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小池良次 米国発、ITトレンド

− 第53回 −

先端通信技術で次世代の電力システムをめざす
本格化する米国スマート・グリッド市場とテレコミュニケーション

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FAN/AMIとスマート・メーター・プレーヤー

 スマート・グリッドを支えるFAN/AMIは、通信業界から見るとM2M(machine-to-machine)という新マーケットとなる。従来の通信サービスは電話にせよインターネットにせよ、情報を人間に運ぶことが主体だった。一方、AMIではスマート・メーターから電力会社のサーバへ、そしてホーム・グリッドへと情報が受け渡され、人への情報提供を目的としていない。しかも、その規模は電話やインターネットと変わらないほど大きい。こうした背景からCisco Systems社やAT&T社など多数の事業者がFAN/AMI市場への参入を狙っているが、電力業界への挑戦は容易ではない。

 やや大雑把ではあるが、FAN/AMI市場を大きくスマート・メーター系とネットワーク系プレーヤーに分けてみてみよう。

 GE(GE Energy)社、Itron社、Landis+Gyr社のスマート・メーター・トップ3社を筆頭にEchelon社、Sensus社、Elster社など多くのメーター・メーカーが大手電力事業者と密接な取引関係を築いており、FAN/AMIビジネスに強い影響力を持っている。また、メーター・メーカー大手はネットワーク・サービスも同時に手がけている。

FAN/AMIの概念図

 たとえば、GE社は発電設備からメーターまで幅広いサービスを提供しており、Grid Optimizationなども展開している。また、FAN/AMIにおけるネットワーク技術ではCenterPointEnergyとともにWiMAXを使ったメッシュ・ネットワークの構築を狙っている。Itron社はデマンド・レスポンスのComverge社と提携(2009年6月)しているほか、ホーム・グリッド分野では2009年5月にGoogle社との手を結んでいる。また、中堅のEchelon社は携帯業界第4位のT-Mobile USA社と2009年4月に提携し、携帯データによるスマート・メーター事業を行っている。このように、大手メーター・メーカーは各地で進むAMIプロジェクトで合従連衡の軸となっている。

Cisco Systemsの参入に熱気をおびるネットワーク系プロバイダー

 ネットワーク系プレーヤーは、大手通信事業者がスマート・グリッドに参入する門戸になっている。

 そもそもスマート・メーター・ネットワークを得意とするElster社やSilver Spring Networks社、Trilliant社などは携帯電話網に依存せず、無線メッシュ・ネットワーク(900MHzなど)を独自に構築する方式を使っている。一方、SmartSynch社は携帯電話2位のAT&Tモビリティ社と2009年3月に提携し、スマート・メーター向け携帯データ・サービスを開始している。ちなみに、Google社が出資したBPL(Broadband-over-PowerLine(16))ベンチャーのCurrent Group社もネットワーク系プレーヤーとして活躍している。同社は光ファイバーと携帯データ網を利用する低遅延型IP通信とセンサー網を特徴にしており、現在はBPL事業から撤退している。

 このようにネットワーク系プロバイダーは独自の無線メッシュ型と携帯データ型にわかれるが、それぞれに長所と短所を持ち、現在のところ市場で混在している。

 とはいえ、同分野の花形はSilver Spring Networks(SSN)社だ。同社は、ベンチャー・キャピタルなどから1億6500万ドルの資金を調達している。出資者にはKleiner Perkins Caufield & Byers社などのほか、Googleも入っている。

 運用効率の高さやホーム・グリッド機能などで優れた特徴を持つ同社は、多方面で提携関係を築いている。たとえば、スマート・メーター分野では、GE Energy社、Itron社、Landis+Gyr社、PRI社、Sensus社などと提携しているほか、Demand ManagementではComverge社やEnerNoc社と、ホーム・グリッド分野ではTendril社、Greenbox社、Control4社、Arch Rock社、Onzo社、Carrier Corporation社、Energate社などと手を組んでいる。

 一方、SSN社の前に立ちはだかっているのが、Cisco Systems社だ。両社はFlorida Power and Light社のAMIプロジェクトで提携しているが、2009年6月に発表されたDuke Energy社の10億ドルを超える大規模なAMI構築でCisco社がネットワークを単独で受注して以来、両社は競争関係にある。

 優れた特徴を持つSSN社は、大手電力事業者が展開する小規模な実験プロジェクトでは大きな成功をおさめている。しかし、FAN/AMIは今後、大規模な本格プロジェクトが動き始める。そうした場合、大量の建設・保守要員の確保や資金的な安定力などもベンダーに求められる。Cisco System社は、そうした総合力で今後ビジネスを拡大してゆくと予想される。


◇◇◇

 今回は通信事業者から見たスマート・グリッド市場に焦点を絞って分析した。そのため、IBMやOracleが狙っているAUCS(Advanced Utility Controls Systems)市場や電気自動車による蓄電システム、太陽光や風力などの再生エネルギー利用などの分野には触れていない。

 FAN/AMIへの投資は、これから5年程度でピークを迎えると予想されている。それに続いて、上位階層(AUCS)の構築も本格化してゆく一方、ホーム・グリッド市場も生まれてくるだろう。この分野ではGoogle社の“PowerMeter”とMicrosoft社の“Hohm”がすでに競争を開始している。

 ホーム・グリッド市場は、ネット企業だけでなく、冷暖房機器メーカーや家電メーカーなど多彩な企業が参入すると予想されている。しかし、ICT業界に比べると閉鎖性が強い電力業界をどのようにオープン化し、ホーム・グリッド市場での競争を促進するかは難しい。Google社を筆頭にハイテク企業は、電力業界のオープン化をもとめて連邦議会への働きかけを強めており、今後の動向に注目が集まっている。

 通信事業者がスマート・グリッド市場への参入に成功し、電力消費の平準化や設備投資の削減が実現できれば、その米国モデルは日本にも大きな影響を与えることになるだろう。

(2009年9月29日公開)




(16)BPLは米国における電力線通信の一般名称。日本ではPLC(power line communication)と呼ばれている。

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執筆者 : 小池 良次(こいけ りょうじ)
京都外国語大学卒業後、ブラジルのサンパウロ新聞社に入社、社会面・経済面を担当。その後、帰国し民間調査会社に就職、リサーチャーとして技術動向調査、技術出版など300プロジェクト以上を企画運営する。



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