− 第19回 −
いよいよ議論が始まった第4世代ネットワーク
それはもはや携帯電話網ではないのか?
私たちの生活になくてはならない携帯電話。その将来はいったいどのようになるのだろうか。振り返れば、携帯電話はアナログの第1世代からデジタルの第2 世代をへて、ホームページやメールが使える第3世代へと発展してきた。そうしたなか、気の早い米国の通信業界は、第4世代(4G)の実現に向けて活発な議論を始めている。もちろん、第4世代は、実用化が2012年以降と遠い将来の話。そんな未来に向かって通信技術者は、どんな夢を描いているのだろうか。今回は、4Gをキーワードに、未来の無線ネットワークを追ってみよう。
いったい、データ速度はどこまで速くなるのだろうか?
私たちが日頃使っている3G携帯のデータ・スピードは、やや甘めに見て、日本がだいたい500Kbps程度、米国で現在整備が進んでいるEV- DO方式でも400Kbps程度といえる。これは簡単な電話会議が利用できるスピードだ。そして、2008年ごろから、より速い3.5Gへと進んでゆく。その実効スピードは8Mbps程度(HSDPA方式など)というのが業界の考え方だ。
では、第4世代ネットワークが狙っているスピードはどのくらいだろうか。それは1Gbps(ピーク時)。現在の2000倍と言う桁外れの速さだ。もちろん、携帯ビジネスに詳しい方は、この数字を見て頭をひねるに違いない。第4世代の実用化が2012年以後とはいえ、携帯電話の内蔵チップが1Gbpsもの高速通信に対応するとは“にわかに”信じがたいからだ。
タネを明かそう。このスピードは携帯電話ではなく、 2012年頃のラップトップ・パソコンを想定した数字だ。このスピードが示すように、4Gは携帯端末だけでなく、コンピュータやPDA、あるいはハンディカムと言った家電機器さえも利用することを想定している。もちろん、1Gbps はピーク時の話。端末レベルで実効スピードは数百Mbpsだが、それでもハイディフィニッション画像を使ったテレビ会議や3Dタイプの対戦ゲームなどに対応できる。

無線サービスの発展方向(推定)
これは現在の“音声+データ”という携帯電話の枠を遙かに飛び越えた考え方だ。つまり、第4世代ネットワークは「もはや携帯電話網ではなくなる?」ことを示している。これが米国の4G議論で、もっとも興味深い点といえよう。
正確に言えば、これはコンピュータ業界のめざす次世代ブロードバンド・ワイヤレスの姿で、彼らは将来、携帯電話とブロードバンド・ワイヤレス(Wi-Fi など)が融合すると考えている。だからこそ、コンピュータが必要とする数百Mbpsの高速サービスが、どこでもできる環境とネットワークを狙っているわけだ。一方、これだけ速いモバイルネットワークが実現できれば、実質64Kbpsしか使わない音声通話は、ネットアプリケーションの一部になってしまう。
ただ、こうした未来像は、現在の携帯電話事業者にとっては、必ずしも好ましい姿ではない。ビジネスの柱である音声通話が収益力をなくすからだ。しかし、固定電話が徐々にインターネット電話に浸食されているように、将来、携帯音声もモバイル・インターネット電話(VoWi-FiやVoWiMAXなど)に浸食を受けることになる。VoWi-Fi(ボーワイファイ)は、私たちが日頃コンピュータに利用している無線LANを使って電話をつなぐやり方だ。社内専用の無線携帯電話と思えばよい。また、VoWiMAX(ボーワイマックス)は、高速大出力のWiMAX規格を使った無線携帯電話で、近い将来、米国の田舎にゆくと数十メーターのタワーを建てて、テレビとデータ接続、固定電話サービスをWiMAXで提供する姿が増えると言われている。
無線ネットワークが多様化し、より知的になればなるほど、携帯電話だけが音声端末という訳にはゆかなくなる。つまり、携帯が持つ「音声+データ」のデータ側でも通話サービスを展開する事業者が出てきて、携帯事業者を悩ますことになるだろう。すでに、その兆候はでている。たとえば、タイムワーナー・ケーブルやコムキャストなど米CATV大手4社は、2005年11月に携帯電話の再販を始めることで合意した。その一社、コックス・コミュニケーションズは、自社のインターネット電話(家庭側)と携帯電話(出先)の通話は無料にする。もちろん、これはインターネット電話で両者を結ぶわけだが、こうした携帯を舞台とした無料電話サービスは、徐々に増えてゆくだろう。

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執筆者 : 小池 良次(こいけ りょうじ)
京都外国語大学卒業後、ブラジルのサンパウロ新聞社に入社、社会面・経済面を担当。その後、帰国し民間調査会社に就職、リサーチャーとして技術動向調査、技術出版など300プロジェクト以上を企画運営する。









