IT基盤最適化を基本から考える
株式会社テックバイザージェイピー(TVJP)
代表取締役
(元ガートナー・ジャパンリサーチ バイスプレジデント)
栗原 潔氏
IT基盤最適化の重要性

株式会社テックバイザージェイピー(TVJP)
代表取締役
(元ガートナー・ジャパンリサーチ バイスプレジデント)
栗原 潔 氏
東京大学工学部卒業。
米MIT計算機科学科修士課程修了。日本IBM、ガートナージャパンを経て、2005年6月より独立し現職。
得意分野はエンタープライズ・システム、無線タグ、ビジネスインテリジェンス、知財関係等。弁理士。技術士(情報工学)。
最初に、基本に立ち返ってなぜ企業にとってIT基盤(業務プログラムを稼動するためのハードウェアやソフトウェアの総称)の最適化が重要であるかを考えてみましょう。経済産業省の調査(情報通信白書平成17年版)によれば、日本の民間企業の設備投資額において情報通信関連投資が占める割合はおよそ4分の1です。これだけでも、IT基盤の最適化の重要性は高いと言えるでしょう。
さらに、IT基盤最適化によるビジネスへの影響も考える必要があります。企業におけるほとんどのビジネス・プロセス(業務手順)がITを前提としたものになっています。効率的なビジネス・プロセスを実現するためには、効率的な業務アプリケーションが必要であり、効率的な業務アプリケーションを実現するためには効率的なIT基盤が必要です(図1参照)。効率的なIT基盤があれば、自動的に企業の競争力が向上するわけではありませんが、効率的なIT基盤なしに今日の激しい競合環境で生き残っていくことは困難であると言ってよいでしょう。つまり、IT基盤最適化はビジネスの成功の十分条件ではないですが必要条件ではあるということです。
IT基盤はITによるビジネス上の効果発揮の大前提(図1)
その意味で、IT基盤の最適化はあらゆる企業が取り組むべき課題であり、また、最適化により得られる効果も大きいと言えます。
IT基盤の最適化で何を目指すのか?
では、IT基盤の最適化では具体的に何を目標にすべきでしょうか?コストの削減というのは誰もが最初に思いつく重要な目標です。もちろん、単にコストの削減だけを行って、サービス・レベルが悪化してしまったのでは意味がありませんので、代表的なサービス・レベルの指標である性能そして連続運用性の向上も重要な目標となることは言うまでもありません。
ここで、IT基盤のコストを考える場合には、単にハードやソフトなどの物のコストだけではなく、運用管理のための人のコストを加えた総合保有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)で考えることが重要です。TCOの内訳を見ると人のコストの方が物のコストよりもはるかに大きいことが通常なので、コストを下げるためには人のコストを下げるための運用管理効率化を実施することが効果が高いと言えます。
その意味で、アウトソーシングが人的コストを下げるための手段として一般的になっているのは当然のことです。適切な領域をアウトソースすることでTCO削減を達成できた成功事例は数多く存在します。その一方でアウトソースにより期待されたほどの効果が得られないケースもあります。特に、何から何までアウトソースするという考え方では、肝心のサービス・レベルの低下を招いたり、企業がITの戦略的活用の当事者能力を失ってしまう結果を招く等の弊害の方が大きくなってしまう危険性があります。領域を選んでアウトソースを活用する選択的アウトソーシングの考え方が重要でしょう。
上記のコスト削減、性能向上、可用性向上と言う要件に加えて、最近では特に俊敏性(アジリティ)向上という要素への注目度が高まっています。俊敏性とは環境の変化に対応するスピードのことです。たとえば、業務が急速に拡大していくときにはIT基盤もそれにあわせて拡張可能でなければなりませんし、パートナー企業と組んで新しいビジネス・モデルを実現しようとする時には、IT基盤が他社との有機的連携が容易な設計となっている必要があります。ここでIT基盤の変化対応のスピード、すなわち俊敏性が重要となってくるわけです。IT基盤の俊敏性向上とはIT側の都合によりビジネスの足が引っ張られる状況をなくすことである、と言い換えることもできるでしょう。










