− 第52回 −
ダークサイド・オブ・クラウド −クラウドの暗部−
その難関に立ち向かう米国IT業界(後編)
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【2009年7月1日(水)16時締め切り】
前編では、米国でクラウド・コンピューティングについて、様々な問題点が大きな議論となっていることを紹介した。ただ、このダークサイド・オブ・クラウド問題は、クラウド・コンピューティング自体を否定する論調ではなく、ベンダーやユーザーが本格的に導入しようとしているために巻き起こっていると考えられる。また、クラウド・コンピューティングを階層図を使って分析し、主要サービスや企業のポジショニングを解説した。
後編では、いよいよ階層図をベースに主要プレーヤーの戦略とダークサイドとの関係を考察してゆきたい。
トップランナーのAmazon Web Services社はCSIの覇権をねらう
Amazon Web Services社は、クラウド・コンピューティングで最先端を走っているとよく言われる。また、ダークサイドの議論でも“暗に”同社のクラウドを意識して議論する専門家は多い。では、同社はどのようなポジションでクラウド・コンピューティング戦略を展開しているのだろうか。前編で解説した階層図に当てはめると、同社はCSI階層での総合プロバイダーを目指している。
電子小売店を原点とするAmazon Web Services社は、企業向けデータセンター事業者でも、システム・インテグレーターでもない。そのため、同社のクラウドは個人や零細企業を対象としたパブリック・クラウドとして始まった。しかし、現在はクラウドのトップランナーとして、中堅から大企業までが利用できる本格的なクラウド・サービスが期待されている。
そうした期待に応えるように、同社はEC2サービスでIaaSを、S3サービス(Simple Storage Service、仮想データ・ストレージ)でDaaSを、CloudFront(コンテンツ・デリバリー・ネットワークのサービス)でCaaSをそれぞれ提供し、CSI階層でのフル・ラインナップ・プロバイダーを狙っている。将来的にはプライベート・クラウドにも進出する可能性があると筆者は見ている。
熱い口調でクラウドを語るWerner Vogels氏(CTO、Amazon)Enterprise Cloud Summitにて筆者撮影
エンタープライズ・クラウド・サミットで講演したWerner Vogels氏(CTO、Amazon.com)によれば、同社は今サービス開発に追われているという。たとえば、最近発表したCloudFrontはS3に蓄積したファイルを「高速で転送したい」というユーザーの要望から生まれた。一方、ダークサイドへの対応として、同社は現在セキュリティ・サービスに力を入れている。総合的なセキュリティ対策をユーザーに提案しており「ニューヨークの金融機関が(Amazon Web Services社の)クラウドを利用する事例も出てきている」とVogels氏は胸をはる。しかも、Vogels氏はロケーション・サービス(ユーザーの位置確認とそれに応じた情報提供)やボイス・ウェブ(ウェブと音声操作インターフェースの組み合わせ)などVaaS(Voice-as-a-Service)にも関心を示しており、より上位の階層(たとえばSaaS層)への事業拡張もあり得そうだ。
同社のクラウドに対応するソフトウェア・ベンダーが増える一方、ユーザーも増え、様々な要望が寄せられている。そのため、ユーザー向けクラウド監視サービスを充実させ、システムの透明度をあげるなど、ダークサイドを意識しつつも、どちらかと言えば、新規サービスの開発に追われているのが同社の現状と言える。
Amazon Web Services社に対抗して様々なデータセンター事業者が同分野に参入している。たとえば、中小企業向けホスティングで有名なRackspace社も最近クラウド・ホスティング・サービスを開始した。6万2,000以上の顧客を抱える同社のLew Moorman氏(CSO)は「AmazonやGoogleは特殊な事例だ。わが社は、データセンター事業者として(の経験を生かして)クラウドを提供しており、これが本流となるだろう。(中略)クラウドはある意味、新たな形式のシェアード・サーバと考えればよい」と述べている。中小零細市場を得意とする同社は企業コンプライアンスでの制約は少なく、今後Amazon Web Services社と正面から競合することになるだろう。
また、HaaSを展開していたSun Microsystemsも“Sun Open Cloud Platform”を発表し、この夏には同分野に参入しようとしている。
階層別クラウド・プレーヤー・リスト

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執筆者 : 小池 良次(こいけ りょうじ)
京都外国語大学卒業後、ブラジルのサンパウロ新聞社に入社、社会面・経済面を担当。その後、帰国し民間調査会社に就職、リサーチャーとして技術動向調査、技術出版など300プロジェクト以上を企画運営する。









