− 第21回 −
波紋広がるディズニーのピクサー買収
激動時代に突入したCGアニメーション業界
新ディズニーはどこへゆく
ピクサー社は、現在、 “カーズ(Cars)”の制作を続けている。これは、ディズニーとの配給契約で最後の作品となる。また、ディズニー傘下の第一作となる“トイ・ストーリー3”のスクリプトづくりも始まった。
一方、ディズニーは、ライオン・キング以来の伝統的なアニメーション制作グループを徐々に清算し、4年ほど前からCGアニメーション・グループを育成してきた。同CGグループは、昨年、第1作の“チキン・リトル”を公開し、士気が上がっていたところで、ピクサーと合流がきまった。そのため、同CGグループは微妙な立場に立たされている。
また、 同CGグループは“チキン・リトル”以降の制作で苦労している。次作、“ミート・ザ・ロビンソンズ(Meet the Robinsons)”は、なんとか2006年末に間に合わせようとしているが、次々作の“アメリカン・ドッグ(American Dog)”は2008年初夏にずれ、その次の“ラパンゼル・アンブライデド(Rapunzel Unbraided)”は、2009年初夏に遅れるもようだ。
こうした難題の解決に当たるのが、前述のジョン・ラスター氏だ。同氏はディズニー・アニメーション・スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサー兼ウォルト・ディズニー・イメージエンジニアリングのプリシパル・クリエイティブ・アドバイザーに就任する。
ラスター氏が、既存の制作グループを整理し、いかに早く制作スケジュールを軌道に載せるかは、注目されるところだが、それは容易なことではない。既に供給過剰となっている同業界だけに、買収を機に作品の制作数を適正レベルにしなければならない。どの作品を整理対象にするかは、ラスター氏の指導力が問われるだろう。いま、候補として噂されているのは“トイ・ストーリー3”だ。ラスター氏自身が、同作品の制作にもともと乗り気でなかったためだ。
一方、今回の買収で、スティーブ・ジョブス氏がディズニーの筆頭個人株主になり、ボード・メンバーに就任したことも注目を集めている。同氏は、ピクサーとアップルのトップを兼任して、しかも両社を大成功に導いてきた。今回はディズニーとアップルが、ジョブスという糸で結ばれ、関係者は『ジョブス・マジック』への期待をまたもや高めている。ディズニーは、傘下にESPN(最大のスポーツ専門TVCH)やABC放送(4大TVネットワークの一つ)を持っている。アップルはiTune、iPodでコンテンツ配信ビジネスへと傾倒している。シリコンバレーでは、ディズニーの支援を得て、アップルのデジタル・コンテンツ・ビジネスに弾みがつくと見ている。一方、ディズニーの株主は、ジョブス氏を得て同社がクリエイティブ・ハウスとして競争力を回復することを期待している。
今後、ますます厳しくなるCGアニメ業界で、新生ディズニーはかつての隆盛をとりもどせるかは、予断できない。とはいえ、ピクサー買収は、激動の時代の幕開けを告げる重要なのろしであることは間違いない。こうして、同買収は、CGアニメ業界だけでなく、ハリウッドやシリコンバレーにも、大きな波紋を広げている。
(2006年2月20日公開)

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執筆者 : 小池 良次(こいけ りょうじ)
京都外国語大学卒業後、ブラジルのサンパウロ新聞社に入社、社会面・経済面を担当。その後、帰国し民間調査会社に就職、リサーチャーとして技術動向調査、技術出版など300プロジェクト以上を企画運営する。









