− 第8回 −
夏の風物詩きゅうりを愉しむ (2007年7月2日掲載)
きゅうりは何色? と訊けば、おそらく皆が緑色というだろう。しかし緑色のきゅうりは未熟な姿。熟すと黄色くなるのだ。黄色い瓜、それが「きうり」となり「きゅうり」となったという説まである。ともあれ、我々が愉しむのは若々しい緑色の段階のきゅうりだ。
ヒマラヤ原産のきゅうりは、日本へは中国から10世紀くらいに渡来した。中国のきゅうりには華北系と華南系があり、華北系は白いいぼのキュウリで日本の北部から入ってきた。華南系は黒いいぼで、沿海を渡り南から入ってきた。どちらも栽培されたが、日本では白いいぼが好まれ、あまり黒いいぼを見かけなくなってきている。黒いいぼのきゅうりが店頭にあったら、すぐさま買い求めてみよう。
ちなみに、今日のきゅうりにはカボチャの血が入っていることをご存じだろうか。と言っても新しい品種のお話ではない。きゅうりは元々、病気に弱い作物だ。これを改良するための試行錯誤の中、発見されたのが接ぎ木技術。同じ瓜科のカボチャの台木にきゅうりの若芽を接ぐと、生育力が強いカボチャのパワーで病気にかからずぐんぐんと育つ。今日、店頭で売られているきゅうりのほとんどが接ぎ木栽培のきゅうりなのだ。
しかし、昔を識る人で、この接ぎ木したきゅうりは美味しくないという人が非常に多い。それはそのはずで、カボチャの影響で果皮が硬くなってしまうのだ。「へー、そうかね?」と言う貴方は接ぎ木以外のきゅうりを食べていない可能性が高い。
対して、接ぎ木をしないで育てることを自根栽培という。自らの根で育つのだ。新潟の長岡市で、自根きゅうりを栽培する農家さんのお宅で昼を呼ばれたとき、自根きゅうりの浅漬けを囓ってみて一瞬、僕の動きが停止した。「ポルルリィッ!」という、何とも快楽を呼ぶ歯触り! きゅうりの皮と内部の硬さに差があまりないので、軽やかに歯が通っていく。迸る冷たい汁から香る瓜の香りは、ほのかなもので後に残らずサッと引いていく。ああ、これぞ美味しいきゅうりだ…
自根きゅうりは商売で栽培するのはあまりに危険なのでほぼ店頭には並ばない。万が一直売所などで見かけたなら、迷わず全部買い占め、漬物にすることをお奨めする次第だ。











