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小池良次 米国発、ITトレンド

− 第41回 −

ポスト・インターネットの申し子か
米ネット業界で伸びるソーシャル・ネットワーク・サービス

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新ビジネス・モデルを狙うFacebook

フェースブックの設立者、Zuckerberg氏(Web2.0 EXPOにて)

フェースブックの設立者、Zuckerberg氏
(Web2.0 EXPOにて)

 上場するにせよ、買収されるにせよSNSベンチャーは、収益・成長モデルを確立する重要な時期に入っている。では、どのような収益モデルが模索されているのだろうか。

 SNSサイトの収入は、基本的に広告に依存している。しかし、多くのアナリストは、SNSが広告だけで黒字を出せるネット事業ではないと考えている。SNSの課題は、広告収入の強化とともに、広告以外の収入、つまりプレミアム・サービスなどの収入やEC(電子小売)などによる収入の多角化にあると言える。しかし、多角化は厳しい。たとえば、調査会社In-Stat社が2007年春に出した「Social Networking:Finding Frends Online」と言う調査レポート(4)では、プレミアム・サービスの支払いに同意するユーザーは3割にとどまっている。MySpaceやFacebookなど若年層が成長を支えるSNSにとって、10〜25ドル程度の費用でも、なかなか売れないのが現状だ。

 一方、前述の医療プロフェッショナルSNS『Sermo.com』では、新薬や治療方法に関するディスカッション内容を製薬医療会社に売って収益をあげている。もちろん、メンバーは匿名扱いで、製薬・医療会社にはわからないようになっており、治療現場の生の声をメーカーにフィードバックしている。こうしたプレミアム・サービスはプロフェッショナル系SNSでは有効だろう。

 一方、大手SNSの中では、米国で急成長を続けるFacebookが新世代SNSとして注目を浴びている。同社は新広告システムの導入を準備している。これはユーザーがSNSサイト内で開示している様々な情報をベースに、より関心の高い広告を表示する「ターゲット露出広告」で、早ければ年内にも公開される。

 一方、プレミアム・サービスの育成では、独自API(Application Interface)の導入が柱となっている。これは2007年6月に「プラットフォーム」と言う名称で発表され、メンバーが自由に新しいアプリケーションを開発して、Facebookのユーザーに有料で販売できる。つまり、ユーザーがコンテンツ(User Generated Contents)だけでなく、サービスも開発して提供するUser Generated Service(UGS)と言う発想だ。言葉をかえれば、SNS内でメンバーによるサービス・ベンチャーを育成しようとしている。

 ビデオや音楽ダウンロード販売などの高度な内容もあるが、こうした新サービスのほとんどはシンプルなものだ。人気数字パズルの「数読(Sudoku)」やダイエット・モニター(体重監視の「Thinner」)、好きな場所を地図で共有する「Socialight」など、ちょっとしたアイデアが大半を占めている。しかし、人気は高く、たとえば星座占い(RockYou Inc.)は300万以上のユーザを獲得している。

 メンバーの反響は大きく、プラットフォーム発表後、約1ヶ月でプレミアム・サービスの数は100件から800件に急増している。勢いに乗るFacebookは、プラットフォームを使ったSNS内ベンチャーの育成に力をいれており、総額1000万ドルのベンチャー・ファンドも提供している。

 このUGSの動きはSNSにおけるマーケティング手法に新たな展開をもたらすかも知れない。

 一般に、SNS内では、自社営業サイトへの誘導(リード・ゼネレーション)やマイクロサイト(コミュニティユーザーの形成)と言った一般ホームページのマーケティング手法があまり通用しない。SNSメンバーはコミュニティの外に出ることを好まず、メンバー間でやり取りする小物(バッチと呼ばれるロゴ)や壁紙などがマーケティングに威力を発揮する。ところが、Facebookが育成しているUGSは、広告主が直接、SNSの中に店を構え、サービスや商品を販売できる道をひらく。SNSの外に出たがらないユーザーを気にせず、バッチなどを使ってSNS内でマーケティングを完結できる。FacebookはParakeyというベンチャーを2007年7月に買収したが、これは同社が開発しているWebOS(ブラウザベースのOS)によりプラットフォームを強化することが狙いだった。このFacebookによるUGSの動きはSNS業界で注目を集めており、MySpaceやGoogleが追従の構えを見せている。

 もし、UGSが人気を集めれば、多くの企業がSNS内に流入し、新たなビジネスを展開することになる。これはウィンドウズOSをベースに各社が様々なソフトウェアを開発した状況や、ホームページが登場し大手小売店がインターネット内に電子小売店を次々と開店させた状況にも似ているかもしれない。そうなれば、SNSは新たな収益・成長モデルを確立することになる。




(4)同調査は2006年12月にSNSユーザー583名を抽出してヒヤリングした結果。



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執筆者 : 小池 良次(こいけ りょうじ)
京都外国語大学卒業後、ブラジルのサンパウロ新聞社に入社、社会面・経済面を担当。その後、帰国し民間調査会社に就職、リサーチャーとして技術動向調査、技術出版など300プロジェクト以上を企画運営する。



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