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海外トレンドに見る、RFIDの可能性

− 第17回 −

ベッドサイドで患者と注射薬を照合
電子タグを活用した安全管理システム(2007年9月25日公開)

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 秋田大学医学部附属病院では、電子タグを活用したベッドサイド安全管理システムを開発、2004年11月から全面導入している。病棟のベッドサイドで患者のリストバンドと注射ボトル、看護師のネームカードに貼り付けた電子タグラベルをPDAで読み取り、無線LANを介して病院情報システム(電子カルテシステム)に送信。患者と薬剤の組み合わせが正しければ、いつ、誰が、誰に、どの注射を実施したのかが記録され、誤っていれば警告をPDAに表示することで薬剤の取り違え事故を未然に防ぐ仕組みだ。同システムは、総務省「u-Japanベストプラクティス2007大賞」を受賞するなど、社会的にも注目されている。同病院の教授で医療情報部長の近藤克幸氏にシステムの開発経緯や医療分野におけるRFID利用の可能性を聞いた。

職員ネームカード


安全な医療の遂行や医療スタッフの過重労働の課題

 秋田大学医学部附属病院は、県内唯一の特定機能病院として専門的、先進的な医療を提供すると共に、患者本位の医療を実践するための様々な取り組みを行っている。例えば、2005年5月にISO9001を取得。医療サービスにかかわる品質管理システムを確立し、現在も内部監査などを通じてスパイラルアップを続けていることも、その一例だ。また、医療の安全、医療事故防止、院内感染防止は患者本位の医療の基本的な柱であるとして、これらの管理体制を強化・整備すると共に、定期的な講習会などを通じて職員の意識向上を図っている。

 こうした医療の安全をITの側面から支援するのが、2004年11月に全面導入した「電子タグによるベッドサイド安全管理システム」である。同システムを考案し、開発の中心的な役割を担った近藤克幸氏は、開発の背景として次の4つを挙げる。(1)医療事故、医療過誤を防ぐ「安全な医療の遂行」、(2)患者や外部に対して情報を開示し、説明責任を果たすための「証拠・記録を残す」、(3)病院の経営状況を把握して「健全な経営を維持」、(4)多忙を極める医師・看護師など「医療スタッフの過重労働の軽減」。

 「(1)〜(3)の課題を改善するとなると、医療スタッフの労務負荷が増えます。例えば、安全な医療の遂行にはダブルチェック体制の拡充が必要ですが、その分、医師、看護師や薬剤師などスタッフの業務が増えることになります。また、説明責任を果たし、経営状況を的確に把握するためには、情報の発生源で詳細な記録をきちんと残す必要があり、これもスタッフの負荷を増やしています。つまり、(1)〜(3)の課題解決と医療スタッフの過重労働の軽減という、相反する課題を解決する手段が医療現場に求められていました」と、近藤氏は述べる。

「電子タグによるベッドサイド安全管理システム」を手探りで開発

注射薬

 秋田大学医学部附属病院に限らず、医療現場では安全性向上のためのインシデントレポートが作成されている。医療事故、医療過誤に至らないまでも、「ヒヤリとした、ハッとした出来事」を報告、分析することで、その改善を図っている。「インシデントの中でも、特に入院患者のベッドサイドでの投薬に関するものが数多く報告されています。

 こうした課題を解決する手段の一つとして、患者のリストバンドと点滴などの注射薬にバーコードを付け、PDAやノートPCに取り付けたリーダで患者と薬剤の情報を照合するシステムもある。「バーコードを使ったシステムでも、注射の安全性を高め、情報を記録するという要件は満たします。しかし、リストバンドに血液などが付着して汚れた場合、バーコードでは情報が正確に読み取りにくくなるといった懸念もありました。こうした課題を解決する手段が電子タグだったのです」と、近藤氏は2000年当時を振り返る。

 近藤氏はRFIDを利用した航空手荷物検査の実証実験の報道に接し、医療現場での応用を思いついたという。だが、当時は医療現場での適用例がなく、手探りでシステム開発に着手した。まず、リストバンドはラベルメーカーの協力のもと、複数のプロトタイプを作成。「入浴などで電子タグのラベルが濡れてはがれると、貼り替える際に貼り間違えるリスクが生じますし、汚れによる衛生上の問題もあります。そこで、耐水性を高めるためにコーティングされたリストバンドを新規に開発しました」と述べる。また、PDAについても、電子タグ対応の製品が市販されていなかったため、機器メーカーにカスタマイズを依頼した。

 電子タグの帯域、通信距離の選定に当たっても、試行錯誤を重ねた。電波が飛びすぎると同じ病室のほかの患者の情報をPDAで読み取るリスクがある。そのため、20cm程度の通信距離を目標に、13.56MHz帯の電子タグを採用した。また、電子タグの情報を読み取る際に発する電波により、ベッドサイドに設置された点滴用ポンプなどの医療機器が誤動作する懸念もある。そこで、医療機器の筐体の前面にアルミ箔を貼ることで電波による誤動作のリスクを回避している。

患者リストバンド


詳細情報

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