− 第17回 −
ベッドサイドで患者と注射薬を照合
電子タグを活用した安全管理システム(2007年9月25日公開)
看護師は安心して注射処置を実施
「電子タグによるベッドサイド安全管理システム」は2004年11月から全面稼働を実施している。その仕組みは、まず電子カルテシステムの情報を基に薬剤部門が注射薬を用意すると共に点滴のパックに電子タグを貼り付けて病棟の看護部門に渡す。看護部門では、患者への投薬前に注射液が正しいものかどうかをダブルチェック。そして病室のベッドサイドでは、患者のリストバンド、注射薬、看護師のネームカードの各電子タグをPDAで読み取り、その情報は無線LANを介して電子カルテシステムへリアルタイムに送信される。患者と注射薬の組み合わせが正しければ、PDAでの実施入力が可能になり、いつ、誰が、誰に、どの注射を実施したのか、といった情報が電子カルテシステムに記録される。組み合わせに誤りがあった場合、PDAに警告を表示し、薬剤の取り違え事故を未然に防止する。また、ペースメーカーを使用している患者に対しては、電子カルテシステムに登録しておくことにより、看護師がPDAで情報を読み取る際に、電子タグと併用されるバーコードに自動的に切り替わるようにしている。ちなみに、電波による誤動作が懸念される医療機器が多数設置されている集中治療室などでもバーコードで照合する。
電子タグの導入効果について、近藤氏は「インパクトは大きい」と強調する。同病院では610床、約350人の看護師が交代で業務を行っている。1回の注射行為に対してバーコード認証では平均63秒の時間を要するが、電子タグでは約30秒に短縮される。「この30秒を病院全体の注射行為に換算すると、1カ月で数百時間にもなります。その分、看護師が患者さんと話す余裕が生まれるなど、コストには換算できない効果があります」と述べる。また、薬剤関連のインシデント件数は、導入前の3カ月平均で369件から、導入後は245件に減少(ベッドサイド以外も含む)。患者と薬剤の取り違えのインシデントは、導入後、ゼロになったという。看護師を対象にしたアンケート調査でも、「インシデント防止に役立ち、安心できる」と好評だという。
電子タグリーダ(PDA)
外来患者の化学療法の注射室にも拡大
入院患者への注射から電子タグの利用をスタートしたが、医療スタッフに好評だったことから、輸血の認証・照合にも適用を拡大。さらに2006年10月から外来患者の化学療法(抗がん剤)の注射室にも適用範囲を広げている。「入院患者さんと異なり、毎日、多くの患者さんが入れ替わる外来の場合、薬剤の取り違え対策の拡充が求められていました」と、近藤氏は電子タグの適用拡大の狙いを話す。
医療現場における今後のRFIDの可能性について、「プライバシーの問題をどう解消するかが重要」と前置きしながら、「アクティブ型の電子タグを用い、位置管理に活用できるのではないでしょうか。医師の回診時に患者が検査などで病室を空けることもあり、事前に患者の位置情報を把握できれば業務の効率化が可能になります。また、注射薬など薬剤の電子タグについても、コストや標準化の問題など解決すべき課題はまだまだありますが、上流の製薬メーカーが出荷段階で電子タグを貼り付けることができれば、シームレスなトレーサビリティが実現できます」と語る。
電子タグのリーダを内蔵する点滴台など医療用機器の開発など、「医療用に最適化された電子タグのデバイスが開発されれば、医療機関での導入が広がると思います」と近藤氏は期待する。

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