、節で区切られた小部屋状の組織になっており、これが水分の浸透を防ぐ。そのため、火や水をかぶっても箪笥の内部まで熱や水を通さない。

 現在の“桐箪笥”と呼ばれている物の多くは外国産の桐板を使っているが、相徳は頑なに材質のいい会津桐だけを使っている。

 会津桐は天然ではなく、専門業者が植林し丹念に育てている。だから、いまも安定的に供給されており、三〇年間大事に手をかけた桐は年輪が均一で木目が美しい。

 「そんなすごい木を使わせてもらっているのだから、箪笥もちゃんと作らなければなりません。みなさんにもそれだけ手間と時間がかかっていることを分かってほしい」と四代目は訴える。

 桐箪笥は日本の精神性と文化を象徴している。


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