− 第13回 −
シンクライアント
情報漏洩リスクを減らす近道は、情報資産をPC側に残さないこと。
シンクライアントにより、
セキュリティ強化、TCO 削減、モビリティ向上を実現する
イル交換ソフト「Winny」経由のデータ流出など、電子情報の漏洩事故や盗難事件が跡を絶ちません。これを防止するための一番有効な手だては、社員が持つPCに大事な情報を保存しないことです。
通常、社内の情報ネットワークは、業務用のシステムや共有情報が入ったサーバと個々の社員が持つネットワーク端末をLANで結んでいます。その際のネットワーク端末は“クライアント”と呼ばれ、一般的には、CPUやメモリ、HDDを装備し、基本ソフト(OS)やワープロ、表計算など各種アプリケーションソフトをインストールした汎用PC(単体で使える普通のPC)が使われています。
従って、業務上利用されている各種のデータは、PCに内蔵されたHDDに保存され、そこからUSBメモリやCD、DVDなどの記録媒体にコピーすることが可能な状態になっています。これが、一方で、PCあるいは記憶媒体の紛失や盗難によって重要な情報が流出する危険性をもたらしているのです。
これを防ぐためには、個々のPCに情報が保存されないようにしたり、記録媒体にデータをコピーできないようにして持ち歩きができないようにする必要があります。そのための仕組みとして、注目されているのが、シンクライアントなのです。
ン」とは、英語の「Thin(薄い、やせている)」のこと。シンクライアントとは、狭義には、HDDやCD-ROMなど記録装置を内蔵せず、データの表示や入力などの機能に絞った=「痩せた」PCのことを言います。
ただ、最近は、こうしたシンクライアントPCを用いて、アプリケーションソフトやファイルをサーバ側で一括管理する関連システムを含めてシンクライアントと呼ぶことが多くなってきました。
シンクライアント化すれば、通常のPCの利用と同様の業務環境が保持される一方、個々のPCにはファイルなどデータが保存されないため、たとえPCの盗難や紛失という事態にあっても、物理的被害だけですみます。
その実現には、三つの方式があります。
一つは、「画面転送方式」。シンクライアントPCの入力情報をサーバが受け、サーバ側でOSやアプリケーションを実行させ、その画面データをシンクライアントPC画面に転送させる方式です。個々のPCは入出力のみだけを担います。

二つ目が、「ネットブート方式」。いわば、通常のPCのHDD機能だけをサーバに委ねる方式で、HDDを内蔵しないシンクライアントPCを起動させるとき、サーバからWindows XPなどのOSや利用するアプリケーションソフトをダウンロードします。処理は各PCのCPUやメモリを使って実施。結果の作業データはサーバに書き込まれ、PCをシャットダウンするときにはPC上の全情報は自動的に消去されます。

三つ目が、「仮想PC方式」。サーバ上に“自分だけの仮想マシン”を持ち、仮想マシン上でOSやアプリケーションを動作させて、その画面が自分のシンクライアントPC画面に送信される方式です。画面転送方式と基本的には同じ仕組みですが、サーバのリソースが利用者個々に割り振られ、結果として、あたかも「自分のPCを使っているような」環境が得られる点に大きな特徴があります。

ンクライアントを導入する場合には、上記3方式の中から、自社のニーズや環境に合わせて選択していきます。
例えば、画面転送方式は、モバイルにも対応でき、過去のシンクライアント導入では一番多く採用されてきました。ただし、基本的には、サーバにある業務システムを皆が使うという状況を想定しているため、定型業務に向いています。
ネットブート方式は、他の二方式ではサーバ側がすべての作業を処理するのに対し、個々のPCのCPUやメモリ等のリソースを使って各作業を処理するやり方をとっています。そのため、PCのパワーを最大限利用でき、設計関連や出版関連など専用かつ高度なアプリケーションが使用される業務に適しています。
新しいシンクライアントとして注目されているのが、仮想PC方式です。同方式をとれば、既存のアプリケーションのほぼすべてを動かせ、定型業務という枠にとらわれず、社員それぞれが必要とするアプリケーションを稼働させていく環境が構築できます。モバイル利用などにも適していることも大きなメリットです。仮想PC方式では、データセンターに統合したクライアントリソースを動的に再配分することで全体最適化された効率的な運用が可能になり、まさに次世代の企業プラットフォーム像を具現化した方式と言えます。
従来の情報ネットワークの問題点は、社員個々のPCに重要情報を扱わせているのに、管理下に置いていないことでした。しかし、個人による情報管理には、不注意やうっかりミスがつきものです。ことに05年春からの個人情報保護法全面施行により、企業の情報漏洩には厳しい目が向けられています。情報管理を情報システム部門に集中させ、取り扱いを一元化していく。
こうした情報セキュリティ対策は、サーバで情報を統合管理し、漏れてはいけない情報をクライアント側に残さないという考え方のシンクライアントの導入から始まると言っていいでしょう。

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