− 第10回 −
小池良次レポート Vol.1 市場動向と課題
「ウォルマート呪縛からの脱皮を狙う、米RFID業界」 (2007年3月19日公開)
世界最大の小売りチェーン『ウォルマート』がRFID(無線タグ)の導入を宣言してから約3年。タグの低価格化や読み取り率の向上などを進めながら、米国ではRFIDの導入が広がっている。そうした中、読み取り距離が飛躍的に伸びるUHF帯対応ICタグの第2世代規格「UHF Generation 2」(Gen2)の登場で、RFID業界には新たな期待が広がっている。はたしてRFIDは技術的課題を克服し、本格普及へと進むのだろうか。最近ボストンで開催されたRFIDの国際会議での取材を元に、夢の技術『RFID』と格闘する米国の現状を数回にわたって追ってみたい。第1回は、米国RFIDの全体傾向を分析してみよう。
RFID大国を自認する米国
調査コンサルティング会社IDTechEX社の集計によれば、世界のRFID市場は49億6000万ドル(約5840億円、2006年)に達し、2017年には269億ドル(約3兆1470億円)に成長する。RFIDの導入あるいは実証実験は世界93カ国で2500件を越え、その対象は航空手荷物からチケット、商品ラベルなど多種多様だ。
米国は約900件の導入あるいは実験プロジェクトを進めており、2位の英国(約300プロジェクト)を大きく引き離している。また、ロッキード・マーチン社(米国の航空宇宙企業)が、米国陸軍から4億2500万ドルの大型プロジェクト(433MHzアクティブ・タグ)を受注するなど、大規模案件も多い。
出典:IDTechEX、単位:百万ドル、黄色は米国
IDTechEx社のピーター・ハッロップ博士
しかし、欧州でもRFID熱が高まっており、アジアでは韓国や日本、中国などが積極的に取り組んでいる。特に中国は、2008年の北京オリンピックを前に、市民への個人認証カードの発行を進めており、同RFID付きカードの関連予算は2007年だけでも16億ドル、総額では60億ドル(約7000億円)を超える。同プロジェクトで広くRFID(HF帯:13.56MHz)関連設備の普及が進み、今後、同国のRFID市場は急速に成長するとの観測もある。
ただ、中国の例は、日本でもSuicaに利用されているFeliCaでお馴染みの技術であり、投資規模は大きいが技術面で中国を特筆するほどの話でもない。この観測は近接型ICカードがあまり普及していない米国から見たために"注目度が高い"という点を差し引いて考えるべきだろう。

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