− 第十ニ話 −
ユビキタスと循環型社会
社会インフラのソフトウェア化
ユビキタスコンピューティングの一つの目標は、身の回りのあらゆるところにコンピュータを埋め込んで、社会基盤全体を柔軟に制御できるようにすることです。言いかえれば、ネットワークで相互接続された遍在するコンピュータによって、社会基盤全体を言わばソフトウェア化しようということなのです。例えば、トロン電脳住宅(写真1参照)では、普段ライトは消灯しておき、人が通るときのみライトを点灯する。また、部屋が暑い時には冷房をつけるのではなく、外気が十分涼しければ窓を開けるのです。こうした「こまめな最適化」制御により、環境にやさしい省資源を実現することができます。

写真1:トロン電脳住宅
また、ユビキタスIDセンターでは、道路や都市空間の様々なところに電子タグを取り付け、それを利用して場所に情報をくくりつけます。この、場所にくくりつけられた情報は、人や環境のコンテキストに応じて、多様な形態に変換して提供します。これは、広い意味でのEnableware(イネーブルウェア、「第十一話 ユビキタスとユニバーサル」参照)、つまり本来はハードな社会基盤と、多様な人間との間のミスマッチを減らそうと試みているのです。これはつまり、人間の方が社会基盤にあわせるのではなく、社会基盤の方が人間にあわせることで、多様な人間の活動を大いに支援しようということなのです(図1参照)。

図1:利用者の母国語を自動認識して、表示する言葉の言語を自動的に切り替える。
食品のトレーサビリティも、いわば食品の品質や安全を管理する手法の「こまめな最適化」だと言えます。現在は、トレース情報の管理が十分でなく、危険な食品の回収が遅れたり、逆に危険な食品よりも多くの、本当は安全な食品を破棄せざるをえない風評被害がもたらされるケースもあると聞きます。例えば、輸入野菜の一部に残留農薬が検出されると、安全な輸入野菜までも売れなくなり、必要をはるかに超えた量の野菜を破棄する無駄が生じます。今や力づくの大量循環の時代ではなく、安全や品質確保の手法においても、危険なものだけを最小限だけ破棄する最適化が求められているのではないでしょうか。










