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小池良次 米国発、ITトレンド

− 第42回 −

空前の規模でケータイ業界に挑戦する
アンドロイドとグーグルの通信事業戦略

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グーグルは携帯網建設に成功するのか

 ネット企業の大手とはいえ、グーグルは広域通信事業の経験がほとんどない。新規参入し、携帯電話網を建設することができるのだろうか。専門家は、否定的な意見と肯定的な意見にわかれている。通信業界系の専門家には否定論が多く、ネット系には肯定論が多い。否定論は、巨大な投資と高度な技術力、運営スタッフ、複雑な規制対応が必要な携帯網を新規参入企業が構築することは至難だと推測している。一方、肯定論は、巨大な資金力、ネット業界で養った抜群の技術力、ブランド力を甘く見るべきではなく“グーグルなら”携帯網を構築できるかもしれないと主張する。

 ちなみに、筆者はどちらの意見にもくみしない。従来型の携帯網を構築できないことは、  賢いグーグルなら『百も承知』と思える。同社の動きを見るなら従来の音声を重視した  クローズド・ネットワークではなく、インターネット的なネットワークを構築すると見ているからだ。

 つまり、同社が狙っているのは、DSL並の速度と品質を保証するベストエフォート型携帯網ではないかと予測している。

 それにしても、グーグルは多くの課題を克服しなければならない。まず、基地局の場所を確保するという難題が待っている。AT&Tモビリティやベライゾン・ワイヤレスのように、大量の基地局をすでに持っている場合、既存設備を更新/増強することで済む。しかし、グーグルの場合は、ビルやタワーなどアンテナを立てる基地局用地を確保することから始めなければならない。

 幸い米国では、携帯事業者にタワーを貸す専門業者がいる。主要道路や都市部などは、こうしたタワー・オペレーターを利用するとしても、全米をくまなくカバーすることは不可能に近い。では、どうやってカバレッジエリアを拡大するのか。

 察するに、やや奇策ではあるが、フェムトセルに頼ることを同社は検討しているだろう。フェムトセルは、家庭内に設置する小型基地局のことで、米国ではスプリント・ネクステル社が2007年9月からコロラド州デンバーとインディアナ州インディアナポリスで販売を開始した。普通は、携帯基地局の電波が届きにくい家庭内をカバーするために使うフェムトセルだが、ある程度能力をあげれば近隣の携帯ユーザーも利用できる。

 それを狙うかのように、グーグルは2007年7月に英国のフェムトセル・ベンチャーUbiquisys社へ2500万ドル(約28億円)の出資を行っている。この動きからも、フェムトセルの援用は十分に考えられる。ただ、フェムトセルは各家庭のブロードバンドを使って、ネットワークセンターまで信号を送る。そのため、ISPのサービスがダウンすれば、通信ができなくなる。また、携帯ユーザーが利用すれば、フェムトセル設置宅のパソコン通信に圧迫を加えるほか、セキュリティの問題も発生する。

 次に、各基地局からネットワークセンターまでデータを運ぶバックホール(集線網)の確保と整備もグーグルとって大変な苦労となるだろう。携帯データのスピードが伸びるにしたがって、米国のバックホール回線は供給不足気味となっている。特に、グーグルがデータサービスを重視することになれば、大容量のバックホールが必要になるため、供給が逼迫することになるだろう。光ファイバーやCATVのデータ網だけでなく、スプリント・ネクステルやクリアワイヤー社が建設を進めているWiMAX網(7)も集線網として活用することになるだろう。

 それにしても、グーグルの携帯網がAT&Tやベライゾン・ワイヤレスほど安定した携帯電話サービスを提供するのは容易ではない。特に、FCCは上位Cブロックに対して厳しい建設計画を義務づけている。この義務を履行するだけでも、グーグルにとっては大変な苦労となるだろう。

 このように、従来型の携帯網を狙えば、大きな壁が待っている。だからこそ、グーグルはベストエフォート型の無線携帯網として、安くネットワークを建設し、サービスを提供するだろうと筆者は推測するわけだ。つまり、ユーザーは一台目の携帯(プライマリ・ライン)としてAT&Tなどの携帯電話を利用し、「G-Phone」は多彩なサービスを楽しむ2台目の携帯(セカンダリ・ライン)として利用する。そう考えると、先に述べたオープンMobile OS『アンドロイド』も生きてくる。


(7) スプリント・ネクステルとクリアワイヤー社は、2.5GHz帯を使ったWiMAX無線ブロードバンド網を建設している。スプリント・ネクステルは、自社携帯網の集線網に同WiMAX網を利用する予定で、他社にも販売する。

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