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小池良次 米国発、ITトレンド

− 第20回 −

AOL騒動の顛末に見る
米ネットビジネスの光と陰

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 2001年、アメリカ・オンライン(AOL)とタイムワーナーの合併は、米国のメディア業界を震撼させた。新生AOL Time Warnerの時価総額は約3500億ドル(約38兆円)に達し、放送と通信を傘下におく巨大グループ企業の出現に世間は騒いだ。だが、その後の同社は凋落(ちょうらく)の道をたどる。ネットの業績不振で株価は急落し、不正会計疑惑が追い打ちをかけた。タイムワーナー・グループの大黒柱から、AOLは一転、ネット業界の敗者とまで言われた。そんな同社に昨年、突然スポットライトが集まった。AOLを巡ってマイクロソフト、グーグル、コムキャスト、ヤフーが熾烈な駆け引きを展開したからだ。そしてクリスマス直前、失望するマイクロソフトを横目に、タイムワーナーはグーグルから10億ドル(約1170億円)の出資を獲得し、AOL部門の再生に乗り出した。いま、米国のネットビジネスは長い低迷期を脱し、新たな成長時代を迎えようとしている。今回は、AOL騒動の顛末を追いながら、活力を取り戻した米国ネットビジネスの光と陰を追ってみよう。

MSNとアメリカ・オンラインが合併する?

 日本では、ほとんど紹介されていないが、昨年の米ネット業界はAOLを軸に水面下で激しい合併・提携交渉に明け暮れていた。ちなみに、2001年に合併した当時は、社名をAOLタイムワーナーとしていたが、その後AOLの名前がはずれた。今のAOLはタイムワーナーのいち事業部となっている。同じ会社だが、事業部のことをAOLと呼び、役員会を中心とする経営陣の話では、タイムワーナーと書いている。ではまず、AOL騒動のあらましを紹介してみよう。

 ことの発端は、2005年1月、マイクロソフトが自社開発した検索エンジンの事前公開にAOLの重役を招待したことから始まった。そこでマイクロソフトは、AOLにジョイント・ベンチャーの意向をうちあける。マイクロソフトの狙いは、検索エンジンをグーグルからマイクロソフトに切り替えるさせることにあった。検索広告のトップを走るグーグルは、トラフィックの約10%をAOLから得ており、マイクロソフトがAOLと手を組むことができれば、グーグルに大きな打撃を与えられる。しかも、グーグルとAOLの提携契約は2006年に切れる。しかし、検索広告ビジネスでは新参のマイクロソフトが、尋常に交渉してもグーグルに勝てる可能性は低い。そこでマイクロソフトはジョイント・ベンチャーの話を持ち出して、交渉の場にAOLを引っ張り出そうとした。必要なら、大型出資をいとわないという話にAOLは乗ってきた。

 ジョイント・ベンチャーの話はどんどん拡大し、春先にはAOL部門とMSN(マイクロソフトネットワーク)部門を合併する構想へと発展していった。 AOLは、会員数約2000万を抱える米国最大のISPだが、その大部分は旧世代のダイヤルアップ会員で占められている。MSNは260万会員を抱えているが、ここもブロードバンドへの対応がおくれ、ダイヤルアップが大部分を占める。コンテンツや検索サービスを強化しなければならない点も同じで、両社は似たもの同士というわけだ。

 しかし、AOLとMSNの合併話が現実味をおびるにつれ、タイムワーナー側は合弁事業が独占禁止法に触れるのではないかと心配しだした。AOLとMSNが合併すれば、アースリンクやネットゼロなど大手ISPに大きな影響を与える。独禁問題を解決する手段として、急浮上してきたのが両社のコンテンツ部門だけを合併させる案だった。後で詳しく触れるが、そのころAOLの現場サイドでは、コンテンツのオープン化による広告事業の拡大を準備していた。一方、マイクロソフトは自社検索エンジンをてこに広告事業の拡大を狙っていた。ISP部門だけを分離させれば、独禁法を回避できる。

 7月に入ると、投資銀行のセミナーを隠れ蓑に、タイムワーナーのリチャード・パーソンズ会長とマイクロソフトのビル・ゲイツ会長が密かに会談し、9月にはパーソンズ会長とスティーブ・バルマーMS最高経営責任者との会談もシカゴ空港で行われた。(注1)こうして両社の合弁計画は煮詰まってゆく。しかし、大きな問題が持ち上がった。タイムワーナーは、現場サイドにコンテンツとISP事業の分離を密かに打診したが、両者の分離は難しいことが判明した。たとえば、AOLの広告収入は有料会員からのトラフィック(約半分)に依存している。コンテンツだけを分離すれば、有料会員は激減し、AOLコンテンツの訪問客は減る。当然、広告収入は減る。

 また、これまでマイクロソフトはMSNの各種サービスをオフィス製品やウィンドウズOSと連携させることで、拡大をはかってきた。もし、合併すれば、こうしたバンドル(抱き合わせ)戦略をどうするかも大きな問題となった。継続すれば、AOLのコンテンツがマイクロソフトの製品やOS戦略に大きく左右されてしまう。AOLの経営権を確保したいタイムワーナーにとって、こうした状況は望ましくない。一方、バンドル戦略を放棄すれば、MSNサービスの強みは大きく損なわれ、合弁事業にとって大きな痛手となる。大きな壁にぶつかった両社は、再開を約束し、いったん交渉中断した。

AOL騒動の流れ
(図をクリックすると拡大して表示されます)


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