− 第46回 −
来年2月のアナログ放送打ち切りを前に
混乱深まる米デジタル・テレビ移行問題
クーポンおよびコンバータ問題
一方、コンバータを購入するための「補助金クーポン」プログラムは、商務省のNTIA(National Telecommunications and Information Administration)が運営している。1枚で40ドル相当のディスカウントが受けられるクーポンは100万枚発行される。今年1月からWebサイトや電話、郵便、ファックスで受付を開始し、初日には約50万件の申し込みが殺到した。同クーポンはNTIAが認定した販売店で利用でき、そこにはテレビ・ショッピングの大手QVCやBest Buy、Circuit City、Wal-Martなど約250の量販系列店が顔を揃えている。
1月に入って、これら量販店の店頭にはデジタル・アナログ・コンバータ(5)が徐々にならぶ一方、量販店のWebサイトでもデジタル放送への移行やクーポンに関する特別ページを開設している。しかし、Best Buyなど量販店はクーポンの取り扱いを店舗だけに限定するなど、使い勝手は決して良いわけではない。
また、量販店各社は、メーカーが十分な量のコンバータを供給できないのではないかとの懸念を持っている(6)。クーポンの利用期限は発行日から90日後となっており、在庫不足の場合、消費者が商品を手にする前に有効期限が切れる恐れもある。FCCは、事態の改善を議会に要請し、議会は急遽「クーポンが期限切れの場合、再発行をおこなう」対応を認めている。
一方、量販店が都市部に集中していることに対する懸念もある。量販店から離れた場所にいる市民はクーポンを受け取っても利用できないからだ。この問題を解決するため、NTIAは僻地などにも店舗をもつ雑貨やスーパーマーケット・チェーンにも、クーポン取り扱い承認を与えている。しかし“需要が明確でなく仕入れ量が決まらない”、“店舗の従業員教育をどうすればいいかわからない”などの問題から雑貨・スーパーマーケットの対応は大幅に遅れている。
皮肉なことに、慌ててコンバータを買っても、まだ使えないと勘違いしている市民もいる。既に、約92%(7)の地上TV局はデジタル放送を開始(試験放送を含む)している。コンバータを購入すれば、すぐに利用できるのだが、来年2月までにはまだ時間があると買い控えている市民もいる。いずれにせよ、コンバータの購入需要は夏から秋に向けて急速に上昇してゆくと予想されている。
表面化するLPTV(難視聴対策)問題
LPTV(Low Power Television)問題も注目を集め始めている。2009年2月にアナログ放送を停止するのは、FPTV(Full Power Television)と呼ばれる大型商業局で、全米に約3,000局あるといわれるLPTVは、その後もアナログ放送を続けることができる。
LPTVは、その名のとおり小出力のテレビ局で、難視聴地域を対象に大手放送局の再送信を行う。米国では“コミュニティ放送”と呼ばれ、米国商務省はこうした弱小TV局のシステムのデジタル化に補助金を交付する。しかし、政府の補助金支払期限は2010年10月までとなっており、LPTVが早期に設備投資をすればするほど、実際の補助金を手にするまでの期間が長引く恐れがある。そのためLPTVは現在、デジタル投資を先延ばしにする傾向にある。
一方、こうしたLPTV視聴者は、大型商業局のデジタル波だけに対応する普通のコンバータを購入するとコミュニティ放送を観ることができなくなってしまう。こうしたところから、2007年11月コミュニティ放送の業界団体CBA(Community Broadcasters Association)は、こうしたLPTV問題を解決するようFCCに申請している。また、CBAはNBAとともに、議会の関係委員会に事態の改善を求めるロビー活動を行っている。
NTIAは、短期的な解決としてLPTV受信地域に対してはアナログ放送も受けられる特殊なタイプのコンバータ(analog pass-through type)にも、クーポンが利用できるようにした。また、上院の通商科学運輸委員会(Senate Committee on Commerce, Science, and Transportation)は、商務省のLPTV局向け助成金の支払い期限を早くする法案の策定に乗り出している。
(5) 米国政府はクーポンプログラムの対象として、19機種のコンバータを正式に認証している。
(6) たとえば、2008年1月にラスベガスで開催されたCES(全米家電ショー)でBest Buyなどのエグゼクティブによるパネル・ディスカッションが行われ、席上、供給量不足を懸念する意見が出された。
(7) 全米の主要テレビ局(full power television station)1,762局のうち1,624局がデジタル番組を提供している。(出典:DTVANSERS.com)












