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小池良次 米国発、ITトレンド

− 第45回 −

オバマか、クリントンか。
白熱する米プレジデンシャル・レースにみる次期大統領候補のIT戦略

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次期大統領のIT政策はどうなる

 では、マケイン氏、クリントン氏、オバマ氏がそれぞれ大統領に当選した場合、いったいどのようなIT政策が展開されるのだろうか。もちろん、現段階では限られた情報しかなく、正確な予測は不可能だろう。とはいえ、以下のような全体傾向は推測できるだろう。

 まず、マケイン上院議員が当選すれば、過去8年にわたって続いた共和党のIT政策が踏襲されるはずだ。これは、メディア企業や電話会社、CATV事業者など既存の大手企業にとってメリットが多いIT政策といえる。資本集中排除規制は緩和され、ネット中立性の規制は強化されない、プライバシー保護よりもテロ対策が優先されるだろう。ベンチャー企業や独立研究機関・学術関係に対する優遇処置や予算増額は難しい。一方、保護主義には否定的で自由競争、国際市場の開放などに積極的な姿勢は続くことになる。マケイン氏が大統領となっても、ハイテク業界としては、大きな変化は望めない。

保護主義を警戒するCESのアラン・シャピーロ事務局長
(2008年CESで筆者撮影)

保護主義を警戒するCESのアラン・シャピーロ事務局長
(2008年CESで筆者撮影)

 では、クリントン議員が大統領に就任した場合はどうだろう。公約通り、助成金の拡大により大学や研究機関の活性化が進むはずだ。現在でもシリコンバレーを筆頭に、クリントン・ゴア時代を懐かしむ研究者は多い。当時は、インターネットをベースに様々な形で政府の助成金がふんだんに流れ込んできたからだ。またブッシュ時代、ベンチャー企業は冬の時代を過ごしてきた。研究開発が盛んになれば、その派生からベンチャー企業の活動も活発化し、資金調達も潤滑になるだろう。ただ、助成金の拡大は、連邦財政の悪化に繋がりかねない。イラク戦争で悪化した財政状態で、公約にあるようなバラマキ行政を展開すれば、財政の逼迫を招く可能性がある。

 もうひとつ、クリントン政権が成立すれば、保護主義が台頭するという懸念がある。民主党は、伝統的に保護主義を重視する。近年、連邦議会で民主党が優勢になって以来、そうした傾向は強まっている。国内産業を守るため関税強化やスーパー301による制裁、プロ・パテント主義による知的戦略の強化などが再来することが懸念される。既に、家電業界のCEA(Consumer Electronics Association)は、そうしたことを懸念してグローバリズム・フリートレードの維持をワシントンに働きかけている。もし、クリントン政権下で保護主義が台頭すれば、日米間の貿易摩擦、USTR(アメリカ通商代表部)による政府間協議が日本のハイテク業界にも陰を落とすことになりかねない。

予想もつかないオバマ政権の行方

 では、オバマ氏が大統領になったら、米国はどのように動くだろうか。『まったく予想がつかない』というのが米国における有識者の考え方だ。上院議員も1期目であり、オバマ氏を支援するスタッフ群にどのような人物が揃うのかさえ見えない。米国では、新大統領とともに、キャンペーン・スタッフや支援者などがホワイトハウスにやってくる。日本のように官僚組織が安定しているわけでなく、大統領が替われば各政府機関の主要ポストは入れ替わる。

 IT政策の立案でオバマ氏はベンチャー・キャピタリストの友人を起用したように、新政権では彼の知人や友人など政治経験の少ないスタッフが少なからず大統領の側近として起用されるだろう。これは既存の概念にとらわれない政治を行うという面ではメリットだが、経験不足から政治的判断を誤る危険性も高くなる。特に、公約通りの理想主義的な政策を実行しようとすれば、既得権益を持つ議員や業界から激しい抵抗を受けることになるだろう。日本で、小泉氏が改革路線を走ったように、オバマ氏も抵抗勢力と戦いながら、政策を遂行することになるはずだ。

◇◇◇

 新旋風を巻き起こすオバマ氏が大統領に当選すれば、これまでブッシュ共和党政権下で恩恵を被ってきた大企業や既得権益者にとっては脅威となる。大手電話会社、CATV事業者、大手メディア・コングロマリット、そしてマイクロソフトやグーグルなど独占的な影響力を持つハイテク企業などは、これまでのような安易な企業買収による勢力拡大ができなくなる。また、オバマ氏も、保護主義に走る可能性もある。

 まったく予想がつかない大統領選挙だが、IT業界はオバマ氏に大きな期待を寄せている。実際、2007年夏には「シリコンバレーはオバマ氏を支援した」という噂さえ飛び交った。確かに、IT行政に無頓着だったブッシュ大統領や女性・医療・保険問題に強いヒラリー・クリントン議員に比べれば、オバマ氏はハイテク業界にとって、遙かに手を組みやすい相手に違いない。

 当選すれば初の黒人大統領となるバラク・オバマ氏は、シリコンバレーにとっても希望の星といえるだろう。

(2008年3月10日公開)


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