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小池良次 米国発、ITトレンド

− 第44回 −

新たなサービス開発モデルをめざし
放送・通信のオープン化にゆれ動く米国CATV、携帯業界

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ネットワーク・オープン化とNGN

 すでに述べたように、CATV業界は規制から、携帯電話業界は競争からオープン化に踏みきった。しかし、大局的に見るならば、オープン化は「ユーザ主導のサービス開発」をもとめる動きだろう。

 CATVにせよ、携帯電話にせよ、消費者のニーズはどんどん多様化している。従来のように、CATV会社や電話会社が最大公約数的なサービスを内製するマス・マーケティングは時代遅れになろうとしている。様々な携帯端末やサービスがあふれている現在、消費者は自分のライフスタイルに合わせて、端末とサービスを組み合わせて利用したいと望んでいる。

 一方、コンテンツ・プロバイダーも、こうした動きに対応して、あらゆる端末にサービスを提供しようとしている。米国の大手TV会社は、看板番組を地上波およびCATVで放送するとともに、自社のホームページでも配信している。また、DVDによるレンタルを待たず、各CATV会社のVODサービスにも提供している。消費者はテレビやパソコン、DVDなど様々な端末を状況に応じて利用(回遊行動)しており、コンテンツ・プロバイダーは、そのすべての機会を押さえたいと望んでいるからだ。

 また、ベライゾン・ワイヤレスはオープン化に踏みきる理由を次のように述べている。

電話会社がすべてのサービスや端末を開発する従来のやり方では、多様なユーザの希望を満足させられない。オープン化によって、需要が少なくともユニークで付加価値に富む端末やアプリケーション開発が進むだろう。

 つまり、多種多様なユーザ・ニーズに対応するためオープン化するわけだが、その狙いはインターネットが実証したユーザ主導の"サービス開発モデル"にほかならない。

 過去、インターネットは、多彩なサービスと端末をもっとも短期間に生み出した。もちろん、IP(インターネット・プロトコル)という最低限度のルールは守らなければならないが、インターネットにはアプリケーションにも端末にも制限がない。そのため、ユーザやメーカーが自分たちの状況や希望にあわせて、新たなプロトコル(通信手順)を実装し、好きなアプリケーションを開発した。つまり、ユーザが自分のニーズをベースにサービス(アプリケーションや端末)を開発する「ユーザ主導型開発モデル」だった。

 このユーザ主導型サービス開発という観点に立つと、CATVや携帯電話といった単体サービスのオープン化につづいて、次世代ネットワーク(NGN)でもオープン化は重要な要因となる。

 NGNでは、オールIP化によって携帯電話、固定電話、テレビ放送、ネット放送、ホームページなどを統合することが可能になる。放送通信融合サービスなどと楽観的な議論が広がっているが、現実的にはネットワークの融合にともない、多種多様な端末と種々雑多な利用環境に合わせて無限ともいえるサービスの組み合わせが可能になる。しかし、どのサービスをどのようなユーザが幾らで求めているかを、通信事業者が把握するのは不可能に近い。こう考えると、マス・マーケティングだけでは、NGNにおけるサービス開発は難しい。結局、NGNもオープン化をすすめ、ユーザがそれぞれの問題意識をベースにサービス(ソリューション)を開発する仕組みが必要となる。

 しかし、それはインターネットのように無制限なオープン化とは一線を画してゆくかもしれない。インターネットの場合、そのオープン性のゆえにスパム・メールやフィッシング詐欺(10)、情報漏洩など、ユーザに多くの弊害をもたらした。携帯電話やCATVそしてNGNは、セキュリティやQoS(通信品質)などを保証し、安全で快適なサービス環境を提供しなければならない。そのためには、オープン化といえどもある程度のコントロールが求められる。このバランスのとれたオープン化を実現するには、まだ数年の経験蓄積が必要だろう。

◇◇◇

 世界に先駆けてiモードを成功させた日本は、携帯コンテンツにおいて高いオープン性を持っている。しかし、本稿で紹介したように、米国はコンテンツから端末、アプリケーションに及ぶ広範な開放を進めようとしており、オープン化レースでトップを狙っている。その成果が見え出すのは早くて2009年以降だろうが、そうなれば日本の放送・通信業界でも、より深いオープン化が求められることになるだろう。

 放送通信融合サービスに向かってネットワークが進化すればするほど、時代はネットワークのオープン化を求めているようだ。

(2008年2月18日公開)


(10) フィッシングとは、偽造メールや偽造ホームページを使って、ユーザIDやパスワードなど重要な情報を収集し、悪用する詐欺行為。


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