− 第14回 −
小池良次レポート Vol.5 B2C利用のカギを握るNFC
「モトローラ社にみるRFID携帯の模索」 (2007年5月7日公開)
ECのSTOLPANを軸にサービス実現を狙う
では、モトローラ社のMCSは、どのようなサービスを実現するのだろうか。同社は、EC(欧州委員会)が進めているSTOLPANプロジェクト(www.stolpan.com)の主要メンバーとして総合的な携帯コマース・サービスの実現を狙っている。
たとえば、スーパーマーケットの買い物を想定しよう。ユーザはまず、ショッピング・カートに携帯電話をかざすことで、カート内にあるRFIDリーダをアクティベート(起動)させる。これによって、商品をカートに入れる毎に料金計算が行われる。また、商品に携帯電話をかざすことで、生産地や商品期限などの情報(トレーサビリティ)なども利用できる。そのほか、棚やショッピング・カートに取り付けられた割引タグを携帯で読み取ることで、各商品の割引サービスも利用できる。もちろん、決済はスーパーマーケットの出口にあるゲートで行うが、既にカートに入れる段階で買った商品の集計処理は終わっているので、その総額を確認し、ICカードあるいは携帯の電子マネーで精算をおこなう。
このSTOLPAN方式は、POSシステムの代わりにRFIDと携帯を利用するわけだが、単純な在庫管理だけでなく、POSに比べRFIDはより細かな情報をよりリアルタイムで集計できる。たとえば、顧客がどの順番に商品を購入したかを把握することもでき、商品展示をより効率化できるだろう。また、ショッピング・カートが顧客を認識するため、優良顧客には、高い割引率を提示したり、スパゲティには「スパゲティ・ソース」といった関連商品の買い忘れなどを指摘するといったきめ細かな顧客サービスも可能になる。
もちろん、RFID割引クーポンを発行する商品メーカーにとっても、商品キャンペーンの状況が迅速に把握できるだけでなく、クーポン集計のコストダウンもはかれる。また、消費者は、わさわざ郵便で割引クーポンを送る必要もなく、クーポンを携帯で読み取らせるだけで、割引処理が自動的に行われる。
興味深いのは、モトローラ社が考える多機能携帯はZigBeeやNFC(非接触型通信)など多彩な無線通信を搭載しようとしているが、RFIDでは当面HFタグだけをサービス対象に考えている点だ。米国では、ウォルマートを筆頭にUHFタイプの無線タグが広まろうとしており、HFタグだけに限定するのは奇異に感じる。
しかし、前述のアンドレアズ・シュチャラー氏は「読み取り距離が長いUHFリーダを携帯につければ、さまざまな誤動作を引き起こす可能性がある」とその理由を説明する。つまり、読み取り距離が数センチと短いHFリーダなら"ユーザがリーダに意図的にかざさなければ"読めない。読み取り距離が長ければ、ユーザが意図しない状況で勝手に情報を読んで知らないうちにサービス料金などを支払う「誤動作」が起こる確率が高くなる。決済機能を乗せた携帯では、RFIDは短距離での利用に限定し、商品タグの読み取りなどはショッピング・カートに乗せたUHFリーダを利用するという考え方だ。「顧客の様々な要望にあわせて多彩な無線通信に対応するが、それはあくまでNFC(短距離通信)でなければならない」とシュチャラー氏は主張している。
無線通信技術と利用分野
出典:モトローラ、筆者
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こうしたRFIDの利用形態は、米国のウォルマートやターゲットが想定している利用法よりも、より高度であり、総合的だと言えるだろう。米国では、携帯電話によるバンキング・サービスが、ようやく動き出した程度で、こうした携帯中心の「RFID+リテール・サービス」は当面実現しそうもない。とはいえ、携帯電話サービスが進んでいる欧州で、こうしたRFID携帯が動き出せば、日本にも大きな影響を与えることになるだろう。そうなれば、RFID利用では米国型よりも欧州型が日本にいち早く導入されることも予想される。

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