− 第3回 −
次世代モバイルの姿
〜いつでも、どこでも、どんなデバイスからでも
必要な情報にアクセスできる時代へ〜
「いつでも、どこでも、どんなデバイスからでも、必要な情報にアクセスしたい」。こう思わない人はいないだろう。
しかしながら、現在のサービスにはまだ限界がある。PHSでは廉価な定額料金サービスがあるものの、128Kbpsとまだまだ低速であり、また、無線LANで実効速度最大25Mbps以上を発揮できるWi-Fiのインフラは利用場所(ホットスポット)が少ない。
一方、NTTドコモのFOMAなど、3Gと呼ばれる第三世代携帯電話インフラは、それなりに高速(最大384Kbps)になったとはいえ、ビット当たりの単価は決して安くはない。
このように、帯に短したすきに長し、というのが現在のモバイルの現状だ。理想の状況、動画であってもスムーズに伝送できる容量で常時接続が可能、というレベルのコネクティビティにはまだほど遠いと言わざるを得ない。
しかし、ビジネスのIT化を考えた場合、モバイル・インフラの充実は必須である。営業先、出張先にいったら社内システムはまともに利用できない・・・こんなことでは到底「ユビキタス」にビジネスを行うことはできない。
とはいえ、こうした中途半端な状況がいつまでも続くわけではない。
今回は、現在開発が進みつつある各種のモバイル技術の動向を踏まえ、いつ頃、どのようなかたちで理想のモバイル環境が実現していくかを見ていくこととしたい。
モバイル発展のプロセス
数十Mbps以上の容量で、どこでも、どんな時でも常時接続されているモバイル環境。これを実現し、ビジネス上のツールとして使いこなしていくためには、下記の4段階のプロセスの整備が必要になる。
1) インフラストラクチャ
2) セキュリティ
3) アプリケーション
4) 企業での利用ノウハウ
まず必要なのが大容量の通信を支えるインフラストラクチャである。
最低何Mbps必要か、という点については、実際にビジネス上やりとりされるデータによるため一概には言えないが、動画利用が当たり前になるということを考えると、数十Mbps以上の実効速度がでている必要がある。
インフラストラクチャを考える上で見逃してはならないもう一つのポイントは、「行った先で接続されている」という「点のモバイル」だけではなく、「移動中も接続されている」という「線のモバイル」も合わせて実現されなければならない、ということだ。
アクセスするためにはホテルや空港のロビーでいちいち時間を潰さなければならない、というのでは、ビジネスのスピードが落ちてしまう。飛行機の中でも、歩きながらでも接続が続いている、という「線のモバイル」まで達してこそ、はじめてモバイルのインフラとしての意義が達成される。
先ごろ、航空機メーカーのボーイング社は「Connection by Boeing」という旅客機の中でインターネット接続ができるサービスを発表し、国内では日本航空がそのサービスを実装することが発表された。このような「線」への対応が今後ますます求められてくることになろう。
次に出てくるのがセキュリティの問題だ。モバイル接続ということは、ビジネス的には、企業内の情報システムにどこからでも繋げられるということを意味している。その中には、もちろん、顧客情報もあれば、経営上の機密情報だって格納されている。
モバイルでビジネスをするためには、そういった情報のやりとりをしていても十分に安全が確保される方法が提供されなければならない。
モバイルとセキュリティということでもう一つ留意しておかなければならないのは、持ち歩き型の個人端末を置き忘れたり、あるいは、盗まれたりすると、ネットワーク・セキュリティの破綻に繋がりかねない、ということだ。オフィスであれば各種の警備システムに物理的に守られている端末が、モバイルの場合には、むき出しになっているのである。
これは、モバイル時代が進めば進むほど、端末自体を守るセキュリティ技術、たとえば指紋認証などのバイオメトリクスによる個人認証技術が重要になってくるということを意味している。
三番目にモバイルに対応したアプリケーションの問題がある。
モバイル=(イコール)単にメールとウェブが使えればいい、というわけにはいかない。SCMやCRM、ERPといった各種システムの利用が進んでいくことが予想される現在、複数のモバイル環境にいるスタッフが同時にアクセスしてもデータの整合が保持でき、また、すばやい意思決定ができるよう情報共有を達成できていることが必要である。
情報共有型アプリケーションの代表的な例がスケジュール共有である。ウェブアプリケーションベースのスケジュール共有リストは、常に接続されていなければ、内容に不整合が起こってしまう。ということは、モバイルのように、オンになったり、オフになったりすることが前提のものでは、データ内容に混乱が起こりかねないのだ。仮に一時的にオフラインになったとしても情報をいかに整合させて維持することができるか。この点の機能開発が、今後の、モバイルを前提としたアプリケーションの課題だ。
最後に、このようなモバイル環境の利用のノウハウも重要になる。
モバイルというと出先にいることが多い営業や、たまの出張時に使うものと思われがちだ。しかし、モバイルのコンピュータネットワークでどこにいても同じ環境が構築できたとしたら、何もその利用を現状のワークスタイルの延長線上にとどめておく必要はない。
例えば、すでに、フレックスタイムという概念が定着しているように「フレックスプレイス」という新たな概念が出てくることが予想される。これは、社員の一人ひとりがもっとも快適と思われる場所で仕事をすることで、生産性を向上させるというマネジメントの考え方である。
このためには、技術的な側面だけではなく、就業規則、目標管理、自己管理などの多様な観点での検討が必要になる。つまりは、企業組織自体の大幅な変革が求められることになるのである。
上記の見通しを踏まえ、以下では、特にインフラストラクチャの部分に焦点を合わせ、モバイルの進化の動向を見ていくこととする。












