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小池良次 米国発、ITトレンド

− 第62回 −

次世代モバイル網は顧客を満足させられるのか
――情報パイプ論を乗り越える米携帯業界の挑戦

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携帯業界3位のスプリントはWiMAXと同時提供

 一方、業界3位のスプリント(Sprint Nextel)は10月7日の投資家会議で「2012年中旬にLTEサービスを開始する」と発表した。これは同社が以前から進めていたマルチ・モード基地局(3)の整備プロジェクト“Network Vision”をベースに、1900MHz(PCS、G-Block)帯を利用したFDD LTEでサービスを提供する。

 日本のKDDIと同じようにスプリントの携帯データは、クリアワイヤー社のWiMAXを再販している。2012年はWiMAXとLTEの両方を提供するが、12年末の目標はLTEのカバー人口が1億2,300万、WiMAXが1億2,000万で、重複は6,700万となっている。

 このようにトップ3社が顔をそろえ、米国は空前のLTE投資ブームに突入した。

 ただ、こうした数字を並べても、読者にとっては米国で「LTE投資がいかに過熱しているか」実感できないだろう。大雑把に言うと、米国は日本の約26倍の面積がある。その米国でベライゾンは既に179市場を整備し、日本全体の数倍におよぶ地域を約1年で整備したことになる。同社は約3年で全米をカバーする予定で、その展開速度は実に早いと言える。


米国では4人に1人がスマートフォンを返品

 こうしたLTE時代を目前に、米国では顧客管理のあり方を見直す動きが広がっている。冒頭で述べたように、携帯データ・サービスにおける顧客満足度の向上は、対応が非常に難しい。

 米国でスマートフォンを購入したユーザーの10%〜25%は、機器の故障などとは関係なしに返品している、と言われる。つまり、最大4人に1人は「スマートフォンの使い方がわからない」「思ったように使えない」「料金が高い」などの不便を感じて返品していると予想されている。日本同様、これは普通のフィーチャー携帯とは状況が大きく違う(4)

 2014年までに75%のユーザーがスマートフォンを利用するとの予測もあり、適切なカスタマー・サポートをおこなうことは、LTEサービスの競争を大きく左右することになる。

 そうした観点に立つと、ベライゾンが参入して競争が激しくなったiPhone販売で、なぜAT&Tは優位な立場を維持しているか─は見逃せない。

 もちろん、同社が携帯ネットワークの充実を進めたこと(HSPA+へのアップグレード)も一因だが、iPhoneの独占販売期間に多くのクレームを受けて、カスタマー・サポートを充実させていったことが主たる理由といえる。

 今回のiPhone 4G Sからは、業界3位のスプリントも販売を開始した。しかし、現在のところ「AT&Tが一番速くて使いやすい」との評判が広がっている。では、AT&Tはどのような体制で顧客満足度を高めているのだろうか。

AT&Tのカスタマー・エクスペリエンス・アナリティックス

AT&Tのジェームス・イーガン氏(カスタマー・サービス・ディレクター) 4G World 2011にて筆者撮影

 2011年10月にシカゴで開催された4G World会議でAT&Tのジェームス・イーガン氏(カスタマー・サービス・ディレクター)は、同社が運用しているカスタマー・エクスペリエンス・アナリティックスに関する報告をおこなった。

 カスタマー・エクスペリエンス・アナリティックスは米国でも耳新しい言葉だが、様々な顧客情報を総合的に分析し、顧客満足度の向上と新サービスの開発を狙う分析手法だ。

 AT&Tの同システムも、直営販売店、電話相談センター、ウェブでのカスタマー・サポート、ソーシャル・メディアでの“つぶやき”などを網羅している。窓口情報や、顧客のネットワークの利用情報など、様々なチャンネルからの情報をまとめ、“顧客のパターン”や“メリット・デメリット抽出”“各種活動の累積・積算”など様々な行動分析をおこなう。

 こうした分析をベースに1)顧客別のライフサイクル管理、2)各種教育・サポート体制、3)セルフサービスの円滑化や知的ルーティング、などの顧客対応を目指すとイーガン氏は報告している。

 端末購入時の丁寧な説明やプランの設定から始まり、適切な時期に端末の更新案内をおこなったり、データプランの規定を超えそうになった場合の注意メールや新プランへの移行など、顧客に対するきめ細やかで長期的なサービスの改善を目指してゆく。もちろん、従来からこうしたカスタマー・サービスはおこなわれてきた。しかし、従来のシステムは代理店やオンライン、電話サポートセンターなどが別々に対応していたため、顧客へのフィードバックが遅かったり、トラブルの発見や対応が不十分だった。




(3) マルチ・モード基地局は、ソフトラジオを基盤にしてCDMA、LTEなど複数の違うラジオ・モードに対応する無線基地局。スプリント・ネクステルの場合、CDMA、LTEに加えてWiMAXにも対応するタイプを整備している。

(4) この数字はモバイル・ネットワーク向け分析アプリケーションを提供しているamdocs社による報告。


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執筆者 : 小池 良次(こいけ りょうじ)
通信業界を得意とする在米ITジャーナリスト。京都外国語大学卒業後、ブラジルのサンパウロ新聞社に入社、社会面・経済面を担当。その後、帰国し民間調査会社に就職、リサーチャーとして技術動向調査、技術出版など300プロジェクト以上を企画運営する。



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