− 第40回 −
次世代モバイルの牽引車は日本?!
インテル社にみる、最近のWiMAX業界
9月18日、米国のメディアは、「米インテル社、KDDIとWiMAXで提携」と一斉に報道した。インテル社は当日、サンフランシスコ市内でIDF(インテル開発者会議)を開催しており、ポール・オッテリーニCEOが集まった記者団を前に華々しく発表したことも、注目が集まる一因だったかも知れない。WiMAX技術は、次世代モバイル技術の本命と言われ続けてきた。しかし、なかなか海外で普及が進まない状況が続き、米国の通信業界には倦怠感が漂っている。そうした中、KDDIのニュースは『日本がWiMAX市場の牽引車になる』との期待感をかき立てた。過去、Wi-Fi(802.11a/b/g)標準搭載ラップトップで大きく業績を伸ばしたインテル社にとって、WiMAXの普及は業績を左右する事業戦略の柱となっている。今回は、インテル社の関連開発をふまえながら、米国で注目を浴びる日本版WiMAXを追ってみたい。
WiMAX網建設が確実となった日本

KDDI陣営への出資を発表するポール・オッテリーニCEO
2007年IDF会議にて筆者撮影
まず、インテルとKDDIの提携について、状況を簡単に整理しておこう。総務省は現在、無線ブロードバンド・システム向けに無線免許(2.5GHz)の交付作業を進めている。これは固定と移動体の2種類があるが、全国一括免許となる移動体免許は、帯域幅30MHzを2事業者に交付することになっている。興味深いことは「3G事業者、あるいは3G事業者の出資比率が3分の1以上の法人は免許申請ができない」という認可条件を付けてNTTドコモやKDDI、ソフトバンクなどの3G事業者を排除したことだ。ちなみに、米国では大手携帯電話会社が主力となってネットワークを建設しており、欧州でも大手電話会社が主体となっている。新規参入の促進を狙った3G事業者排除は、珍しい事例と言えるだろう。
3G事業者排除にともない、KDDIはインテル、JR東日本、京セラ、大和証券、三菱東京UFJの各社と「ワイヤレスブロードバンド企画(株)」を設立し免許申請を行おうとしている。冒頭のKDDI・インテル提携ニュースは、この企画会社にインテルが参加したことを報じたものだ。また、NTTドコモはアッカ・ネットワークスと組んで、ソフトバンクはイー・アクセスが設立した「オープンワイヤレスネットワークス(株)」に参加して免許申請を行う。この3陣営はいずれも、WiMAX(worldwide interoperability for microwave access)による無線ブロードバンド網の建設を標榜している。
なお、PHSデータサービスを展開しているウィルコム社も免許獲得を狙っており、次世代PHS技術を使ってネットワークを構築する予定だ。こうして見ると、総務省の進める同免許(2.5GHz広帯域移動無線アクセスシステムの特定基地局開設計画の認定)では申請4団体のうち、3団体がWiMAX技術を採用している。免許枠は2つあるので、少なくとも1免許はWiMAX陣営が獲得することになる。
この状況を米国から見ると「日本は世界共通周波数の2.5GHzでWiMAXを採用した」ことになる。インテルのポール・オッテリーニCEOも、IDFの基調講演で「(たとえ)KDDIがうまく行かなくとも、NTTドコモなどもWiMAXを採用しており(日本は)確実になった」と言葉を選びながら解説している。また、IDFのWiMAX関連セッションやプレス会議では「日本は光ファイバーで世界をリードしており、WiMAXのネットワーク建設やブロードバンド・ビジネスで米国や欧州よりも先行することは間違いない」と分析する専門家やリサーチャーが相次いだ。インテルを筆頭に、米国のWiMAX陣営では日本への期待感が急速に高まっている。
ウィルコム社が狙う次世代PHS技術は、米国では馴染みがない。しかし、PHSは日本だけでなく中国などでも広く普及している『実証された技術』という点で強みを持っているほか、WiMAX(wave 2)と同じOFDMA(直交周波数分割多重多元接続)技術や、MIMO(多元接続、複数のアンテナを使って高速化する技術)などを取り込もうとしており、米国での浸透度だけでは判断できない。特にウィルコム社は、全国にPHS基地局を持っており、その設備を利用することで比較的低い投資で無線ブロードバンド・サービスを提供できる可能性がある。
こうしたことから日本では、総務省が次世代PHSとWiMAXにそれぞれ1免許づつ割り当てる「国産技術1社、国際技術1社」を狙っているとの噂が飛び交っている。しかし、米国ではそうした事情は知られておらず、まるで日本がWiMAXだけに邁進しているように報道されているのは興味深い。
一方、米国では携帯業界3位のスプリント・ネクステル社がWiMAX網(2.5GHz)の建設を開始している。同社は、2008年25億ドル、2010年までに50億ドルの建設投資を予定しており、2010年の完成時で人口1億人をカバーし、売上げ目標は年間20億ドルから25億ドル程度としている。また、同社は7月、同じWiMAX網を建設しているClearwire社と、建設費の軽減を狙って長期ローミング契約を結ぶ一方、シカゴおよびワシントン・ボルチモア地区での年内サービス開始を狙っている。また、AT&T(同業界トップ)やベライゾン・ワイヤレス(同2位)もWiMAX実験を進めており、スプリントが成功すれば、追従の構えを示している。そのほか、2.5GHz帯で言えば、カナダや台湾が2008年からネットワーク建設に着手するほか、メキシコやブラジルも2009年には建設が始まる予定だ。

各国のWiMAX周波数割り当て 出典:WiMAX Forum











