− 第33回 −
ワイヤレス・ブロードバンドや投稿ビデオに湧いた今年ももうおわり
2006年米国ネット・通信業界の総括と来年の展望
経済環境に恵まれた2006年は、米国のハイテク業界にとっても良い年だった。石油高騰で先行き不安が広がった時期があるとはいえ、グーグルは株価を500ドル台に乗せ、秋口には広告・コンテンツ業界を中心にバブル期を彷彿(ほうふつ)させるなど、全体としてネット業界は好調だった。また、ブロードバンドの普及も進み、激しい再編劇に揺れた通信業界は、携帯電話を中心に好決算が続いた。その一方で、ネットワークの中立性問題では、ネット大手と通信会社が対立を示すなどの波乱もあった。今回は、米国のネット・通信業界を中心に今年の総括と来年の展望をつづってみたい。
成長鈍化に直面した携帯業界
今年1年の米国を見渡したとき、まず目を引くのがワイヤレス・ブロードバンドの躍進だろう。携帯は3Gから3.5Gへとアップグレードを進める一方、WiMAXなどの新サービス網も建設がはじまった。では、携帯業界の状況から概観してみよう。
米国の人口は、今年3億人に達している。一方、携帯加入者数は2006年6月末で2億1942万人で、概算すると携帯所有者の人口比は約73.1%になる。日本に比べると、人口比でまだ余裕があるとはいえ、新規加入者の伸びは2005年をピークに鈍っている。また、年間の業界売り上げも前年比8.99%増の1,183億ドル(2006年推定、約13兆9600億円)で、2005年の増加率13.6%から落ちている。月間平均利用額も前年から22セント下がって、49ドル30セント(約5,820円)になったほか、平均通話時間も3.04分(2005年)から2.94分に減っている。(いずれもCTIAの発表数字)
このように、2006年の米国携帯業界は明らかに“成長の鈍化”に直面した年だった。
そうした環境を反映し、携帯業界はトップを走るシンギュラー・ワイヤレス(5,867万加入、9月末)と、それを追うベライゾン・ワイヤレス(5,675万加入、同)の2強時代が定着した。通話エリアの広さ、顧客サービスの良さなど優れたサービスで顧客を集めるベライゾンの強さは変わらない。しかし、シンギュラーも買収(2004年2月)したAT&Tワイヤレスのネットワーク統合を10月に完了し、第3.5世代ネットワークの整備に本腰を入れる一方、コンテンツ面でも充実をはかり、トップの座を維持しようとしている。

第3世代投資では、ベライゾンとスプリント・ネクステル(業界3位)が、そろってEV-DOの全米展開を終え、より高速なEV-DO Rev.A(3.5G)へとアップグレードを開始した。これは日本のKDDIと比較しても、約半年ほどしか遅れていない。面積にして26倍の国土を持つ米国にしては、素早い動きと言えるだろう。一方、シンギュラーもHSDPAと呼ばれる3.5Gネットワークの整備を進めているが、これも北日本から同規格の整備を進めているNTTドコモとほぼ同じ歩調といえる。
2006年を見渡すと、携帯コンテンツでは見劣りする米国だが、次世代ネットワーク整備では、日米で差がなくなっている。
トップ2社の激しい競争にともない、第3位のスプリント・ネクステルは徐々に引き離されている。同社は、バージンやディズニーなどネットワークを持たない事業者に携帯サービスを提供するMVNO(仮想携帯ネットワーク事業者)サービスを展開し、少しでも加入者を伸ばそうとしているが、2強の壁を打ち破るには至っていない。日本でもソフトバンク・モバイルがMVNO戦略を模索しており、日米でトップ・グループの動きが妙に似通っているのは興味深い。
携帯コンテンツでは、アップルのiTune/iPodを追いかけて音楽携帯を各社が投入する一方、MobiTVを筆頭とするダウンロード・ビデオも話題を呼んだ。しかし、こうしたコンテンツ充実にもかかわらず月額平均使用料は伸び悩んでいる。
勝手サイトなどを認めず、コンテンツを囲い込む米国流の『ウォールド・ガーデン(Walled Gardens)』戦略は難しい局面に入っている。











