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小池良次 米国発、ITトレンド

− 第37回 −

これから5年はエンタープライズ2.0時代
企業ネットワークの知的生産性を高めるツールとは

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台頭するアド・ホック・アプリケーション

 こうしてE2.0のブームはブログからWikiへと移ってきたが、今後、伸びてくると期待されてるのが、アド・ホック・アプリケーション(ad hoc application)だ。これはウェブ2.0で注目されるマッシュアップスを企業に持ち込む動きといえる。マッシュアップスとは、様々な団体がネット上に公開しているアプリケーション(WebAPIs)を組み合わせて、ウェブ上で高度なサービスを展開することを指す。グーグルのマッピングやAmazon、eBayの商品検索などが有名だ。また、最近では、会社情報サービスの大手Dan & Bradstreet社が自社会員向けにWebAPIsを提供して成功している。

 こうして便利な機能をインターネット上で公開する企業が増える一方、そうした機能をうまく組み合わせるためのツール整備も始まっている。こうしたツールをマッシュアップ・プラットフォームと呼ぶが、たとえばマイクロソフトは『Popfly』という名称でそうしたツールを開発している。Popflyでは、同社が進めているライブ・サービスを自由に組み合わせて、写真アルバムや地図情報ページなどを構築することができる。また、ヤフーの『pipes』や『teqlo』(teqlo社)なども同様に注目されている。

 このマッシュアップスの概念を企業ネットワークに導入する動きを、アド・ホック・アプリケーションと呼んでいる。これまでの企業アプリケーションは、従業員が与えられたソフトウェアを使いこなすだけだった。一方、アド・ホック・アプリケーションでは、従業員が用意されたモジュール(WebAPIs)を使って報告書やプロジェクト管理システムなどを自由に構築できる。たとえば、作業進行確認のレポートを作成する場合、従業員リストのモジュールを利用して作業に関係する従業員だけがアクセスできるようにしたり、取引先リスト・モジュールとグーグルの地図モジュールを使って地域別代理店リストを自動的にアップデートする、あるいは、アマゾンの商品検索モジュールと自社店舗の価格リスト・モジュールを使って、売れ筋商品の市場価格変化をチェックする….などソフト開発知識やツールがなくても、従業員が自分の必要性にあわせて報告書や管理システムを構築でき、しかも社内で公開することで、全社的な生産性向上や収益拡大に貢献できる。

 たとえば、IBMの『QEDWiki』はWikiをベースにデータベース照会や文書共有、マッシュアプス・アプリなどを組み合わせることができる。また、QEDWikiを追って、ミドルウェアのBEAも『AquaLogicPages』をこの夏に発表する。

 アド・ホック・アプリケーションは、ようやく製品が出回り始めたところで、企業が導入を進めるには、まだ時間がかかると言える。また、ブログやWikiは、情報発信や情報共有のツールと認識できるが、アド・ホック・アプリケーションは、ソフトウェアの利用方法を大きく変革する可能性を持っている。SaaS(Software as a Service)に代表されるアプリケーション・デリバリーの流れにも属しており、ツールというよりプラットフォームと認識するのが正しいだろう。




 モバイル網の整備やVoIP/SIPアプリの導入、災害時回復システムなどのITインフラ投資は、直接的なコストダウンや生産性向上に結びつくので、企業としては導入しやすい。一方、エンタープライズ2.0は「ITインフラ上で知識蓄積と創造的な活動をおこなう」という性格上、効果測定が難しく、なかなか投資しにくい。とはいえ、ウェブ2.0もブーム4年目に入り、経営者層にも広く知れ渡っているため、E2.0ツールの導入は今後弾みがついてゆくと言えるだろう。シスコ・システムズのジョン・チェンバース会長は「これから5年間はE2.0とコラボレーションが勝負」として、米国の生産性は3%から5%成長を遂げるだろうと予測している。

(2007年7月9日公開)


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執筆者 : 小池 良次(こいけ りょうじ)
京都外国語大学卒業後、ブラジルのサンパウロ新聞社に入社、社会面・経済面を担当。その後、帰国し民間調査会社に就職、リサーチャーとして技術動向調査、技術出版など300プロジェクト以上を企画運営する。



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