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小池良次 米国発、ITトレンド

− 第49回 −

政権移行プロジェクト─いよいよ始動
オバマ新政権の情報通信政策を考察する

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 米国は、サンクスギビング(感謝祭)からクリスマスへと続くホリデー・シーズンに入った。議員達が地元に戻って休暇を過ごしはじめた政都“ワシントン”にも静けさが広がっている。一方、そうした年末の静寂を無視するように喧騒であふれている街がある。シカゴ──オバマ次期大統領の地元だ。11月4日、同地で「歴史的な変革!」の勝利宣言を行ったオバマ氏は、すでにワシントンに政権移行チーム(1)を編成し、シカゴからつぎつぎと指示を発している。クリントン政権を支えた民主党の重鎮達は今、この特別プロジェクトに参加するため続々と集まり、シカゴは異例のホリデー・シーズンを迎えている。今回は、いよいよ動き出したオバマ・バイデン政権移行チームの動きを追いながら、次期政権のハイテク政策を予想してみたい。


政治的空白を認めない──スピード感あふれるオバマ移行プロジェクト

オバマ・バイデン政権移行プロジェクトのホームページ

オバマ・バイデン政権移行プロジェクトのホームページ

 2期8年続いたブッシュ共和党政権にかわって、オバマ民主党政権が2009年1月にいよいよ発足する。米国は大恐慌以来の経済危機に直面しており、オバマ政権は政治的な空白を作ることは許されない。「経済再建」「イラク駐留の終結」を公約とした同氏は、財務長官にティモシー・ガイトナー氏を起用するなど経済主要人事(財務長官、国家経済会議委員長、経済諮問委員会委員長、国民政策委員会委員長)を11月24日(米国時間)に発表している。また、26日(同)には元FRB議長のポール・ボルカー氏を議長とする『経済回復諮問会議』の新設も発表した。これらの発表は大統領当選後1ヶ月も経っておらず、異例の政権移行スピードと言える。

 2世議員、ジョージ・ブッシュ氏が最初に大統領に就任したのは2001年。そのときも民主党から共和党に“大きく”政権が変わった。しかし、ブッシュ氏の政権移行はスローペースで行われ、ワシントンは約1年ほどの空白に見舞われた。これに比べると、オバマ氏の行動力はスピード感にあふれている。矢継ぎ早に重要発表を行うことで、既に米国市民の目はブッシュ氏からオバマ氏に移っている。

 同氏の政権移行作業は多岐にわたっている。経済危機を最優先課題として様々な特別経済プロジェクトが動いているが、長期的な政策ポリシーと具体的な施策立案では『Obama-Biden Transition Project』(オバマ・バイデン政権移行プロジェクト)が主要な役割を担っている。では、同プロジェクトの具体的な役割はどのようなものだろうか。

 オバマ・バイデン政権移行プロジェクトは、24項目に至るアジェンダ(政策目標)を発表している。これはイラク撤退問題から医療制度改革、零細農家対策まで多岐にわたる。また、連邦政府のネットワーク・セキュリティ対策が「Homeland Security」と「Technology」の両項目にまたがるなど、多数の項目で重複している。

オバマ・バイデン政権移行プロジェクトの政策目標項目

オバマ・バイデン政権移行プロジェクトの政策目標項目

 既存の政治慣行を嫌い「ワシントン政治を外から変える!」をモットーにするオバマ氏は、今回の移行チームでもロビイスト排除のルールを適用している。ロビイストは、ワシントンで議員や政府関係者に働きかける政治コンサルタントのことで、元政府関係者が多い。企業や業界団体は、ロビイストの人脈を使って現職議員や政府関係者に政策提案や調整を働きかける。政治献金の窓口としてもロビイストは活躍する。特にブッシュ政権では、共和党系の大企業が高額のロビイストを雇い「企業や業界に有利な施策を展開してきた」という批判が強かった。

 もちろん、オバマ氏が属する民主党でも多くのロビイストが活動しており、共和党だけを批判するわけにはいかない。ただ、オバマ氏は連邦議員第1期目で大統領に当選したこともあり、こうしたワシントン的な政治慣行に染まっていない強みを持つ。また、そうした政治色の無さが、国民からの支持にもつながった。そこで移行チームでオバマ氏は、ワシントン流のロビイスト政治を排除している。そのルールは次の4項目からなる。

  1. 連邦ロビイストは移行チームに対する金銭的な支援(贈与)をすることはできない(2)
  2. 連邦ロビイストは移行チームへのロビー活動を一切行ってはならない
  3. 過去1年以内にロビイストであった人物は、移行チームでロビー活動をしていた分野に属する事はできない
  4. 移行チームで仕事をした後ロビイストに転向した場合、その移行チームで担当した分野に対するロビー活動を1年間行ってはならない

 オバマ・バイデン政権はこうしたルールの下、クリントン大統領時代に重要な役割を担った民主党のスタッフやリーダーを多数呼び寄せ、政権移行の準備を進めている。それはまさに、シカゴに臨時の米国政府が生まれたような印象を受ける。





(1) オバマ・バイデン政権移行チームの本部は、ワシントンDCのダウンタウンにある。しかし、正確な住所などは、セキュリティーのため公表されていない。オバマ次期大統領自身は、シカゴで家族とともに生活しており、必要に応じてワシントンに出向いている。そのため、スタッフはワシントンとシカゴの間を頻繁に行き来している。各種記者発表もシカゴであったり、ワシントンであったりしている。

(2) 公式発表では、5番目として物品の贈与を禁止することが記されているが、これは項目1と重複するため、本項ではわかりやすく4項目に集約した。




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執筆者 : 小池 良次(こいけ りょうじ)
京都外国語大学卒業後、ブラジルのサンパウロ新聞社に入社、社会面・経済面を担当。その後、帰国し民間調査会社に就職、リサーチャーとして技術動向調査、技術出版など300プロジェクト以上を企画運営する。



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