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小池良次 米国発、ITトレンド

− 第27回 −

マイクロソフト研究 ビル・ゲイツ氏引退後、
同社はどこへ向かっているのか

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 6月15日、ビル・ゲイツ会長は2008年に引退することを予告し、ハイテク業界に大きな波紋をあたえた。米国のメディアは、パソコン時代を切り開いてきた同氏の歩みを紹介する一方、関係者からはゲイツ会長を失う同社への懸念が表明された。それは同社が進めている多角化が順調に進まず、いまだWindowsとOfficeに収益を依存している点などについてのものだった。同社の多角化はめざましく、ゲームやIPTVなどのホーム・エンタテインメント、そしてMSNの検索広告ビジネスなど多岐にわたる。そのため、パソコン一本槍だった時代にくらべ、その方向性は複雑化している。パソコンからネットワークへと時代が向かう現在、同社はどこへ進んでゆくのか。今回は、脱ビル・ゲイツを狙うマイクロソフトの動向を追ってみたい。

マイクロソフトを支える革新性

 6月のゲイツ会長引退予告で興味深いことが起こった。ニュースの取材が経営トップのスティーブ・バルマーCEO(最高経営責任者)ではなく、ゲイツ会長の役職を引き継ぐレイ・オジー氏に殺到したことだ。なぜ、CEO(最高経営責任者)よりも、オジー氏に関係者の注目が集まったのだろうか。まず、この点を考えてみよう。

 マイクロソフトは、ゲイツ会長と表裏一体で伸びてきた。言葉をかえれば、ゲイツ会長はパソコン時代をいち早く予見し、世界を変えた希有なベンチャー経営者だが、それゆえに世界最大のソフトウェア会社は同会長の『革新性(イノベーション)』に依存し続けてきた。ゲイツ会長にとってパソコン時代を切り開いた1970年代から80年代は、時代を見通せる輝きに満ちた人生だったに違いない。一方、インターネット登場後は、ネットスケープ社とのなりふり構わぬブラウザ戦争や10年を越える独禁裁判、そしてヤフーやグーグルに追従する昨今と、苦しい時を過ごしてきた。これをウォール街や業界メディアはゲイツ会長における『革新性のかげり』ととらえ、マイクロソフトの将来に対する不安材料と考えていた。

 実際、ゲイツ会長の存在感は以前ほどではない。たとえば、いまはなくなってしまったCOMDEXで、ゲイツ会長は毎年「基調講演」を続けていた。年末におこなわれる同スピーチは1年間の総括と来年の展望をまとめるものだが、先見性に富み、業界の方向性を探る重要な行事として、毎年開演の2〜3時間前から長蛇の列ができるほどだった。

2003年のコムデックスで基調講演をするビル・ゲイツ会長  (撮影:筆者)

 ところが、今世紀に入ってからの講演は、得意のパソコン話がへり、ネットワーク技術について多くの時間を割いていながら、説得力に欠ける雰囲気がただよっていた。これはパソコンからインターネットへ、そして『分散コンピューティング』の時代へと業界が進み、マイクロソフトが多角化を本格化させる時期と一致する。

 マイクロソフトのようなハイテク企業は、革新性をもった経営者がいなければ成長を続けてゆけない。同じハイテクでも、設備に依存する放送や通信事業などとは違う。だからこそCEO(最高経営責任者)という役職が要求する日々の経営実務は、2000年にスティーブ・バルマー氏へ譲ったが、以後もゲイツ会長はCSA(chief software architect、主席ソフトウェア設計者)として戦略面を切り盛りしてきた。その一方で、マイクロソフトの将来を技術面で支える後継者探しに頭を悩ませてきた。

 こうした背景から引退予告では、経営トップのバルマーCEOよりも、後継役に指名されたオジー氏に注目が集まったわけだ。つまり、オジー氏の『革新性』にマイクロソフトの将来を託したと言ってもよいだろう。特に、オジー氏はマイクロソフトに入社して1年ほどしか経っていない。にもかかわらず、ゲイツ会長の後継者として指名されたことは、オジー氏をいかに同社が必要としているかを内外に示すこととなった。

 ちなみに、オジー氏と同時に、クレイグ・マンディ氏もゲイツ会長の後継としてchief research & strategy officerに指名されている。後述するとおりオジー氏がビジョナリストとしての能力を期待されている一方、マンディ氏は、その役職が示すとおり研究開発から全体の製品ラインナップを構築する、より実務的な側面を担っている。


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