− 第7回 −
いつでもどこでも情報が「見える」時代へ
〜ディスプレイの進化がもたらすもの〜
ユビキタス時代のディスプレイ活用に向けて
NECブロードバンドソリューションセンター内の
ショールーム(Ubiq'window)
(写真提供:ロイヨ・ミサキ・キューブLLC日本営業所)
今まで述べてきたディスプレイ技術の進化に伴い、生活の中、ビジネスの中でディスプレイを目にする機会が非常に多くなってきた。
街角の大型ディスプレイに代表される屋外、交通広告での利用。RFIDとの連携も進みつつある店頭でのディスプレイ表示。案内板や飲食店のメニュなどでの使用が一般化してきたタッチパネル。博物館やショールームでのマルチメディア型展示に使用され始めた透過型ディスプレイ。そして、もちろん、オフィス内や家庭内での各種ディスプレイ利用の拡大などなど。
注意しておかなければならないのは、上記の各ディスプレイは、単体として存在しているのではなく、必ず何らかのシステムやネットワークの「出力装置」として活用されている、ということだ。個別のディスプレイがどれだけ優秀であっても、そもそものシステム目的に則った機能、コストが保証されていなければ、全体としては、バランスの取れていない、不適切なプランニングであったということになってしまう。
言い換えれば、ディスプレイ技術の利用にあたっては、何より、全体ソリューションに合わせた適切な技術選択と実装が必要ということである。
ソリューションに合わせたディスプレイ選択に当たっては、動画用であれば色の鮮やかさや輝度の確保、文字・静止画用であれば高精細性、モバイルであれば省電力性を重視といったディスプレイ自体の特性に基づいた選択に加え、ネットワーク設計面での課題も合わせて考えておく必要がある。例えば、店頭で「動画」ポスターとして使用したい、という場合なら、ポスターとして利用できるに足る輝度や精細度の確保に加え、十分な速度での動画配信が可能なネットワークの構築が問題となってくる。
有線での構築が可能であれば高速のイーサネットで対応してしまえばいい。しかし、店内のロケーションとして配線が困難なスペースに置かれる、あるいは店頭イベントで使用するため移動が前提ということになると、無線LANで充分な速度を確保するための技術、デバイスの採用を検討する必要が出てくる。大型店舗で動画ポスターの数も多いということならば、末端の回線速度だけではなく、店内サーバから無線LANターミナルまでのバックボーンの容量確保も問題となるし、ユーザ(店頭の顧客)からの動画情報呼びだしが可能とするシステムを検討するのであれば、店内の顧客が多い時間帯における輻輳問題にも対応しなければならない。
また、ビジネス用途のケースでは、回線速度だけではなく、セキュリティの確保も重要な観点となる。役員間の連絡端末のディスプレイから、社員各自が利用するノート型ディスプレイ、社外の人も参加する会議室用の大型ディスプレイ、来客用の社内案内用タッチパネルなどなど、企業内には、求められるセキュリティ水準の異なる多数のディスプレイ端末が存在している。しかも、そのうちの多くは、今後持ち運び可能なモバイル型となっていくだろう。
この際には、どのようにネットワークを分割してセキュリティを確保するか、またモバイル型のディスプレイを活用するにあたっての無線暗号化をどう徹底するか等を充分に吟味し、ネットワーク設計やファイヤーウォールの設置をすることが必要だ。
ユーザインターフェースの設計ということでは、ディスプレイとセットとなる「入力装置」の選択も重要だ。
ディスプレイとの組合せが考えられる入力装置としては、キーボード、マウス、タッチパネル、あるいはTV用のリモコンなどに加え、ホワイトボード用ペンツール、ノート用ペンツールなど各種のデバイスがあるし、案内板であれば人体の位置を感知するセンサ類、ドライブスルーの注文用ディスプレイであれば音声認識デバイス、店内での商品説明用であれば商品付帯のRFIDタグとの通信デバイス、警備用であればバイオメトリクスセンサなどが入力装置として検討されることになろう。
ソリューション全体の設計ということでは、ユーザインターフェースの使いやすさに加え、どんな業務をどのようなシステムを構築することで実現していくか、という観点が必要となる。これに伴い検討すべき課題も無数に発生していく。
例えば飲食店にタッチパネル型のメニュ用ディスプレイを導入することを考えてみよう。この場合、ディスプレイは注文システムの端末そのものでもあるし、場合によっては待ち時間を利用したコンテンツの視聴ネットワーク端末にも、そういった顧客操作を通じてマーケティング・データを取得するCRMにもなりうる。このそれぞれについて適切なシステム設計を行っていくことが重要だ。
例えば、タッチパネルで注文を受けるというシステム一つをとっただけでも、様々なシステム設計上のポイントを指摘することができる。
店内での注文データの処理業務をどう考えれば、より少ない店員で、ユーザからの不満が出ない形で注文を取ることが可能になるのか。これには、店内のワークフローの分析と、タッチパネル型ディスプレイ採用によるその組み替えの提案が必要となる。その際には、経理や在庫管理、食材発注システムとのデータのやり取りをどのようなプロトコルや通信インターフェース、データ型式で行い、また、厨房への作業指示をどんな出力装置で実施することが望ましいのかを明確にしておかなければならない。
さらに、醤油や赤出汁などのはねが飛ぶような環境を前提とした場合、タッチパネルのデバイス自体の設計はどうすべきで、保護材として何が必要かというハード上の気配りも必要だ。
待ち時間利用のコンテンツ配信サービスの出力装置としても使う、ということになると、設計が必要なシステム・ネットワークの範囲はさらに大きく広がっていく。まず浮かぶのが、コンテンツ・プロバイダからどういうネットワークでコンテンツ供給を受けるのかという問題だ。その際には、専用線網やVPNを利用する必要があるのかというセキュリティ面の検討も併せて行わなければならない。
次にフランチャイズ内、店内での配信ネットワークの設計が求められる。コンテンツ蓄積用のサーバは必要となるのか、それとも中継だけであとはコンテンツ・プロバイダに任せればいいのか。コンテンツ配信に伴う配信数管理、ログ管理のための集計・解析のツールについては、どちら側が責任をもって実装し、管理するべきか、などなど細かなポイントは数限りなくある。
また、CRM利用を考えるためには、注文のログとコンテンツ配信のログに顧客情報を組み合わせたデータウェアハウスの構築と、そこへのデータマイニング・ツールの投入を考慮しなければならない。また、正確で豊富な顧客情報を獲得していくためには、ポイント・システムをフックとしたハウスカードの投入や、あるいは、電子マネーの導入を考える必要も出てくるだろう。
タッチパネル型メニュの導入1つをとってもわかるように、単に新たなディスプレイ技術の導入といっても、それを成功させるためには、新たな業務フローの開発から、それに合わせたシステムとネットワークの設計、各種のハードウェアの用意・開発など、非常に幅広い分野での検討が必要となる。「きれいで薄いディスプレイに取り替えましょう」といった簡単な話ではないのだ。
ディスプレイの活躍の場が広がる、ということは、ディスプレイ技術を活用した新規のソリューション=システムやネットワーク構築が行われるということと全く同義のことと考える必要がある。あらゆる物事が、ネットワークを経由して、他のシステムや技術と連携する「ユビキタス」の時代。ディスプレイも、また、そういった流れの中で見ていかなければならない。
自社業務の改善として、あるいは新規ビジネスの開拓のために新たなディスプレイ技術をソリューションの一部として活用する機会は、今後、ますます広がっていくことになるだろう。
システムの目的に応じてどんなディスプレイをどのように実装するのか。実装されたディスプレイを適切に機能させるためには入力装置やネットワーク構築はどのように行うべきか。ますます高度化するディスプレイの最適活用のためには、こういった観点からの不断の検討が必要である。
(2004年7月28日公開)











