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小池良次 米国発、ITトレンド

− 第19回 −

いよいよ議論が始まった第4世代ネットワーク
それはもはや携帯電話網ではないのか?

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地域通信網の変化とメッシュ・ネットワーク

 

 現在、市内電話と言えば、固定電話をさすことが当たり前となっている。しかし、2012年には、大きな変化が訪れているかもしれない。現在、日本や米国では固定電話が年率5%前後のペースで減っている。これは10年でユーザーが約4割へる計算だ。電話は、“会社や自宅で共有するもの”から“ひとりひとりが持ち歩くもの”へと移り変わっている。近い将来、固定電話は加入者が減って、現在のような安い料金でサービスすることが無理になる。固定電話を申し込むと「お宅に電話をつけるためには電柱を5本ほど立てなければなりません。ですから、電話代は月額1万円以上かかりますよ」なんて言われる時代がやってくるだろう。

ネットワーク・トポロジー
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 そうした時代、第4世代ネットワークは、地域通信網の主役になる。その一方で、ブロードバンド・ワイヤレスのスピードはますます速くなり、パケットあたりの単価はどんどん下がってゆく。こうした薄利多売の通信サービス時代になれば、通信網を効率よく建設・運営することがますます重要になる。つまり、第4 世代ネットワークは、建設や維持運営が安く、しかも必要に応じて拡張や縮小ができる柔軟性が必要になる。そこで注目を集めているのが、メッシュ・ネットワーク技術だ。

携帯データ、ブロードバンド・ワイヤレスランドスケープ
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 やや技術的になるが、メッシュについて簡単に説明してみよう。メッシュには様々なタイプがあるが、基本となるのがクライアント・メッシュ(アドホック網とも呼ぶ)方式だ。これは各端末がクライアントとアクセスポイントを兼ねる方式で、事前に集線(アクセス・ポイント)網を建設する必要がなく、需要に応じて自らネットワークが拡大して行くため、投資コストが“低く”抑えられる。たとえば、コンサートホールや競技場などの大空間構造物では、無線LANの基地局が中央部までカバーできない。と言って、中央にアンテナを立てるわけにもゆかない。こうした時、壁に近いアンテナから先は、クライアント・メッシュでラップトップ同士を結べば、簡単にネットワークが構築できる。

 また、状況に応じて経路を定めるので、一部のクライアントが障害を受けてもネットワーク全体への影響は低い。こうしたメリットから、国防総省は戦地での展開を狙ってクライアント・メッシュの研究、実用化に長年力を入れてきた。しかし、民間向けのクライアント・メッシュ利用は、実用化が遅々として進まなかった。技術的な難題として、経路制御や負荷分散、大容量化、QoS(通信品質)の確保などがあげられる。アドホック・メッシュでは端末それぞれが、位置や容量などの情報を交換しなければならない。負荷分散やネットワーク全体としてのスループット確保、負荷分散など処理を行って経路を決定して行く。そのため端末CPUに膨大な処理を強いる一方、遅延問題などに悩まされてきた。

 現在実用化されているメッシュは、ストラクチャード・メッシュと呼ばれるタイプだ。これは、集線網を構築するためだけにメッシュを使い、クライアントはアクセス・ポイントを兼ねない方式だ。この方式では、基地局の設置場所などに制限が加わるが、反面、経路制御や負荷分散などの問題を改善できる。ラスベガス市など多くの地方自治体では、警察無線などの公共無線網にメッシュを利用しだしているが、ストラクチャード・メッシュによって実現されたと言っても良い。このストラクチャード・メッシュをさらに発展させて、第4世代ネットワークに活用しようと言う研究が進んでいる。

 たとえば、大手通信事業者のノーテル・ネットワークスでは、メッシュ・ネットワークをベースにした地域通信網のあり方を研究している。現在の携帯電話網は、ハブ・アンド・スポーク方式と呼ばれ、無線信号を受発信する基地局を有線ネットワーク(集線網)でつないでいる。たとえば、ニューヨークのマンハッタン島をカバーするために、ベライゾン・ワイヤレスは1000局を超える基地局を構築し、巨大な集線網を運営している。こうした現在の設計方式(ハブ・アンド・スポーク)では、コストが高く、機動性に乏しい。サービス単価がどんどん安くなる第4世代時代には適さない。そこで基地局が各端末と交信するだけでなく、相互に無線で信号をやりとりすれば、硬直的な集線網を減らすことができる。これがメッシュ・ネットワークを使う理由だ。これは、前述のクライアント・メッシュのように、網の柔軟さや障害に強いと言ったことよりも、経済性を第一にしたメッシュ利用といえる。

 第4世代ネットワークにメッシュを活用すれば、需要に応じて基地局を増やしたり減らしたりすることができる。つまり、薄利多売の通信サービス時代にも適応できるネットワークの建設・運営が可能になるというわけだ。


 今回は、コンピュータ業界から見た将来像に焦点をあてながら、米国の通信業界が遠い将来と言われる第4世代ネットワークに向かって、様々な提案と研究を繰り返している姿を考察してみた。とはいえ、無線網の広域性やビジネス市場の巨大さ、そして莫大な投資を考えれば、次世代無線網の主役は、当面、携帯電話に違いない。コンピュータ業界が考えるように、第4世代ネットワークが本当に“携帯離れ”できるかどうかは「まだわからない」のが筆者の本音だ。しかし、これからの10年を「インターネット・イン・ザ・エアー(インターネットの無線時代)」と呼んでも間違いはないだろう。


(2006年1月16日公開)



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執筆者 : 小池 良次(こいけ りょうじ)
京都外国語大学卒業後、ブラジルのサンパウロ新聞社に入社、社会面・経済面を担当。その後、帰国し民間調査会社に就職、リサーチャーとして技術動向調査、技術出版など300プロジェクト以上を企画運営する。



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