− 第44回 −
新たなサービス開発モデルをめざし
放送・通信のオープン化にゆれ動く米国CATV、携帯業界

ネットワークのオープン化を宣言するコムキャストのブライアン・ロバーツ会長(CES2008、筆者撮影)
米国が、ネットワークのオープン化で激しく揺れている。これまで、米国の携帯電話やCATV業界は閉鎖的だといわれてきた。ところが昨年末、携帯業界第2位のベライゾン・ワイヤレスが同社ネットワークのオープン化を2008年末までにおこなうと発表し、大きな注目を集めた。また、CATV最大手コムキャストのブライアン・ロバーツ会長も、年頭の全米家電ショー(CES)に登場し、同社ネットワークのオープン化を宣言している。一方、現在進んでいるアナログTV跡地の無線オークションでは、連邦通信委員会(FCC)が一部の無線事業免許にオープン化の義務を課し、ネットワークの開放に向かって積極的に動いている。なぜ、米国の放送通信業界は、端末開放やアプリケーションの自由化へと舵を切ったのか。また、日本にもオープン化は波及するのか。今回は、大きなターニング・ポイントに突入した米国のオープン化状況を追ってみたい。
CATV網のオープン化宣言
まず最初に、家電業界にとって歴史的な出来事ととらえられているブライアン・ロバーツ会長(コムキャスト社)のオープン化宣言から紹介しよう。
米国では毎年1月に、ラスベガスで全米家電ショーが開催される。これは、13万から14万人の来場者が集まる米国屈指の規模を誇る展示会で、ビル・ゲイツ会長(マイクロソフト)を筆頭に業界のリーダー達が基調講演をおこなうことでも有名だ。一方、全米から家電販売店の仕入れ担当が集まり、メーカー各社と顔を合わせながら、その年の販売戦略を練る重要な商談の場所でもある。
同展示会は41年の歴史を誇るが、過去CATV業界のリーダーが基調講演に立ったことは一度もなかった。米国CATV業界の大きさから考えて、それは奇妙に聞こえる。
米CATV業界の市場規模は約747億ドル(約8兆円、2007年)で、普及率は全世帯数の約58%に達する。米国CATV網は街角まで光ファイバーを張り、そこから同軸ケーブルで配信するHFC(Hybrid Fiber Coaxial)で、テレビ放送のほか、インターネット電話やケーブル・モデムなどの通信サービスも提供している。業界最大手のコムキャスト社はVOD(Video On Demand)を1万番組以上そろえ、HD(高精細度テレビジョン)番組数は150チャンネルを超えるなど、放送の付加価値サービスでもCATV業界をリードしている。

ケーブルテレビ・トップ10 (契約者数)
家電メーカーにとって、CATVは米国に広く普及しているため、ビデオ製品やホームネットワーク製品に欠かせない存在でありながら、同業界はモトローラ社やサイエンティフィック・アトランタ社(シスコ・システムズの一部門)を筆頭に、限られたベンダーがSTB(Set-Top-Box)を供給する閉鎖的な市場で、一般家電メーカーおよび家電販売店にとってCATV業界は無縁の世界と考えられてきた。
こうした状況を変えたのが、ブライアン・ロバーツ会長のCES講演だった。同氏は、ネットワークのオープン化を宣言し、家電メーカーや量販店への端末開放を訴えた。
オープン化は、米国政府の指導もあり、コムキャスト社だけではなく、CATV業界全体が、規格標準機関ケーブル・ラボスが定めた"Tru2Way(1)"規格導入を開始している。近い将来、消費者は一般家電販売店でTru2Way製品を購入し、コムキャストなどのCATVネットワークにつないで双方向TVサービスを楽しむことができる。

Tru2Way対応の携帯DVD/DVR端末AnyPlayを紹介するロバーツ会長(CES2008、筆者撮影)
また、ロバーツ会長は、既に家電メーカーとTru2Way製品の共同開発を進めていると述べ、パナソニック製の携帯DVD/DVR端末"AnyPlay"を紹介した。そのほか、TiVo社(2)は、Tru2Way対応のHD-DVRを販売する予定で、マイクロソフトはウィンドウズ・メディア・サーバにTru2Wayを搭載する。講演の最後では、より多様で付加価値の高いCATVサービスを提供するために、家電メーカーやコンテンツ・プロバイダーの協力が必要だと訴えている。
(1) Tru2WayはCATV業界の規格団体CableLabsが定める双方向デジタル・ケーブル・サービスのブランド名。双方向規格のOCAPなどから構成されている。
(2) TiVo社は、以前からDVR付きSTBの共同開発をコムキャスト社と進めている。

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執筆者 : 小池 良次(こいけ りょうじ)
京都外国語大学卒業後、ブラジルのサンパウロ新聞社に入社、社会面・経済面を担当。その後、帰国し民間調査会社に就職、リサーチャーとして技術動向調査、技術出版など300プロジェクト以上を企画運営する。









