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小池良次 米国発、ITトレンド

− 第37回 −

これから5年はエンタープライズ2.0時代
企業ネットワークの知的生産性を高めるツールとは

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E2.0におけるWikiブーム

 一方、ハーバード・ビジネス・スクールのアンドリュー・マッカーフィー助教授は、ウェブ2.0ツール群のなかでもWikiを重視する分析をおこなっている。同氏の論文(5)を簡単にまとめると次のようになる。

 企業コミュニケーション・ツールは、個人間の情報交換を狙うタイプと多人数で情報共有を狙うタイプに分かれる。前者をチャンネル(channels)と呼び、電子メールやインスタント・メッセージなどが代表的なツールとなる。このチャンネルは強力なコミュニケーション機能を提供するが、情報の流れは当事者間に限られる。一方、企業ポータルやイントラネットといったウェブ・ベースのツール群をプラットフォーム(platforms)と呼び、広く情報共有ができるが、情報の書き込みは一部のウェブ管理者に依存し、従業員が広く参加することは難しい。

 こうした観点から従来の企業コミュニケーション・ツールを見ると、チャンネルにせよプラットフォームにせよ、仕事を進める上で有効だが、従業員それぞれが経験し蓄えてきたノウハウや知識を共有するには不適切なツールといえる。

 一方、ノウハウの蓄積や共有にはノレッジ・マネージメント・ツール(KMT)と呼ばれるデータベース・システムが利用されてきた。これはノウハウや問題解決手法をデータベースに蓄積して広く従業員に公開するが、情報の入力は専門分野を持つエキスパートに限られ、対象となるノウハウも特殊な専門分野に限られる傾向が強かった。そのためKMTは広く普及せず、一般企業にとってノウハウの蓄積と共有を簡単にできるツールが不足していた。

 この従来欠けていた「使いやすいKMT機能」を、マッカーフィー助教授はWikiに見いだしている。つまり、ブログではなくWikiに重きをおく点が、同助教授のおもしろさと言える。また、企業版Wikiとしてもっとも有名な導入事例は、投資銀行のDrKW(Dresder Kleinwert Wasserstein)のケースだが、これはマッカーフィー助教授が詳細な調査をおこない、論文として発表しているためだ。

 DrKW社は最初、ソーシャルテキスト(Socialtext)というWikiをいくつかのグループで導入したが、従業員の人気がたかく、予想以上のスピードで社内に広まった。そのため同社は独自のwikiを立ち上げ、いまや従業員5,000名が参加、ページ数は6,000を超え、毎日のヒット数は10万回を超えている。(2006年10月)

ウェブ2.0の代表的なツール

 このほか、ティー・ロー・プライス社(T. Rowe Price、個人向け投資管理会社)もE2.0ツールの導入で成果をあげている。同社は、3490億ドルの個人資産を管理しているが、納税シーズンになると多種多様な節税アドバイスで多忙を極める。また、毎年変わる納税規則や様々な金融商品に関する知識をアップデートすることは、税務・老後資産管理グループにとって、重要だが難しい。同社は、Wikiを軸にブログやインスタント・メッセージングを組み合わせた独自のE2.0プラットフォームを構築して、税務知識の蓄積と運用の効率化をはかっている。現在、同Wikiのユーザーは1500名を超え、税務情報の更新は従来、最低24時間は掛かっていたが、現在は30分程度で終了するようになっている。また、ユーザーの問い合わせ電話でも、1件あたり数分の時間短縮ができている。

 このほか、ビジネスウィーク誌の記事(6)によれば、携帯端末の最大手ノキア(Nokia)社は当初、従業員のスケジュール管理やプロジェクト管理にコラボレーション・ツールを導入して管理していた。しかし、2004年後半、ヘルシンキの研究センターが設計プロジェクト問題を解決するため独自のWikiを立ち上げ成功した。これを切っ掛けに様々な従業員のアイデアや情報交換に適した社内Wikiに乗り換える従業員が増え、現在は2割(1万3600人)以上に達している。一方、チップ大手のインテル社も独自のWiki『Intelpedia』を構築し、全社員が利用している。同Wikiは5000ページ以上のコンテンツを持ち、累積閲覧数は1億3500万回に達している。




(5)出典:MITSloan Management Review "Enterprise 2.0: The Dawn of Emergent Collaboration" by Andrew P. McAfee, Associate Professor, Harvard Business School

(6)出典:Business Week Special report,"Corporate Wikis Go Viral"by Dan Carlin, 3/12/2007


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執筆者 : 小池 良次(こいけ りょうじ)
京都外国語大学卒業後、ブラジルのサンパウロ新聞社に入社、社会面・経済面を担当。その後、帰国し民間調査会社に就職、リサーチャーとして技術動向調査、技術出版など300プロジェクト以上を企画運営する。



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