− 第ニ話 −
組込み技術の先にあるユビキタス
ユビキタスという「ジャンル」
前回はユビキタスIDセンターについて紹介させていただきました。私達は、ユビキタスIDセンターや、より広く言うとTRONプロジェクトの活動の中で、いわば「ユビキタス」というIT分野の「ジャンル」をゼロからつくりあげようとしています。日本のITは確かにすばらしい技術力を誇っています。産業的に成功している分野も少なからずあります。しかし、日本は誰かが作った「ジャンル」の中で活躍することはできても、自身で「ジャンル」を作ることが苦手だとも言われます。今回は、ユビキタスIDセンターが、どういう考え方でユビキタスという「ジャンル」を確立しようと考えているかをお話したいと思います。
組込みとユビキタス
ユビキタスIDセンターにおけるユビキタスへの取り組み方の特徴は、「ユビキタス技術を、組込み技術の発展形として捉えていること」です。別の言い方をすれば、「ユビキタスは、組込み技術の将来の最も重要なアプリケーションである」ということです。RFIDやスマートカードのような電子タグ(写真1参照)は、確かにユビキタスを特徴つける重要な技術です。しかし、電子タグだけでユビキタスが実現できるわけではありません。やはり、電子タグと通信するコンピュータノードも必要ですし、一方でユビキタス環境と利用者である人間との間のインタフェースとなる端末も重要です。私達は、ユビキタス環境で使われるこれらのノードや端末の主流は、パソコンではないと思っています。それらはむしろ、携帯電話やデジタルカメラといった、コンピュータ組込み型の"Gadget"(ガジェット)であると考えています。ユビキタスを特徴つける技術が、こうした身の回りを構成する小さいコンピュータだとするならば、それらは、電子タグと同じ位、もしくはそれ以上に、組込みコンピュータ技術(写真2参照)が重要です。そこで私達は、電子タグなどを活用したユビキタスID技術と、組込みコンピュータのプラットフォームであるT-Engine、一つのプロジェクトの両輪として研究開発を進めています。つまりこれが、前回お話した、T-EngineフォーラムとユビキタスIDセンターが一体化して活動している理由なのです。

写真1 様々な種類の電子タグ

写真2 組込みコンピュータから電子タグまで(左から、T-ENGINE、μT-ENGINE:マイクロ、NT-ENGINE:ナノ、PT-ENGINE:ピコ)









